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百貨店・アパレル、蜜月に幕、オンワード、600店閉鎖へ、「店広げすぎた」空白の10年。

[ 2019年10月7日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ネット・SCへ転換進まず

 オンワードホールディングス(HD)が国内外の約2割に当たる約600店舗の閉鎖を決めた。百貨店との二人三脚で事業の礎を築き、今なお主要売上高の7割を占める「百貨店アパレル」の代表格である同社。それでも消費の主戦場がネットへと移るなか、両業界の蜜月関係は既にひび割れていた。オンワードの決断で国内アパレルの伝統モデルは終焉(しゅうえん)を迎え、地方を中心とした百貨店が一層の苦境に追い込まれるのは避けられそうにない。

 「これまでは店を広げることにエネルギーを費やしてきたが、量よりも質になる」。4日、都内で記者会見したオンワードの保元道宣社長は大規模な構造改革に乗り出す理由について、沈痛な面持ちでこう述べた。百貨店を主力に出店拡大を続けてきたが、百貨店の客層が「高齢化し、20〜30代の若者のシェアが低い」とした。

 オンワードは全世界で約3000店を抱える。保元社長は閉鎖数は「中長期ではそうなる」と述べ、600店に上ることを認めた。「23区」「組曲」など主要ブランドは残す一方、低採算ブランドは廃止を検討する。対象地域は地方が中心となる見通しだが、店舗が複数ある都心部も対象になる。「(閉鎖は)2020、21年以降も続く」(保元社長)という。

 閉鎖店舗の従業員は、ネット通販などのデジタル部門やオーダースーツ店への配置転換などで対応する。20年2月期に約250億円の特別損失を計上し、連結最終損益が245億円の赤字(前期は49億円の黒字)になる見通しだ。

 最終赤字への転落は09年2月期以来、11年ぶりになる。当時は「リーマン・ショック」によるアパレル不況の嵐が吹き荒れ、百貨店市場は1割縮小した。代わりに「ユニクロ」や「H&M」といったカジュアルブランドが台頭。オンワードは主力の婦人服ブランド「23区」のてこ入れに失敗し、アパレル業界では「百貨店向けビジネスだけでは、もはや成り立たない」とされた。

 にもかかわらず、オンワードの主要売上高に占める百貨店向けの割合は7割と、今も当時もほぼ変わらない。なぜ、百貨店依存から脱却できなかったのか。

 「営業力のオンワード」。百貨店やアパレル業界ではこう評される。オンワードは戦後から、百貨店の出店拡大とともに成長してきたが、その原動力は百貨店の"一等地"確保に向けた徹底的な営業攻勢だ。百貨店が新規出店する際は「とにかく特に最も目立つエスカレーター周辺を抑える、というこだわりが強く、我々もよく場所を奪われた」(他のアパレル幹部)という。

 人気ブランドを自ら呼び込むノウハウに乏しい百貨店にとっても、オンワードのような企業はありがたい存在だった。バブル経済時代のDCブランドブームもあって、アパレルと百貨店の蜜月関係はさらに強まる。その先頭を走るのが、約20年にわたり経営に携わった中興の祖、広内武・名誉会長が率いるオンワードだった。

 だが00年代に入ると、「ユニクロ」などが席巻し、郊外や駅近の商業施設(SC)で百貨店の市場を奪い始める。「ゾゾタウン」などのネット通販も台頭し、消費者は服を店で探すのではなく、ネットで買うスタイルが急速に浸透していった。

 これにリーマン・ショックが追い打ちをかけ、百貨店が主力の競合各社は「モノが売れない場」と化した百貨店との距離を置き始める。ワールドは16年3月期中に全店舗数(当時)の15%前後にあたる500店程度を閉鎖。TSIホールディングスも全店舗数の約15%にあたる260店舗を閉鎖した。

 他社の動きに反し、「23区」や「J・プレス」など中高年層向けのビジネスブランドに強みを持つオンワードは、百貨店との関係維持を決めた。保元社長は「当時はネット通販事業がほぼゼロだった」と説明。「脱・百貨店」後の事業モデルが見通せなかったことを理由に挙げた。

 また、ショッピングセンター(SC)への出店拡大が思うようにいかなかったことや、百貨店側から撤退への猛反発もあったもようだ。過去のしがらみを断ち切れないまま、オンワードはリーマン・ショックから大規模な店舗閉鎖までに約10年の歳月を要した。(花井悠希、藤村広平、勝野杏美)

「穴埋め難しい」
地方・郊外店は戦々恐々

 オンワードホールディングスの大量閉鎖発表は、百貨店、特に苦境が続く地方・郊外店や地域の二、三番店にとって衝撃だった。真っ先に見切られかねないからだ。

 オンワードは今後、百貨店と閉鎖交渉に入るもよう。別のアパレル首脳が「婦人服の高級市場に限り、都市部の百貨店は残る」と言うように閉鎖対象の大半は地方・郊外店が中心になる公算だ。

 関西が地盤の百貨店担当者は「『23区』などのブランドが撤退すれば、穴埋めが難しい」と不安を隠さない。オンワードのブランドが複数入る、北海道のある百貨店は「紳士から子ども向けと扱うブランドが多く、撤退となると影響は大きい」とため息をつく。別の地方百貨店担当者は「アパレルに支えられた時代は終わったのかもしれない」とつぶやいた。

 百貨店は「消化仕入れ」という独自モデルで運営され、アパレルが出店費用や在庫リスクを負う。最近は買い取りなど取引形態は多様になるが、販売員もアパレル負担なだけに、市場が縮む地方店への入居は最も避けたいというのが本音だ。

 地方百貨店の間では、新たなビジネスモデルを模索する動きもある。中三弘前店(青森県弘前市)は契約形態を柔軟にしたアウトレットを導入し、大手アパレルの誘致に成功。丸井も無人店舗などでコスト削減に動く。

 2019年は閉鎖数が9年ぶりに2桁台に乗る百貨店。「アパレルの売り方をさらに工夫していかなければならない」(三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長)ことだけは間違いない。

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