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伊藤忠、敵はネット通販、リアルとの融合急ぐ、ファミマ拠点に新市場狙う(ビジネスTODAY)

[ 2018年5月3日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 仮想敵はインターネット企業――。伊藤忠商事が2日開いた決算会見からは同社の危機感が読み取れる。デジタル時代は海外勢などが台頭し、もはや三菱商事や三井物産だけをみていても生き残れない。巨額を出資した中国企業との相乗効果を出すことも課題のなかで、新経営陣はアパレルや食品など生活消費分野でネットとリアルの融合を急ぐ。

 岡藤正広会長兼最高経営責任者(CEO)と鈴木善久社長は同日、ジャケットにジーンズで会見場にあらわれた。「発想力を柔軟にしないとな」。岡藤氏は脱スーツ・デーと呼ぶ取り組みを説明した。2017年6月から、金曜日は私服で働くようにしていた。この日からは水曜日もカジュアルに切り替えた。

 岡藤氏は18年3月期の連結純利益が過去最高の4003億円になったと説明した。鉄鉱石や石炭の値上がりをはじめ、不動産や食料など様々な事業が利益を支えた。だが、岡藤氏は顔を引き締めてこう語った。

 「浮かれることなく、次の布石を打つ」

 総合商社はデジタル経済が中心の時代、どう橋渡し機能を果たせるのか。同日示した20年度までの中期経営計画ではビジョンとして「次世代商人」と銘打った。すでに同社は動きだしている。

 4月、ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)の子会社化を発表した。1200億円を投じ、8月ごろから株式公開買い付けを実施する。ファミマなどで使える電子決済用のポイントを作り、データ主導の事業モデルを目指す。

 「実はネット企業がファミマを狙っていた」。岡藤氏は会見で明かした。リアル店舗の価値に気づいて参入しようとしたネット大手を止めるかたちで、伊藤忠は子会社化に踏み切った。

 鈴木社長は今後の競合企業について聞かれ「これまでプレーヤーじゃなかったところ。ネット通販大手だ」と答えた。米アマゾン・ドット・コムなどが念頭にある。

 伊藤忠は消費者に近い生活消費分野が生命線で、倉庫など卸機能や店舗への商流を築いてきた。ただ、アマゾンなどは一足飛びに消費者へつながり、浸透のスピードは速い。伊藤忠の存在意義が揺さぶられる。

 同社は生活消費分野を超え、デジタル時代の商社の方向性を探っていく。象徴が、4月に深セン市で開いた事務所だ。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、人工知能(AI)、フィンテック、電気自動車、ドローン。スタートアップ企業や大手からノウハウを獲得するため、まず人脈づくりを始める。

 会社をどう変えていくか、情報・金融部門の出身である鈴木社長の腕の見せどころになる。岡藤氏からデジタル分野の経験を生かすことを期待されてバトンを受けた。

 総合商社は時代に合わせて経営のあり方を変えてきた。いま直面するのはデジタルの潮流。何もしなければ、冬の時代が訪れる。伊藤忠の具体策はまだはっきりしないところもあり、新体制にとっては会社を変えるスピードが課題となる。

3期連続最高益
今期最終4500億円

 伊藤忠が2日発表した2019年3月期の連結純利益は前期比12%増の4500億円になる見通しだ。3期連続の最高益更新で、年間配当は過去最高の74円(前期は70円)を下限に実施する。資源価格を直近より低めに想定し、鉄鉱石など金属事業は減益を見込んでいる。金属と食料を除く事業で増益を目指す。

 ただ、決算からは見えない課題がある。中国中信集団(CITIC)との具体的な相乗効果を出すことだ。岡藤氏は「これから佳境に入る」と具体的な言及はなかった。15年、タイ財閥大手と組んでCITICに出資し10%の株式を取得した。伊藤忠の投資は6000億円で年約600億円の配当を得ている。

 CITICと進めているビジネスはアパレル大手、波司登(ボストン)への共同出資など一部にとどまる。病院運営やネット通販事業は検討している最中だ。

 中国企業は取引先の肩書や個人的関係を重視するため岡藤氏はCEOを新設して会社に残った。一丸となり同国市場で存在感を示せるか。新体制で進む道は伊藤忠の行方を大きく左右する。(大平祐嗣、田中博人)

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