日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > 点検消費税10%実施まで1ヵ月(上)ポイント還元、浸透鈍く――景気下支えに懸念。

日経の紙面から

点検消費税10%実施まで1ヵ月(上)ポイント還元、浸透鈍く――景気下支えに懸念。

[ 2019年9月2日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 消費税率を8%から10%に引き上げる10月1日まであと1カ月。5年半ぶりの増税を点検する。

 8月上旬、宇都宮市で商工会議所が開いたセミナーは約100席の会場が経営者らで埋めつくされた。テーマは消費増税に伴うポイント還元事業。主催者の男性は「想定の倍の申し込みがあり、大きな会場に切り替えた」と話す。

想定の1割止まり

 10月から20年6月まで中小店で買い物し、キャッシュレス決済した消費者にはポイントが還元される。QRコードなどの決済事業者に政府が補助金を支給。還元率は一般の中小企業の買い物で5%、コンビニエンスストアなどフランチャイズチェーン(FC)に加盟する中小企業では2%だ。

 急速に高まる店側の関心と裏腹に経済産業省幹部の顔色はさえない。「増税前後に店から申請が急増し対応が追いつかないかも」。今年8月21日時点で審査に通ったのは約20万店。周知が行き届かず、想定の1割にとどまる。10月までに準備が整わず、店舗の広がりを欠けば消費の下支え効果も小さくなってしまう。

 一方、大企業は「ポイント還元が安値競争を誘発する」と警戒を強める。参加した中小店で買った消費者には、決済で使ったカードなどのポイントが増税分を上回る5%分もつく。参加店は店頭のポスターですぐに見分けられるので中小店に顧客を奪われかねない。

 セブン―イレブン・ジャパンなどコンビニ大手はポイントではなく、顧客の購入額の2%分を代金から差し引く方針を打ち出した。経産省はコンビニに限らず、希望する店には同様の方式も認める考え。より強くアピールできる「値引き」が広がれば、大手は対抗策を打たざるを得ない。

 「経験のない価格競争やポイント合戦が起こる」。食品スーパー、ヤオコーの川野幸夫会長は懸念する。業界団体によると食品スーパーの売上高営業利益率は1%台。自力での5%還元は消耗戦になりかねない。増税分の値下げを納入業者や生産者に強要することは法律で禁じられているが、「大手が取引先に圧力をかける事態もありうる」(食品メーカー幹部)。

中小になれば…

 補助金でポイント還元できる中小企業の区分に入ろうと、資本金を5000万円以下に減らす減資ラッシュも起きた。高知県のスーパー、兵庫県のホームセンター……。帝国データバンクによると、1〜7月の小売業の減資は412件と前年同期に比べ63%増えた。

 経産省は終了後に増資して大企業に戻るなどポイント狙いが明らかな場合には補助金の返還を求める場合もあると説明するが、そうでなければ容認姿勢。体力のある大企業を税金で支援する構図になりかねない。

 住宅ローンや自動車税の減税など手厚い対策もあり、税率を8%に上げた14年のような大きな駆け込み需要は起きていない。住友不動産ではモデルルームの来場者数や契約戸数が前年並みで推移している。

 だが米中対立などで世界経済の下振れリスクが強まる中で、増税後の消費には不透明が強い。手続きの遅れでポイント還元に参加できない中小店は競争から取り残されかねず、その行方は混沌としている。

ニュースの最新記事

PAGE TOP