日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > ネット×リアル、BtoCに積極投資、相乗効果狙う、孫氏の真のターゲット、ネット×リアル?

日経の紙面から

ネット×リアル、BtoCに積極投資、相乗効果狙う、孫氏の真のターゲット、ネット×リアル?

[ 2018年6月3日 / 日経ヴェリタス ]

 10兆円ファンドを活用して成長するソフトバンクグループ(SBG、9984)。自動運転やロボティクスなどハイテク分野の投資先ばかりが耳目を集めるが、実は小売りなど消費者向けのBtoC企業の出資先は多く、戦略的に相乗効果を狙う姿勢も鮮明だ。「プラットフォーマー」を目指す孫正義会長兼社長の真のターゲットはネットとリアルの融合ビジネスかもしれない。

 「25億ドルで投資して半年で40億ドルになった」。孫氏は5月の決算説明会で、インドのネット通販最大手フリップカートへの投資成果を自賛した。

 SBGはフリップカートとライバルで同3位のスナップディールに出資。2社を合併して米アマゾン・ドット・コムに対抗する青写真を描いていた。結局、統合協議は物別れに終わったが米ウォルマートがフリップカート買収を発表。SBGは保有株を売却し、増やした資金で次の投資に動いている。

 ここに来てSBGはBtoCへの投資に前のめりだ。フリップカートなど電子商取引(EC)分野では他にスポーツ用品販売の米ファナティクス、ドイツの中古車販売大手オートワングループに出資している。いずれも10兆円ファンド経由での投資だ。実店舗を持つファナティクスだけでなく、ネットとリアルの融合で成長を狙う投資先は多い。決算説明会でこれら投資先のビジネスモデルや強みを孫氏が自ら説明する場面も増えている。

アリババの成功
EC投資の原点

 SBGのEC投資の原点は今も3割弱を出資する中国のアリババ集団だ。アリババはネット通販やスマートフォン(スマホ)決済サービスで成長。2000年に約20億円を投じて買ったアリババ株の時価は今や保有分だけで10兆円を大きく超える。アリババの成功が貢献してSBGの過去18年のリターンを示す内部収益率は44%にものぼる。

 日経ヴェリタスではこれまでも折に触れて孫氏の投資手法に迫ってきた。成長が見込める分野で中核になる企業に出資。事業支援や再編を通じて「プラットフォーマー」になろうとする戦略は今も不変だ。最近では投資先から得た情報で次の有望企業を発掘し、出資パートナーと共同で新たな事業モデルを作りあげる段階に入ってきた。

 携帯子会社ソフトバンクとアリババは共同でインド首位の電子決済サービス「Paytm(ペイティーエム)」の運営会社に出資。ソフトバンクはアリババに次ぐ大株主となった。

 今年2月にはソフトバンクと出資先の中国・滴滴出行が日本でのタクシー配車で協業を発表した。日本ではライドシェアが「白タク」として原則禁止されているため、タクシー配車に特化してサービスを展開する。中国で培った需要予測などのシステムを生かして効率性と利便性を高める。

 孫氏は「IT(情報技術)で混雑を予測し、最適な時間と場所でタクシーが自然に集まる」サービスを描く。中古車販売のオートワンをインドのライドシェア大手のオラに紹介し、提携に向けた協議も進めようとしている。

 宅配サービスではスマホで注文し、雑貨や食品の買い物代行と配達を担うインドのグロファーズやレストランの食事を宅配する米ドアダッシュに投資した。株式の15%を保有する米ウーバーテクノロジーズの料理宅配「ウーバーイーツ」と組み合わせた新たなサービスの展開も視野に入る。

衣料や金融
協業で事業拡大

 滴滴との提携発表と同じ2月。ソフトバンクはカジュアル衣料のストライプインターナショナル(岡山市)と共同出資会社を設立し、ネット通販サイトの「ストライプデパートメント」を立ち上げた。百貨店向け商品を中心にアパレル大手から約600ブランド、6万点の商品を集め、試着もできる。

 主要顧客は30代後半〜40代で、若い世代が中心のスタートトゥデイ(3092)の「ゾゾタウン」と差別化する。ソフトバンクは人工知能(AI)を使ったチャットサービスや、デジタル広告などのシステム面でストライプデパートメントの運営に協力する。

 AI技術を使ったサービスでは、ソフトバンクとみずほ銀行が折半出資するJスコア(東京・港)が昨秋、与信審査を行う個人向けの無担保融資サービスも始めた。

 投資と協業を矢継ぎ早に打ち出すSBGだが、ネットとリアルの融合で「先兵」となりそうなのが、子会社のヤフー(4689)だ。SBGは10兆円ファンドの投資先と、ヤフーや携帯子会社との共同会社を国内で立ち上げ、新たなサービスを展開する方針だ。なかでもネットユーザーに最もリーチできるヤフーの重要性は高い。

 ヤフーはショッピングや金融、宿泊予約などサービスを広げ、米国の本家をしのぐ高収益企業に育った。しかしここ数年は国内外のIT企業に押されて収益が伸び悩む。携帯子会社ソフトバンクはヤフー、イオン(8267)と共同でネット通販の検討や実店舗での提携を検討しており、ヤフーを軸にサービスのテコ入れを図る。

 今後、ヤフーを通じてリアルの店舗網を持つ小売りやサービス企業を買収したり、出資したりするような案件が出てくる可能性もある。

ニュースの最新記事

PAGE TOP