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復活アスクル(中)データ共有、開発の輪――年齢・性別、一緒に買ったもの...、販促・デザイン、129社と連携。

[ 2018年6月21日 / 日経産業新聞 ]

汎用品化とは一線

 「うちの商品は買い物カゴに入れる順番が3番や4番が多い。ついで買いを促すように、よく一緒に買われる商品と共同で販促を打ってみよう」。アスクルの個人向け通販「LOHACO(ロハコ)」の購買データを見ながらマーケティング担当者が社内で提案した。

 この担当者はアスクルの社員ではない。ロハコに商品を出すメーカーの社員だ。

 アスクルは2014年、ロハコでの購買データをメーカー側と共有する「ロハコ ECマーケティングラボ」を始めた。顧客の年齢や性別、どんな時間に何を買ったのか、ページを見たのに買わなかった商品は何かといった様々なデータを共有する。サイト上の「買い物カゴ」に商品を入れた順番やメールマガジンからどれくらい購入に結びついたのかも分かる。

 14年には12社だったマーケティングラボの参加企業は今では129社にまで広がった。アサヒ飲料と伊藤園など競合する商品を抱える企業も参加する。ロハコに商品を供給しているミツカンMD本部デジタルマーケティング部の渡辺雅子氏は「店舗では分からない気づきがある」とデータの価値を評価する。

 特長は併売品のデータも分析できる点だ。

 例えば、健康に気を使ったお茶などの飲料をよく買う40代の顧客。健康への興味が高いと思われがちだが、実はアルコールやスナック菓子の同時購入が他の商品と比べて数百倍の倍率で高い。「健康飲料を口実に、ビールなどを買う人が多いという意外な発見があった」(アスクル)という。

 購買ページで同時購入の比率が高い商品を表示すれば、さらなる商品の購入にもつなげられる。商品を売る前のテスト販売の場として、アスクルのサイトをメーカー側が利用することもできる。ラボに参加する花王の販売部門を統括する子会社、花王グループカスタマーマーケティングのチェーンストア部門専門量販店部の松田紀子マネジャーは「効果的な販促手法の開発ができる」とデータを共有するメリットを強調する。

売る仕組み構築

 コモディティー(汎用品)化しがちな日用品のインターネット通販。「ロハコ」に並ぶ商品はドラッグストアやスーパーでも安く買える。価格競争に巻き込まれずに売れる商品を開発し、売れ続ける仕組みをどのように構築するのか。岩田彰一郎社長は「寡占や独占とは対極の『オープン』なところがアスクルの強み」と胸を張る。

 18年2月、アスクルのメンバーはスウェーデンへと飛んだ。目的は雑貨などで世界的に評価の高い北欧デザインだ。20代から30代のデザイナーを発掘し、アスクルの商品作りに向けたコンペを開催。既に3人のデザイナーの起用が決まり、商品作りが始まっている。

 通常ドラッグストアなどの店舗で売られる商品は店頭で消費者の目につきやすいよう、パッケージに文字が多く派手なデザインが多い。アスクルが重視するのは「暮らしに合ったデザイン」。生活雑貨で評価される北欧のデザインはその考え方ともぴったり合う。

 例えば、エステーの消臭剤「消臭力」。店舗で売られているものは商品名が大きく描かれているが、アスクルで購入できる商品は白地にグレーの水玉もようで、商品名は下部に小さくあしらわれているだけ。ライフクリエイション本部の本部長を務める木村美代子取締役は「家や飲食店で使うのにも周りのインテリアになじむ」と話す。

 花王の消臭スプレー「リセッシュ除菌EX」は薄いピンクや水色のボトルにした。消臭スプレーには見えないデザインで、高級ホテルやレストランに置かれることも多い。木村氏は「レストランや居酒屋に行くと、トイレに商品作りのネタがないか探してしまう」と笑う。花王のハンドソープは1個あたり約380円と店舗での価格より30〜50円ほど割高だが、リピート率も高い。

 マーケティングラボで出会った企業がタッグを組む例も出てきた。トイレットペーパーを取り扱う大王製紙とトイレ用のウエットシートを開発するエステーが手を組み、パッケージのデザインを統一した。利用者はトイレ内のインテリアのデザインを統一できる。まとめ買いが期待でき、アスクルにとっては購入数の拡大につながる。

若年層開拓急ぐ

 今後力を入れるのが1980年代〜2000年代初頭生まれを指す「ミレニアル世代」に向けた商品のデザイン力を高めることだ。現在、ロハコの購入者の中心は働く女性。購入層を広げるためには若年層の開拓が欠かせない。北欧での取り組みやメーカー同士のコラボを通じて「デザインの幅を広げることで、自分たちの固定概念も広げていく」(木村取締役)。

 ネット通販では米アマゾン・ドット・コムや楽天との競争がますます激しくなっている。ネットで注文できる便利さと安さだけでは、規模で劣るアスクルは不利な面も多い。メーカーを巻き込んで、付加価値の高い商品の開発にまで踏み込むその先に、勝ち残る道が見えてくる。

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