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ネット×リアル、深化する融合、新時代の旗手は。

[ 2018年6月3日 / 日経ヴェリタス ]

 JR佐賀駅(佐賀市)から車で10分ほどの佐賀大学に最近、変な店ができた。棚にはドリルやペンチなど工具がずらりと並ぶが、店員はいない。支払いはスマートフォン(スマホ)アプリで完了する、無人店舗だ。工具のネット通販を手がけるMonotaRO(モノタロウ、証券コード3064)がソフト開発のオプティム(3694)と共同で生み出した。低コストな無人店をてこにネット配送を待てない需要やネットでは接点のない新規顧客をつかみ、新たな成長の起点にする狙いだ。

 ネット企業によるリアル進出は世界の潮流だ。米アマゾン・ドット・コムは今年に入り無人店「Amazon Go(アマゾンゴー)」を出した。モノタロウの無人店よりさらに手間は少なく、客は欲しい物を手にとって店を出るだけ。IT企業としての技術を結集し、既存のリアル店を上回る利便性を打ち出す。昨年には米食品スーパー大手も買収したが、リアル進出の狙いはデータだ。ネットでは得られない豊富な消費行動のデータを集め、品ぞろえや販促に活用して成長をめざす。同じ狙いで中国のネット通販の巨人、アリババ集団もリアル進出を加速している。

ネット勢
日本に食指

 脅威は日本にも及ぶ。「ネット企業がファミマを狙っていた」。ユニー・ファミリーマートホールディングス(8028)の子会社化を決めた伊藤忠商事(8001)の岡藤正広会長は5月の会見で明らかにした。手をこまぬいていてはネット企業にリアルの価値を奪われかねない。

 実際、楽天(4755)は米ウォルマートと提携し、傘下の西友とネットスーパーを準備中だ。4月に決めたビックカメラ(3048)との提携ではネット通販の共同運営にとどまらず、独自企画の家電の開発・販売を視野に入れる。ネットだけでは足りなかった購買データを分析し、新たな商機につなげる。

 半面、リアルはネットを活用することで実店舗への誘導を強化する。良品計画(7453)のスマホアプリは位置情報を利用して最寄りの店を表示。店に立ち寄るだけでもらえるポイントを用意したり、店ごとの一押し情報をアプリに掲載して利用者を店に引き寄せる。アプリのダウンロード数は1100万を超え、着実にリピーターを積み上げる。

 足元で起きていることはネット通販がリアル店の需要を奪うといった単純な構図ではない。ネットはいつでもどこでも買える優位性があり、リアルには膨大な顧客データがある。とりわけ国土が狭く、コンビニだけで約6万店がひしめく日本では買い物にかかる手間は少なく、すべてがネットに置き換わることは考えにくい。ならばネットとリアルはそれぞれの長所を取り込めば良い。対立ではなく、融合が深化していく構図だ。

無人コンビニ
まるで自販機

 融合は新たなビジネスチャンスも生み始めた。SNS大手、LINE(3938)出身の社長が立ち上げたベンチャー、600(東京・渋谷)が都内数カ所のオフィスビルで運営する無人コンビニはほとんど自販機のような見た目。ガラス張りの扉をクレジットカードで開き、欲しい物を取り出せば商品に付いたICタグを感知して決済は終わる。SNSで個人から品ぞろえの要望を受け付け、1台で600種類の品ぞろえも可能という。

 市場も融合の行方を注視している。例えばモノタロウ株は無人店舗計画の公表前より17%上昇。同期間の日経平均株価の上昇率(3%)を上回った。三菱UFJ国際投信の上辻敦生シニアファンドマネジャーはネットとリアルの融合について「中長期的に成長が期待できる分野。うまくできる企業と、できない企業の差は一段と拡大していく」とみる。融合を通じて商品・サービスの競争力を高め、成長するのはどんな企業か。新時代の旗手たちを追った。

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