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ネット×リアル――顧客目線、成功のカギに、日本の消費者、シーン別に使い分け。

[ 2018年6月3日 / 日経ヴェリタス ]

 「アマゾン・エフェクト」「アマゾン・ショック」「デス・バイ・アマゾン」......。2000年の米アマゾン・ドット・コムの日本上陸以降、日本でもアマゾンや電子商取引(EC)がリアルの顧客を奪うとの脅威論が折に触れて語られてきた。米国では急速なEC化で客を奪われた家電量販ラジオシャックが15年に破綻、18年には玩具販売のトイザラスも清算を決めた。日本でもアマゾンなどEC大手は存在感を高めたが、それでも流通企業の大型倒産のような事態にはいたらない。なぜか。

 1つは国際的にみて日本は買い物にかかる労力が圧倒的に少ない点がある。流通経済研究所の調べによると、日本では人口1万人あたり約30店の食品小売業の店舗(06年調べ)がある。

 同じベースでみた米国(約5店)の6倍で、英国やドイツと比べても倍以上だ。狭い国土に店舗がひしめき、ネットで注文しなくても実店舗でかなりの買い物がカバーできる。それだけ実店舗の優位性が高い。

 2つ目として日本市場の「選択的消費」の影響が大きい。簡単に言えば明確に買いたいものが決まっていたり、急ぎの場合はネットを使う。だが余暇がある場合はむしろ実店舗での買い物を楽しむ――。このように消費者はシーンに応じてうまく使い分けており「すべてがネットに置き換わる」とはならない。

 ネットとリアルの融合にも課題がみえてきた。ネット通販と実店舗を連動させる「オムニチャネル」戦略を掲げたセブン&アイは18年2月期に234億円の減損損失を計上した。主因は同戦略の中核を担うネット通販サイト。ネットでも店頭でもグループの百貨店・専門店の商品を買えるようにし、受け取りや返品までセブンイレブン店頭でできるというのが売りだったが、売り上げ不振で減損に追い込まれた。

 つまずきの理由は様々だが、結局は消費者の嗜好をつかみきれなかったことが大きい。手元のスマホで様々な情報に触れ、消費の場を使い分ける消費者にとってセブンのネット通販や店舗は1つの選択肢でしかない。品ぞろえや使い勝手でアマゾンなどに見劣りし、支持を得られなかった面もある。

 セブン&アイの前最高情報責任者(CIO)で、同戦略を指揮した鈴木康弘氏は「店舗での成功体験を持つ50代以上の経営幹部の発想を変えられなかった」と明かす。本部と店舗現場の意思統一に手間取ったのも足かせとなったようだ。

 セブン&アイは戦略の軌道修正に動き出した。井阪隆一社長は「顧客視点で全面的にやり方を変える」と話す。顧客にとっての使い勝手を高めたスマホアプリを6月にも導入、顧客情報を活用し直すことで再スタートする構えだ。新たなアプリのポイント制度は「セブンマイルプログラム」。良品計画の「MUJIマイル」などと同じ「マイル」という言葉を使っている。

 もっともITではプロジェクトが不完全でも実行して走りながら修正する手法を「リーンスタートアップ」と呼び、肯定する文化がある。多少の失敗は企業側も覚悟の上かもしれない。投資家側も企業のリアルとネット融合の取り組みについては話題性だけで飛びつかずに、ニーズにあったサービスかどうかをじっくり見極めて、そのうえで投資を決める必要がある。

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