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10人で回すロボ倉庫、ダイフク「止まらない物流」、AIの目、故障予知、世界のユニクロ支える。

[ 2019年3月13日 / 日経産業新聞 ]

 電子商取引(EC)の拡大と人手不足が倉庫の姿を大きく変える。物流システム世界最大手のダイフクはファーストリテイリングと物流自動化の戦略提携。従来比9割省人化できる倉庫を開発した。アマゾンの台頭などで世界的に物流への関心は高まる一方。深刻化する人手不足の解消へ、ニッポン発「倉庫革命」の先陣を切る。

 「最後まで一緒にやってもらえるところはダイフクしかない」。ファストリの柳井正会長兼社長は信頼を寄せる。ダイフクと結んだのは世界での戦略的パートナーシップ。本部のある東京・有明に設置したほぼ100%自動化した倉庫は今後、2〜3年内にファストリの世界の倉庫に展開。店舗やECで「ユニクロ」ブランドの供給を担う。

移動「0歩」に

 1階から3階まである東京・有明の倉庫内で、作業員が関与するのは配送前の商品を集める「ピッキング」作業くらい。トラックからの積み下ろし、仕分けと倉庫への入庫からピッキング、梱包、配送箱の組み立て、配送地別の仕分け、空のケースの解体に至るまでほとんどを自動化した。

 倉庫内をくまなく探し回っていた作業員の移動距離は「0歩」に。手元に現れる水色のケースから商品を取り出し、梱包箱に入れるだけだ。配送箱は内容量を自動検知し、適切な高さで梱包。無線自動識別(RFID)タグを使い、検品精度も100%に近づけた。

 自動化によって見込む省人化率は90%に達する。100人で回していた作業を10人でできるようになる計算だ。やわらかい衣服はロボットでつかむのが難しく品質を保つため人力に頼るが、これも「ゆくゆくは全自動にしたい」(ダイフクの下代博社長)という。

 「アパレル業界としては世界初」(ファストリの柳井社長)。両社は1千億円規模をかけて中国やタイ、オーストラリア、米国など世界中の倉庫を自動化する。各国に専門チームを派遣した。世界的な知名度のあるファストリとの提携は、どこか「黒子」だったダイフクの事業展開にプラスの効果を与えつつある。

 JR近江八幡駅(滋賀県)からバスで約40分もかかる田園地帯に、ダイフクの物流機器ショールーム「日に新た館」がある。昨年、ダウンジャケットで最大手の中国企業の社長が訪れた。「ユニクロと組んだでしょう。うちも新しい物流倉庫を作りたい」。ファストリとの提携効果は絶大だ。

 ダイフクは知る人ぞ知る世界ランカーでもある。米専門誌による「マテリアルハンドリング」とよぶモノの保管・搬送・仕分けシステムの売上高(2017年)では独シェーファーや米デマティックなど欧米勢を抑えて世界1位。最新鋭の物流機器を展示する同施設には世界中から見学者が引きも切らない。エチオピアやガーナなどアフリカ諸国を含め年に約50カ国から、先端技術を一目見ようとやってくる。

二人三脚の風土

 1950年代、国内自動車メーカーの乗用車生産本格化を支えた。自動車メーカーの生産ラインでプレスや溶接、塗装、物流など生産ライン全体の自動化システムを担うようになり、自動車各社の海外展開の波にも乗った。トヨタ自動車やホンダなどとの二人三脚が「最後までやる」という企業風土を生んだ。

 「ウェブコンベヤを担いで自動車と心中しよう」――。当時の経営指針には熱気がにじむ。70年代にはブームとなったボウリングマシンを、80年代以降は半導体や液晶の生産システムなど時代に応じた生産・物流システムを供給。自動車の洗車機から近年は小売向けの物流システム、空港向けの手荷物搬送などに手広く業容を拡大。19年3月期の売上高(4600億円)の海外売上高比率は7割。連結純利益は370億円と3割弱の増益を見込んでいる。

 分速600メートルと世界最速の空港向け手荷物搬送システムや、1時間あたり1万ケースを高速で自動仕分けする物流倉庫は、幅広い業界で磨いた技術の結晶。次代の技術として力を入れるのが「止まらない物流」の実現だ。

 AI(人工知能)を使った遠隔監視システム「io―eye(アイオーアイ)システム」は20年にも本格投入を目指す。現場で問題が起きる前にAIが予知してラインの停止を防ぐ仕組みだ。

 消費者に近い流通系企業は予期せぬ停止の被害も大きい。電子商取引(EC)の拡大で在庫は膨大になり、大きさも千差万別。製造現場向けより「倉庫が止まり即日配送が間に合わなかった時、事業者のイメージに傷がつきやすい」(FA&DA事業部生産本部の田口和浩設計部長)。

 数千個に上るセンサー類からデータを吸い上げる。これまで稼働期間に応じて取り換えを促していたものを、AIが荷物の重さまで加味して不具合を予測する。「故障予知や交換部品の一発修理につなげたい」と田口氏。車の事故などを記録するドライブレコーダーの物流倉庫版といえる。

 倉庫をつかさどるコントローラーの入出力信号やスピードなどの稼働状況を記録するメモリーとひもづけることで問題を緻密に分析し、データはダイフクの設計部門などが24時間監視する。

 経済産業省によれば国内のEC市場は17年で前年比9%増の16・5兆円で増加傾向が続く。三大都市圏のフォークリフト運転者など構内作業のアルバイト・パートの平均時給は1月で1205円と、4年前の25%増。全業種の伸び(9%増)を上回り、人手不足は待ったなしだ。物流施設を支えるロボットやフォークリフトも無人化の流れが加速している。

 豊田自動織機は全方向に走れる円筒形のロボット「AiR」シリーズを開発中。人の足を検知して追いかけ、きびきびとした動きも追尾する。三菱ロジスネクストも複数台が効率よく同時に稼働できる無人のフォークリフトを18年に発売した。

 米アマゾンは12年、ロボットスタートアップの米キバ・システムズを買収した。自社の物流倉庫に搬送ロボットが棚を持ち上げて運び、自動学習で最適な棚の位置を決めるシステムなどを開発する。製造業から流通まで、企業は倉庫と無縁ではいられない。物流現場の高度化は産業界全体の競争力に直結する。(西岡杏)

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