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日経の紙面から

セブンが次世代オムニ、3000万人のID、コンビニ変える、グループ2万店横串、常連客の好みで品ぞろえ。

[ 2018年5月25日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ネット注文 働く女性つかむ

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は実店舗とネット通販の垣根を崩す新たなデジタルマーケティングに乗り出す。6月にグループ各社のサービスと一体となったスマートフォン(スマホ)向けアプリと新たな顧客IDを導入。日本人の4人に1人、3000万人の顧客の顔を「見える化」する。顧客一人ひとりの好みに合った品ぞろえで、次世代のコンビニエンスストアをつくる。(関連記事13面に)

 札幌市の住宅街にあるセブン―イレブン札幌発寒4条店。店のバックヤードにあるタブレット端末には、注文が入るたびに着信音が鳴る。白倉康宏オーナーが通知画面を開くと「新鮮卵」「千切りキャベツ」といった注文商品の一覧が表示された。そこで売り場の商品を集め、袋に詰めた。

 セブンは現在、北海道でネットコンビニの実験をしている。指定時間に合わせて、セブンの制服を着た配達員が店で商品をピックアップして顧客宅に届ける。利用者はスマホで、店内に在庫がある2800品のなかから注文。最短で2時間、指定場所で受け取れる。配送料は216円で、3千円以上買えば無料だ。

 飲料や総菜を購入した50代女性は「週末にスーパーでまとめ買いをしなくてすむようになった」と話す。ネットスーパーよりも配送料が安い点が魅力といい、月2回程度利用する。「受け取る時間帯を選べるのが便利」という倉橋裕さん(65)は出かける前に注文して、帰宅時間に合わせて商品を受け取るという。

 ネットコンビニは2017年10月、冬に来店客が伸び悩む北海道で買い物の利便性を高めて加盟店の売り上げ増につなげる狙いで始めた。白倉オーナーは「利用は1日3件程度。店には来ない客の利用にもつながっている」と話す。

 当初はシニアらの利用を想定したが、実際は働く女性など30〜40代が約5割を占めている。コンビニ商品を家まで届けてほしいというニーズがあることを確認し、セブンは19年度以降に順次、全国2万店にこのサービスを広げる。

 「近くて便利」を掲げるセブンイレブンのサービスが一歩先に進んだだけにもみえるが、背後には大きな仕掛けがある。

 セブン&アイHDではネットコンビニ以外にもネットと実店舗を融合させた施策を相次ぎ打ち出している。昨年11月にはアスクルと組み、生鮮宅配「IYフレッシュ」を東京都内で始めた。

 スマホ向けアプリの運用は6月からセブンイレブンとイトーヨーカドーで始め、今後そごう・西武などグループで2万2千店に順次広げる。19年度にはアプリで支払いもできるようにする計画。

 既存のネット通販や実店舗網をつなぐのが、6月に顧客管理のために新たに導入する「7iD(セブンアイディ)」だ。

 7iDは顧客一人に一つ、名前と生年月日、メールアドレス、都道府県を登録すれば取得できる。まず約850万人の「オムニ7」会員を6月から7iDに移行。6月から運用を始める新たなアプリも、利用には7iDの取得が必要となる。

 19年5月末までにアプリ利用者を1000万人、将来は7iDで3000万人の会員を目指す。ネットコンビニについても全国展開する19年度にも連動を始める。

 7iDの導入理由について、セブン&アイの後藤克弘副社長は「顧客との双方向のコミュニケーションにつなげたい」と話す。セブンイレブンでは顧客の購買状況が把握できる電子マネー「ナナコ」の利用は約25%にとどまる。大半の顧客属性はわからず、セブン側から顧客に商品を提案するにはレシートでのクーポンくらいしかなかった。

 7iDを通じて、顧客の好みを見える化し、個々の顧客の好みに合った商品のお薦めを始める。

 仕組みはこうだ。まずセブンがナナコを通じて蓄積した購買情報から、同一人物が購入した商品を基に個人の嗜好を類推して分類。例えば「グラノーラ」や「サラダチキン」をよく買う人には「健康志向」や「ダイエット」といったカテゴリーがひも付く。当初のカテゴリーは100程度だ。

 今後は数を絞り込んだり新たに設けたりする。一人で複数のカテゴリーに入ることもあり、購買を重ねるごとにカテゴリーも変わる。これを基にして個人の嗜好を判定し、それに合う商品や、購買行動が似た利用客が好む商品をスマホを通じて個別に提案する。

 コンビニの売り場も変わる可能性がある。各店が買い物額が大きい常連の好む商品をそろえやすくなり、来店頻度、客単価のアップにつながる。

 こうした取り組みを後押しするのが、6月に導入するネットと実店舗合わせた購入額に応じて特典を付与する「セブンマイルプログラム」だ。特典としては外部アプリや工場見学などの体験型イベントを用意する。

 ネット企業は購買履歴に合わせて商品を提案して売り上げを伸ばす。セブン&アイが目指すのは、実店舗に軸足を置いた個別マーケティングだ。「今はネットでもリアルでも買い物をする時代」(後藤副社長)。2万店超の店舗網を生かし、1日2300万人の来店客の動向をどこまで精緻に把握し、精度の高い提案をできるか。それがネット勢への逆襲の成否を分ける。(今井拓也)

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