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アパレル大手、EC・中古・レンタルに食指、スタートアップに出資収益改善・顧客開拓へ。

[ 2018年5月21日 / 日経産業新聞 ]

 アパレル大手が衣料品の電子商取引(EC)や中古・レンタル流通市場に相次ぎ参入する。三陽商会やワールドがスタートアップ企業に出資した。アパレルECはスタートトゥデイの「ゾゾタウン」を筆頭に、スタートアップが先行して市場を開拓してきた。老舗アパレルとの競合も激化しており、大手を含めた合従連衡が始まった。

 三陽商会は4月、ファッション企業のECを支援するルビー・グループ(東京・品川)を買収した。ルビーの全株式の80%を取得し子会社にした。海外ブランドのECサイトの運営に強みがあるルビーのノウハウを自社ECの強化につなげる。「将来的には他社の商品を取り扱うモールに広げる」(三陽商会の岩田功社長)戦略だ。

 ルビー・グループは2011年の創業。レイバンやディーゼル、フォリフォリなど著名な海外ブランドの公式オンラインストアなど約20社のEC構築の支援事業を手掛けている。三陽商会の自社サイトのブランド力の向上をルビーと連携するほか、他社のブランドも出品し、モールとしての存在感を高める。

 三陽商会はゾゾタウンなどへの出店分も含めてECサイトの売上高は約50億円と売上高全体の1割弱。そのうち75%を自社ECが占める。自社ECでの売上比率を保ちつつ、ECでの売上高を早期に200億円、全体に占める比率を20%に引き上げる計画だ。

 岩田社長は「ゾゾタウンなど他社とのタッチポイント(接点)は維持して若者の顧客層を増やす」とした上で、「当社は実際の店舗をもっていることが強みで顧客との接点を深められる。店頭での商品の受け取りなど、他社サイトとすみ分けて双方を成長させる」と話す。

 ワールドも4月、子会社を通じて古着専門店「ラグタグ」を運営するティンパンアレイ(東京・品川)など2社に出資したと発表した。

 ティンパンアレイは古着店など約15店舗を運営し、ファッション感度の高い10〜30代から支持を集めている。2017年3月期の売上高は55億円で、インターネット通販による売り上げが全体の約3割を占める。まずはネット通販の分野で協業し収益の底上げを目指す。

 ワールドは、衣料品の定額レンタルサービスを展開するスタートアップ、オムニス(東京・港)に3月30日付で約46%を出資した。オムニスはセレクトショップで取り扱う衣料品などを月額3900円から貸し出すサービスを提供している。今後はワールドの店舗網や会員基盤を連携させる考えだ。

 ワールドは「アンタイトル」などのブランド事業が売り上げの大半を占め、百貨店を中心に約2400店を持つ。衣料品市場が縮むなか、今後は他社店舗の運営や衣料品のOEM(相手先ブランドによる生産)といった法人向け事業や、新興アパレルに投資して販売を伸ばす投資事業の売上比率を引き上げていく考えだ。ワールドの上山健二社長は「ユーズドの洋服や所有にこだわらない層が増えている」と説明する。現状では出資した会社で自社の商品を取り扱うことは考えていないが「二次流通やレンタルのノウハウを学び、既存事業に生かす可能性はある」と話した。

 アパレルのECでは、ゾゾタウンを筆頭に、楽天やアマゾンジャパンなど大手ECが先行する。アパレル大手も、これらの「ECの巨人」に商品を出品することで、百貨店や商業施設に来ない新しい顧客層の取りこみに活用している。

 ただ、「他のECサイトでは、(出店料などを支払うため)ほとんど利益が出ない」(アパレル大手幹部)のが現状だ。自社ECに顧客を取り込めれば、収益性の改善だけでなく、顧客データを商品開発などに生かせる利点もある。アパレル大手の参入で、「ゾゾ」や中古品の個人間取引の「メルカリ」の寡占状態に風穴が開けられる可能性も出てきた。

(花井悠希)

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