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日経の紙面から

8割初物VS.地元No.1、広島の陣、SCコト消費、仁義なき戦い、攻め込むイオン、迎え撃つイズミ。

[ 2018年5月6日 / 日経MJ(流通新聞) ]

攻め込むイオン ジ アウトレット広島 VR・カーリングで新体験
迎え撃つイズミ LECT 人気店導入、セブンと共闘

 イオンが4月末、広島市で新型ショッピングセンター(SC)、「THE OUTLETS HIROSHIMA(ジ アウトレット広島)」を出店した。物販はアウトレット中心でエンタメ施設も充実。「地域初」のてんこ盛りで攻め込む先は地元小売業の雄、イズミの牙城だ。SC市場が飽和に向かうなか、今回の広島での「仁義なき戦い」は今後、各地域にも飛び火しそうだ。

 4月27日午前10時、開店前に並んだ約5500人の買い物客が次々と館内に吸い込まれていった。瞬く間に人だかりができたのは、正面入り口そばのイタリアの高級ブランド「サルヴァトーレ・フェラガモ」。母親と来た沖広愛子さん(45)は「安さや品ぞろえが魅力的」と目を輝かせた。

 イオンモールによると、4月27〜30日の来場客数は計約28万5000人。特ににぎわったのは、エンターテインメントエリア「ほしかげシティ」。広島県で唯一、通年利用できるスケートリンクでは平昌五輪で人気に火が付いたカーリングを楽しむ人たちも。子供と一緒に挑戦した真田美夏さん(42)は「一度やってみたかった。思ったよりストーンが重かった」と話す。VR(仮想現実)ゲームでは連休中、40分程度の待ち時間も発生。

中四国が商圏

 約26万8000平方メートルという広大な敷地に、約200のショップが集まるジ アウトレット広島。イオンとしては広島県内で4カ所目のSCだ。商圏は車で110分と中四国一帯からの集客を狙う。既存のイオンモールと商圏が重なるが、すみ分けは明確だ。飲食店なども含めて8割近いテナントが広島県初出店という「初物づくし」だ。

 イオンの狙いは、地元小売業の雄、イズミの商業施設にはない価値の提供だ。イオンモールの吉田昭夫社長は「我々の知見を活用して、この地域になかった新たな価値を提供する」と強調する。

 2018年2月期の営業収益が8兆3900億円と小売業最大手のイオンだが、地域ごとにみると、必ずしもトップシェアというわけではない。新型SCを出した中四国地域では、11年に地場のマルナカグループを約450億円で買収するなどして、スーパーなど300店超を展開する。

 それでもイズミの牙城を崩すまでには至っていない。ジ アウトレット広島は、イズミの商業施設にはない価値を武器に、イオンの新たな顧客を獲得する狙いだ。

顧客基盤700万人

 迎え撃つ格好のイズミ。全国展開せず地盤の西日本を深掘りする「日本一の高質リージョナル総合スーパー」戦略を進める。顧客基盤の強さはこの地域では圧倒的だ。

 自社電子マネー「ゆめか」の発行枚数は698万枚、このうちクレジット決済機能を搭載した「ゆめカード」の保有者は131万人にのぼる。店舗での電子マネー、クレジット決済割合は6割と業界屈指の規模だ。

 地域でトップシェアを握ることは、日常の集客を左右する生鮮品の質の高さに表れる。生鮮市場で質のいい商品を調達しやすくなるからだ。

 イズミは5年後の23年2月期に連結売上高1兆円(18年2月期は7298億円)をめざす。そこで同社も取り組むのがコト消費への対応だ。

 その象徴が昨年4月にオープンした「LECT(レクト)」。カルチュア・コンビニエンス・クラブと組み、25万冊の本とスターバックスコーヒーを備えた「蔦屋書店」、DIY(日曜大工)ができる「カインズ工房」などをそろえる。

 初年度の販売は計画比8割にとどまったもようだが、山西泰明社長は「コト消費目当ての消費者を、どう物販の購入につなげられるか、課題が見つかった」と話す。

 そうした状況下でオープンしたイオンの新型SCについて、山西社長は「当社がいかに魅力ある店にできるかが問われている。我々のエネルギーにしたい」ととらえる。

 イズミは4月、セブン&アイ・ホールディングスと提携。イトーヨーカドー福山店(広島県福山市)を継承するだけでなく、今後はセブン&アイグループの「ロフト」や「アカチャンホンポ」など若い世代に人気の店を誘致していく方針だ。

 イオン対イズミの広島SC対決。ジ アウトレット広島を訪れた土井絹江さん(70)は、イズミのレクトも頻繁に利用する。「テナントの印象はだいぶ違う。買いたい物、目的で今後、どちらによく行くかは決まるかもしれない」と話す。2つの大型SCの距離は5キロメートル程度。消費者の財布の中身に限りがある以上、どちらがより多くの固定客をつかめるかは、今後の焦点となりそうだ。

 広島での戦いは今後、他地域に広がりそうだ。国内で都市型を含め約170カ所のSCを展開するイオンモールは25年度に7割以上のSCについて「地域ナンバーワン」をめざすとしている。

 イオンモールの吉田社長は「地域密着の『ローカリゼーション(現地化)』と(海外ネットワークを生かした)『グローバルソーシング』との価値の組み合わせが重要」と強調する。

 イオンのSC戦略はこれまで、いかに地域に密着したコンテンツをそろえるかを重視していた。新型SCはいかに地域に足りないコンテンツをそろえるかに軸足を置く。人口減少と都市圏への人口集中が進むなか、SC間で消費者を奪い合う競争はより厳しくなる。イズミの牙城、広島での仁義なきSC戦争の結果次第では、全国のSCの勢力図が塗り替えられる可能性がある。

(河野祥平、広島支局・後藤健)

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