日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > ネット×リアル――消費新次元、扉は開かれた、狙いはデータ、販売力磨く、アイスタイル、情報分析でアマゾンに対抗。

日経の紙面から

ネット×リアル――消費新次元、扉は開かれた、狙いはデータ、販売力磨く、アイスタイル、情報分析でアマゾンに対抗。

[ 2018年6月3日 / 日経ヴェリタス ]

対立を終えたネットとリアルは、互いの長所を取り込み、融合を進めている。
ビジネスモデルにも革新をもたらし始めた。次のステージに進んだ消費の新たな扉が開く――。

 横浜市に住む会社員の白井彩さん(32)は4月からアマゾンジャパン(東京・目黒)の生鮮食品宅配サービス「アマゾンフレッシュ」を使い始めた。子どもがまだ1歳で買い物に行きにくいので週1回、6000〜8000円分をまとめて注文している。「品質はスーパーとほとんど差はない。価格は同じか少し高くても気にならないくらい」。

 他のネットスーパーなども試したがアマゾンフレッシュに落ち着いたのは「やっぱりアマゾンだから」。普段から日用品をアマゾンで買っていて、既にスマートフォン(スマホ)にアプリが入っている身近さが決め手という。

 ネットで圧倒的なブランド力を発揮するアマゾンだが、もう1つの手でリアル進出を加速中だ。米国では無人コンビニ「Amazon Go」や「アマゾンブックス」を展開。昨年、高級スーパーのホールフーズ・マーケットを買収し、今年4月に家電量販ベストバイとの提携も決めた。狙いはシンプルだ。リアル店が持つ豊富で精度の高い購買データを手に入れることだ。

 どんな性別、年齢の顧客がいつ何を買ったか――。顧客の消費行動をより細かく把握・分析することでアマゾンの強みであるデータに基づく販売力はさらに磨かれる。市場はその戦略を評価し、株価は1年で約6割上昇。時価総額はアルファベット(グーグルの親会社)などを抜き世界2位だ。

 「ネットとリアル店舗を融合させた『ニューリテール(新小売り)』でチャンスをつかんでほしい」。5月、中国・アリババ集団のダニエル・チャン最高経営責任者(CEO)が日本の消費財メーカーの担当者ら275人を前にこう語りかけた。

 アマゾン同様にアリババもリアルへの投資を急ぐ。昨年、大型スーパー運営の高鑫零售(サンアート・リテール)に3200億円を出資。今年4月には初めて自前のショッピングセンター(SC)を開業した。グループの生鮮スーパーである盒馬(フーマー)鮮生は店舗から半径3キロ以内に最短30分で配達するという利便性が支持され、中国国内で37店舗まで拡大。「北京では1日の食事をすべて盒馬で注文する利用者も多い」(アリババ)という。

 リアルを取り込み、ビジネスモデルを進化させているのは海外大手だけではない。化粧品の口コミサイト「@コスメ」を運営するアイスタイル(3660)は来年度から、自社で展開する化粧品店「アットコスメストア」で得た顧客の肌質データと、ネット通販の購買履歴をひも付けた分析を始める。

 アイスタイルは既に店舗とネット通販の会員を統合し、購買履歴やリピート率、ブランドやメーカーの切り替え履歴といったデータを持つ。ここに肌質の特徴やリアル店の店員が聞き取った肌の悩みが加われば「アマゾンが絶対に持っていないデータ」(アイスタイルの遠藤宗執行役員)が手に入る。化粧品のネット通販では圧倒的に優位に立てるという作戦だ。

 リアルの強みを生かし、ネットの弱点を補完しているのが住信SBIネット銀行だ。「ネット銀行は書類のやりとりなどが面倒だが、店舗ならすぐに話が聞ける」。東京・大手町の住宅ローン専業店舗「大手町ローンプラザ」に借り換えの相談に訪れた商社勤務の男性(38)は満足げだ。対面相談ができる店舗を設けたのは住宅ローンの借入額は数千万円と高額で、全ての手続きをネットで進めるには顧客にとって心理的なハードルが高いためだ。

 ネット企業は自らを変革し、成長を続けるための触媒としてリアルを貪欲に取り込んでいる。アマゾンとアリババは米中でリアルの再編を主導し、競争環境を一変させた。ドイツ証券の風早隆弘氏は「今後3〜4年の間に日本でもネット企業が主導する再編が起こる可能性が高い」と指摘している。

 こうした流れとは別に「ネット内完結」の深化を狙うのが衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイ(3092)だ。採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」を2019年3月期中に1000万着配布するという計画を掲げる。ゾゾスーツを通じて顧客の体形データを入手し「注文するとぴったりの服がオーダーメードで生産され、素早く届く」という青写真を描く。ただし新たなビジネスモデルの立ち上げには課題も多い。旧型のゾゾスーツは大量生産を実現できず、わずか5カ月で方針転換を余儀なくされるなど試行錯誤を続けている。

ニュースの最新記事

PAGE TOP