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無人レジ――買い物一変、人手不足に究極の解(10yearsVERITAS)

[ 2018年6月3日 / 日経ヴェリタス ]

 店員を介さずに会計を済ませる「無人レジ」の開発が進んでいる。人手不足で需要が高まり、コンビニエンスストアやドラッグストア大手は2025年までに全国の店舗に設置する方針だ。顧客にとってもレジに並ぶストレスが緩和され、メリットは大きい。今後数年で店頭の光景は一変しそうだ。

 「ここにカゴを置けば、精算する間に自動で袋詰めをしてくれます」

 ローソン(2651)が昨年秋、開設した先端技術の研究拠点「イノベーションラボ」(東京・港)。谷田詔一マネジャーはパナソニック(6752)と開発中の「レジロボ」を記者の目の前で実演してくれた。

 商品の入ったカゴをレジカウンターのくぼみに置くと、カゴはいったん真下に吸い込まれる。すると近くのモニターに商品の一覧が金額とともに表示される。画面の指示に従って精算を済ませると、今度は真下から袋に入った商品が浮き上がってきた。実際の店舗では全国で唯一、晴海トリトンスクエア店(東京・中央)で実証実験中だ。

50年に働き手3分の2

 「無人レジ」と一口に言っても仕様は様々だ。一部のスーパーやコンビニでは「セミセルフレジ」や「セルフレジ」の設置が進む。セミセルフは従業員が商品をスキャンし、自ら自動釣り銭機を使って精算する。これに対し、セルフはどちらの作業も自らで担う。レジロボは袋詰めまでを機械が手掛け、精算は自分でする。

 米アマゾン・ドット・コムが今年1月に始めた無人コンビニ「アマゾン・ゴー」は精算まで自動的に済む方式だ。事前に決済手段を登録し、入店時に機械で本人識別をすれば、あとは店中の天井に張り巡らせた100台以上のカメラが顧客の動きを追い、退店時に持っていた商品を自動で決済してくれる。

 ただしアマゾン・ゴーほどの設備を施すと「費用対効果の面から日本での多店舗展開は難しい」(コンビニ業界関係者)との声もある。ローソンの谷田氏も「投資額に見合った収益が得られるかとの観点から、最も有望な形式を見極めている最中」と話す。

 ただ無人レジの普及はもはや避けられない流れだ。背景には人手不足がある。

 総務省などによると、15〜64歳までの「生産年齢人口」は2050年に5001万人まで減少する見通し。15年比で3分の2の水準まで減る。既にパートやアルバイトの時給は上昇基調にあり、17年度の全国平均の最低賃金の目安は848円と、1年で25円も上がった。セブン&アイ・ホールディングス(3382)の井阪隆一社長も「生産性向上は最大の経営課題」と危機感を強める。

 コンビニ大手やドラッグストアの業界団体は、経済産業省と共同で「25年までに取り扱う商品にICタグを貼り付ける」と宣言した。アパレル業界でもファーストリテイリング(9983)傘下のジーユーが全ての商品にICタグを取り付け、無人レジの展開を始めた。海外でもアマゾン・ゴーにとどまらず、中国ではコンビニや外食、カラオケボックスにも無人化の波が広がる。

 無人レジが関連する技術領域は広い。大きくはレジや自動釣り銭機といった「機器」、ICタグやスキャナーなど商品の「認識技術」、そして裏で支える「システム面」の3領域だ。

 レジ本体は既存のPOS(販売時点情報管理)レジメーカーが対応を急ぐ。国内では東芝テック(6588)やNEC(6701)、富士通フロンテック(6945)が大手だ。東芝テックはセルフ、セミセルフとも幅広い商品を展開する。

無線ICタグ市場10倍

 クレジットカードやスマートフォン(スマホ)ではなく、現金精算で必要になるのが自動釣り銭機だ。国内シェア6割を握るグローリー(6457)は、アルファクス・フード・システム(3814)と飲食店用セルフレジの共同開発を進めている。

 大和証券の三浦勇介アナリストは、市場規模は将来的にセミセルフレジで17年の約300億円から1000億円、自動釣り銭機で約160億円から300億円に拡大する可能性があると指摘する。

 最も拡大余地があるのはICタグの中でも有望な無線自動識別(RFID)タグだ。現在の10倍以上の「4000億〜5000億円に膨らむ可能性がある」(大和の三浦氏)という。例えばコンビニなら年間1000億枚と、劇的に用途が広がる可能性があるからだ。

 RFID技術で一歩先を行くのはサトーホールディングス(6287)で、世界有数のシェアを誇る。タグを読み取る装置はIDEC(6652)が先行する。システム面では、レジロボでパナソニックとソフト開発で提携したヴィンクス(3784)に、市場の注目が集まっている。(野口和弘)

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