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見えてきた新・勝ち組――世界選抜を目指せ、日本勢、省人化・ロボでリード。

[ 2018年5月13日 / 日経ヴェリタス ]

編集委員 藤田和明

 株式への投資は優れた企業の素晴らしいプレー(収益力)に期待して、ファンが集まるようなものだ。まねのできない卓越した技術やサービス、どんな局面でも適応する経営。それこそが世界の投資家を歓喜させるエクセレントカンパニーだ。よりすぐりの「世界選抜」を考えるとき、日本から選ばれる実力派はどれだけいるだろう。

 米ワシントン州キャマスを拠点とする運用会社、フィッシャー・インベストメンツは世界で投資先を探す中で、日本からも積極的に選んでいる。「工場の自動化やロボティクスの分野で日本はリードしており、大きな投資機会がある」(調査部門シニア・バイス・プレジデント、アーロン・アンダーソン氏)と見ているからだ。

 米証券取引委員会への開示によれば同社は1〜3月期では日本電産(6594)株を7万株強、新たに買い付けた。三菱電機(6503)は3月末時点で436万株を保有し、ダイキン工業(6367)などにも投資を広げた。これらの銘柄に共通する強みは利益率が高く高シェア、顧客も地理的に散らばっていることだとしている。

 日本の上場企業の2018年3月決算は2期連続で最高益を記録し、着実に「稼ぐ力」を取り戻してきた。これを個々に見ていけば、世界に向けて強く輝く企業の存在感が増している。

 今や株式時価総額が8兆円を超え、東京証券取引所第1部で6位のキーエンス(6861)。「工場自動化におけるセンサーのスペシャリスト」(米ファースト・イーグル・インベストメント・マネジメント)と評価され、世界に顧客を広げている。

 キーエンスの業績は絶好調だ。18年3月期の連結純利益は2105億円。決算期変更で単純比較はできないものの、実質38%増益で6年連続の最高益。アジア、北中南米、欧州のいずれも、前の年から3〜4割売上高を伸ばした。

 データを活用してものづくりを革新する「インダストリー4.0」はドイツ発の考え方だが、実際のプレーヤーをみれば日本勢の存在感が大きい。データを集めるセンサーならキーエンスだし、世界の工場がロボット化・自動化を進めるときに出る名前はファナック(6954)、安川電機(6506)、三菱電機だ。日本で磨かれた省人化の技術を世界が欲している。

 総合電機も事業ポートフォリオの組み替えがようやく実り、強さを取り戻してきた。筆頭が日立製作所(6501)だ。ガスタービンの世界的な需要減に苦しむ米ゼネラル・エレクトリックに対し、日立はすでに分離し、市場の評価を集めている。

 非製造業も変わってきた。少子高齢化が進む国内市場にしがみつかず、海外に打って出ている。大和ハウス工業(1925)や住友林業(1911)といった住宅メーカーもM&A(合併・買収)を繰り返し、米国や豪州で事業を展開。特に住友林は海外利益の比率が上がり、グローバル企業の顔だ。

 小売りもネット通販の巨人アマゾン・ドット・コムに押されているばかりではない。

 丸井グループ(8252)が新たにとった店舗とネットの融合戦略が株式市場で注目を集めている。試着用の衣料品と靴だけを置く売り場を東京の有楽町や横浜などに導入。消費者は商品を試し、ネット上で買う。持ち帰りたくないとのニーズに応えるのはもちろん、店舗の在庫負担がなくなり、売り場も広く使える。

 あとは、こうした先頭集団の背中をどれだけ多くの日本企業が追っていけるかだ。

 2017年度の日本の自己資本利益率(ROE)は10%台に乗せたとみられ、欧州とほぼ並ぶところまで経営効率は上がってきた。とはいえ米国のROEは14%とさらに先を行く。何よりその水準をずっと維持している。収益性の違いを細かく見ていけば売上高純利益率が7%弱の日本に対し、米国は10%近い。日米格差はまだ残っている。

 米国ではアップルやアルファベット(グーグルの持ち株会社)などIT大手が巨額の利益をたたき出す。日本でもそうした企業が育ってこないと産業構造にも厚みが増してこない。

 上場企業で100兆円規模に積み上がった現預金の生かし方も課題だ。成長に振り向けるか、M&Aか。賃上げも考えていくときだろう。使わないなら自社株買いや配当で株主還元を増やす。資本をむだにしない経営姿勢でも米欧企業とはなお差がある。

 「企業統治や株主還元で日本企業から新しいストーリーが出てくるのを海外勢は期待している」(SMBC日興証券のトレボー・ヒル氏)。前期に達成した最高益は通過点。さらなる高みを目指し、世界のライバルと肩を並べて競う日本企業が広がることを世界の投資家が待っている。

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