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「3つの顔」で顧客に安心――ウエルシアHD樫本万里子さん、美・健康、一手に引き受け(売り場の知恵袋)

[ 2019年1月21日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 ウエルシアホールディングスが2016年に始めた都市型店「B.B.ON(ビビオン)日本橋店」(東京・中央)。高級化粧品と医薬品、日用品に加え、エステとネイルサロン、調剤薬局も備える総合ヘルスケアの新業態だ。化粧品販売員・エステティシャン・登録販売者の3つの顔を持つ樫本万里子さん(34)は、個客の美と健康を一手にサポートしている。

 「乾燥肌が気になる」「シミを薄くしたい」――。樫本さんが担当する1時間の顔のエステは、悩める女性たちで1〜2カ月先まで予約が埋まる。9割がリピート客で、2週間ごと通う常連もいる。引きつけるのはエステの技術だけではない。「百貨店では薬の相談はできず、通常のドラッグストアにエステはない。トータルでケアするのが魅力だ」(樫本さん)

 予定帳にはエステの来店客一人ひとりの会話内容がびっしり書き込まれている。肌の状態や過去のやりとりから、最適な化粧品を提案。疲れている様子が見えれば、登録販売者として栄養ドリンクやサプリメントといった医薬品・健康食品も紹介する。美と健康について1人に何でも相談できる安心感が、来店客の心をつかむ。

 同店での勤務は18年3月から。実はエステの経験は皆無だった。横浜市のドラッグストア店舗から突然、異動を命じられた。化粧品の販売実績を買われたのだ。

 3年ほど前、男性用ヒゲそりの売り場でオススメを紹介しようと男性客に声をかけた。黒い化粧品販売員の制服姿を見た客は「ヒゲそりを使わない女性には分からない。男を呼べ」と激高した。男性店員に交代したが、ふがいない自分が悔しかった。男性客の指摘通り、当時ヒゲそりの知識はなく、質問されても商品説明を見て一緒に選んでいるだけだった。

 この経験をバネに「同じ売り場にあるなら詳しくならなくては」と、猛勉強した。樫本さんは「まず『ヒゲそり負けしていますか』『替え刃の周期はどれくらいでしょう』と男性客の悩みを尋ねるようにした」と振り返る。すると、17年度には米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)から、アジアで最も同社のヒゲそり「ジレット」を売った店として表彰された。

 エステの技を身につけたのにも、不安や失敗をバネに奮闘する心持ちが生きた。異動当初は不安だったが、エステの研修を受け、実践するうちに楽しさを発見。「化粧をすっかりとった素の肌を見て触れるから、より肌の状態に合う化粧品を提案できる」(樫本さん)。日々入るスキンケア用品や口紅、美容ドリンクなどの新商品サンプルも積極的に勧め、来店の度に新鮮さを感じてもらえるよう工夫している。

 樫本さんは「(東京の中心部という)土地柄、新商品が多く、化粧品、医薬品、健康食品の毎週の勉強会は大変だが、ビビオンに来てよかった」と笑う。大学時代はヘルスケア品を作る理系だったが、恩師に「閉じこもって研究するより、人と接する仕事が向いている」と言われ就職を決めた。接客で何気なく言われる来店客の感謝の言葉が何よりの励みだ。

 今後はまたエステの研修に通い、手掛けられる施術メニューの拡充を目指すという。樫本さんは「過去の経験が通用しない場所だから成長できた。ネットでは買えない『体験』を来店動機にしてもらえるよう励みたい」と話す。(池下祐磨)

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