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後発有利生かしセブン追う、ローソン銀行、17年越しの勝算。

[ 2018年9月11日 / 日経産業新聞 ]

 ローソン銀行の事業方針説明会を10日に開いたローソン。桃栗三年柿八年。何ごとも成就するためにはそれ相応の歳月がかかるという意味だが、先輩格、セブン銀行の開業からは17年も経過している。キャッシュレス化の中にあって、現金ビジネスを軸とするATMのサービスに本格的に乗り出すローソン銀行に勝算はあるのか。

 「銀行免許を持つことで銀行口座をベースに利用者の根っこに入ることができる」。記者会見でローソンの竹増貞信社長はこう強調した。キャッシュレス化への取り組みについては「いいタイミング。最後発としてのメリットを生かしていく」ことを明らかにした。

 コーヒー、おでん、レジカウンターで売る唐揚げ――。コンビニ各社の競争は横並びが常だ。ローソンの店内にもATMがあり、数多くの金融機関のキャッシュカードが利用できる。運営するローソン・エイティエム・ネットワークス(LANs)という会社の設立は2001年5月15日。セブン銀行がサービスを開始した当日だった。だが、その後、両社の足跡は大きく異なる。

 セブン銀行は提携金融機関のカードで利用する際の手数料が収入の柱だ。一方、LANsはATM網を利用した提携金融機関の事務受託が主業務で、場所貸し業的な存在だった。ローソンにあるATMはメガバンクや地方金融機関など管理行のものなので、サービス形態が一律にはならず、独自の金融サービスの提供もなかった。

 ローソンは雌伏の17年を経て、経営の自由度を高めるために銀行設立に踏み切った。LANsはこのほどローソン銀行に吸収された。

 だが既存の金融機関からは「コンビニ銀行のビジネスモデル自体が不良資産化しかねない」という声も聞く。17年度のATM1台あたりの1日の利用件数は94・1回で10年前に比べて15件も減っている。

 セブン銀行も手をこまぬいていたわけではない。夜間まで営業する飲食店がATMを夜間金庫として活用したり、外国人労働者が母国へ送金したりするサービスを創出した。海外送金件数は100万件を超え手数料収入は20億円にもなる。

 小売業には後発有利の経験則もある。先行した取り組みを参考にしながら修正を加えて商品やサービスを開発すればいいからだ。ローソン銀行の山下雅史社長も「軽いバランスシートを利用して」と語り、機動力のある金融分野のイノベーションへの意欲を語る。

 ローソン銀行の全国展開が加速するのは来年で、セブン銀サービス開始18年後になるだろう。二十四の瞳の作者、壺井栄の碑には「桃栗三年柿八年」の後にこう続く。「柚(ゆず)の大馬鹿(ばか)十八年」。ローソン銀行にはどんな果実がなるのだろうか。(編集委員 田中陽)

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