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小売り・外食背負う三重苦、頼みのインバウンド鈍化、人件費上昇も重荷。

[ 2019年7月7日 / 日経ヴェリタス ]

 主要小売り・外食企業が「三重苦」に苦しんでいる。食品などの相次ぐ値上げなどを受け、消費者マインドが悪化。頼みの綱だったインバウンド(訪日外国人)消費には鈍化傾向がみられる。人件費増も収益の重荷となる。今秋には消費増税が控えており、国内消費がさらに下押しされるのは確実な情勢だ。今週ピークを迎える2019年3〜5月期決算も苦戦が予想される。

期待の10連休
効果は限定的

 個人消費の鈍化の影響を最も受けているのが百貨店だ。6月28日に発表したJ・フロントリテイリング(3086)の19年3〜5月期連結純利益は74億円と11%減った。高島屋(8233)は固定資産の売却で純利益こそ大幅増益となったが、経常利益は29%減の71億円に減少。両社とも主力の婦人服などの販売が低迷したうえ、配送費や広告宣伝費などのコスト増で採算が悪化した。期待された、改元に伴う10連休の収益押し上げ効果も限定的だった。

 これまで百貨店を支えてきたインバウンド消費にも、足元で陰りがみえている。Jフロントの3〜5月期の免税売上高は、大丸心斎橋店南館(大阪市)の化粧品売り場を拡充した影響で21%増、高島屋も単体ベースでは4%増えた。だが、Jフロントの6月の免税売上高は前年同月比12%増にとどまり、増収率が3〜5月期より縮小した。高島屋も足元では減少基調だ。

 生鮮食品や日用品の販売も振るわない。4日発表したセブン&アイ・ホールディングス(3382)の3〜5月期連結決算は、国内外のコンビニエンスストア事業こそ伸びたものの、総合スーパー(GMS)を手掛けるイトーヨーカ堂は営業利益が8割減った。イオン(8267)は子会社の不正会計の影響に加え、本業のGMSと食品スーパー事業の採算が悪化。5日発表の19年3〜5月期の連結最終損益は43億円の赤字(前年同期は65億円の黒字)だった。

 各社にとって大きな負担となっているのが、アルバイトなど人件費の上昇だ。11日に決算発表を予定するローソン(2651)は人件費増加で加盟店の収益が悪化。今期は加盟店を支援するための資金確保のために、減配する方針だ。サイゼリヤ(7581)も既存店売上高が4月まで13カ月連続で前年割れとなった。物流費や労務費などのコスト増も収益に響いている。

 消費者のマインドも落ち込みが目立つ。内閣府が7月1日に発表した6月の消費動向調査では、消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)が38.7と、前月比で0.7ポイント低下した。悪化は9カ月連続で、14年11月以来、4年7カ月ぶりの低水準にまで落ち込んだ。年明け以降、食品や日用品の値上げが相次ぎ、消費者には生活防衛の意識が強まっているようだ。

節約志向強く
消費増税に懸念

 10月に予定されている消費増税も、消費者の財布のひもを固くする可能性がある。前回、14年4月の消費増税後は個人消費が大きく低迷。その後も景気への悪影響が長引き、度重なる増税延期につながった。

 今回は軽減税率などの政策効果で「景気への影響は限定的」との見方も一部にはあるものの、小売り・外食各社の業績に少なからず悪影響を与えるのは確実視されている。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「前回よりも傷は浅くなるとみられるものの、節約志向の高まりで、個人消費の回復には時間がかかる可能性が高い」とみる。

 消費者心理の悪化、インバウンドの鈍化、人件費の重荷--。三重苦に見舞われる小売業にとって、活路は海外展開や商品力の強化だ。

 ファーストリテイリング(9983)は中華圏での販売が好調で、海外部門が稼ぎ頭になりつつある。18年9月〜19年2月期の海外ユニクロ事業の営業利益は884億円と、国内ユニクロ事業の677億円を上回った。11日に控える18年9月〜19年5月期決算も海外事業が貢献し、増収増益となる見通しだ。

 良品計画(7453)も成長市場と位置づける中国を中心に、海外事業の拡大を見込む。市場予想(QUICKコンセンサス)によると、10日発表の19年3〜5月期の連結純利益は前年同期比13%減の83億円になると予想されているが、海外事業は拡大するもようだ。

 消費を喚起する商品力も問われている。ニトリホールディングス(9843)が3日発表した19年3〜5月期連結決算は、純利益が前年同期比3%増の203億円となった。機能性を高めた寝具や、商品群を強化している家電などが好調だった。

 国内市場は少子高齢化などを背景に、今後も縮小する公算が大きい。小売り・外食各社には、海外事業などによる収益の多角化や、消費者の財布のひもを緩めるための工夫が求められる。(鈴木孝太朗、佐藤俊簡)

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