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アマゾン助け成長、物流の「桃太郎」、丸和運輸機関、人手不足退治し、4期連続最高益(異能マーケティング)

[ 2019年1月16日 / 日経MJ(流通新聞) ]

個人事業主集め、年収1000万円も マツキヨ・中小スーパー 検品・品出しもお任せ

 宅配クライシスは追い風――。アマゾンジャパン(東京・目黒)など当日配達をうたう企業からの物流受託で急成長している企業がある。「桃太郎便」を手掛ける丸和運輸機関だ。2019年3月期は4期連続で経常最高益の見通し。祖業の八百屋で培った「商人道」をモットーに、店頭での品だしも請け負う。人手不足に悩むスーパーなどの駆け込み寺として存在感を増している。

 都内の丸和運輸機関の物流センター。30台以上の軽貨物車がトランクを開けてずらりと並ぶ。桃太郎カラーの制服を着たドライバーたちが、アマゾンの段ボール箱を手際よく荷台へ積み込む。ベテランであれば個人宅へ届ける荷物は1日あたり150個にのぼる。

 桃太郎便の丸和運輸が広く知られるようになったのは17年のアマゾンとの取引開始だ。ネット通販の拡大で宅配便の数は大きく増加。ドライバーの人手不足が深刻になり、現場は荷物をさばききれなくなっていた。ヤマト運輸は、最大の取引先だったアマゾンの荷物量を減らし、長時間労働につながるとしてアマゾンが力を入れる当日配達からも撤退した。

 丸和運輸の和佐見勝社長は「当日配達には消費者の根強い需要があるはず」とし、首都圏でアマゾンの当日配達を担うパートナーとなった。

 丸和運輸の強みは17年秋から始めた個人事業主のネットワーク化にある。首都圏中心に約150人を抱え、年内には500人規模になる。一定の仕事量や年収を保証。大手と違い、集荷業務がないため、配達のスケジュールが組みやすい。ドライバーの中には、年収1千万円を超える人もいるという。

 18年冬には、当日配達のエリア拡大を見越して群馬県や宮城県で新たに配送センターを立ち上げた。ネット通販市場は今後も拡大が続くとみて、丸和運輸では20年までに注文当日に商品を届けるドライバーを1万人確保したいとしている。

 大手が手放した荷物を取り込み、19年3月期の売上高は前期比14%増の847億円、経常利益は22%増の58億円を見込む。14年の上場から株価は約10倍。和佐見社長は「アマゾンの成長を止めるわけにはいかない。共に成長できれば」と話す。

 1970年にトラック1台で創業し「誰もやらないことをやる」という信念を掲げてきた。ドラッグストア大手マツモトキヨシホールディングスとの取引はその象徴だ。

 1995年、当時175店舗だったマツモトキヨシが500店舗構想を打ち出すと、和佐見社長はすぐさま同社へ。当時の物流担当の幹部と直談判。「全国展開を目指すなら物流のフルアウトソーシングをしませんか。うちはノー在庫、ノー検品を実現してみせます」

 商品の仕入れから検品、納品、返品を一括で丸和運輸が管理し、物流拠点から店舗に毎日配送すれば在庫をなくせる。

 最初こそ「運送屋が何言ってるんだという反応だった」(和佐見社長)が、半年の試験期間を経て、正式契約に至った。現在はドライバーが店舗の鍵を預かり、開店前の店舗に商品を届け、効率的に店舗作業ができる仕組みに発展している。

 今、力を入れるのは地方の食品スーパー向けの物流サービスだ。北海道、山形、鹿児島などで産地視察会を開いて生産者を紹介し、スーパーに産地直送の取引を提案。手数料や紹介料はゼロ。生産者とスーパーで直接契約してもらい、丸和運輸は配送を受託する。卸市場から仕入れるより約2割コストを減らせ、5年ほどで約15社がこの仕組みを導入している。

 宮城県内で31店舗を展開する「ウジエスーパー」は18年7月、丸和運輸に物流業務を委託。商品は店内の棚のレイアウトに応じて分類した状態で届く。吉田芳弘常務は「ただ商品を運ぶだけでなく、弱点を補強してくれる存在。特に店員の作業負担軽減でかなりの効果を感じている」と話す。

 今後は丸和運輸のドライバーが棚の陳列や在庫の棚卸しまでするようにしたいという。人手不足が深刻なスーパーの従業員の作業を、15〜20%削減できるとみる。

 和佐見社長は「私たちの物流は後方支援ではなく前方支援」と語る。整理回収機構の依頼で01年に福島県の食品スーパーの再建に関わった際、買い物客が「新鮮な魚がない」と話すのを耳にすると、丸和運輸の社員に現金を持たせて市場に向かわせ、店頭に商品を並べたこともある。顧客の成長につながるサービスを提案することが自社の成長につながる。

 「私たちが売るものは感動と満足です」――。ポケットに入れて持ち運べるよう社員に配布した小冊子には「商人道」としてそう刻まれている。(宮嶋梓帆)

和佐見社長
原点は「八百屋」

 「成長の基盤は八百屋のDNAにある」と和佐見勝社長は話す。

 15歳から都内の青果店で働き、19歳で独立。千葉県習志野市のスーパーの一角に青果店、丸和青果を開業した。だが、24歳のとき、友人の連帯保証人となったことで多額の借金を背負う。店を手放し、残ったのは1トントラック1台だけだった。

 その後、運送業の友人の誘いで積み荷の現場を訪れる。目にしたのは「こんなの運べるか」と荒々しい態度で荷主を怒鳴りつける運転手の姿。違和感を抱くとともに青果店での経験を生かせるのではないかと考えた。

 飛び込みで営業を続けて2カ月半。雨でぬれた一斗缶をひとつひとつ拭いて製缶工場に納品すると「珍しい運転手がいる」と評判を呼んだ。

 73年に丸和運輸機関を設立。機関はエンジンを意味し、いつか業界の中心になるとの思いを込めた。理想は昔話の桃太郎だ。行動力のある犬、知識が豊富な猿、情報を持つキジを束ねるリーダーの姿を重ねた。

 親切を尽くせ、感謝されるサービスを提供せよ。経営理念には5カ条の「商人道」を掲げる。

 24年前の1月17日に発生した阪神大震災。避難所で「下着を洗う場がなくて困っている」との声を聞き、「ネットに入れて集めて、洗濯して返してあげては」と取引先に提案。すると被災地で評判に。「想像するだけでは甘い。考え抜いた先に道がある」。桃太郎の成長物語には続きがある。

【表】丸和運輸機関は消費関連企業との協業で成長  
1970 トラック1台で創業 
  73 丸和運輸機関を設立 
  95 マツモトキヨシと取引 
2006 ヨーカ堂のネットスーパー配送受託 
  13 スーパー向け事業 
  14 東証2部に上場 
  15 東証1部に指定 
  17 アマゾンジャパンと取引

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