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タイでも「無人店舗」じわり、需要受け観光地などで。

[ 2019年10月3日 / 日経産業新聞 ]

 【バンコク=岸本まりみ】タイでレジなどに人がいない「無人店舗」が増えつつある。大手財閥で総合消費財最大手のサハ・グループは2020年までに2店舗を出店する。携帯通信最大手のアドバンスト・インフォ・サービス(AIS)は観光地のプーケットに設置した。スマホの普及でモバイル決済、アプリを使ったマーケティングなどがしやすくなり、人件費削減にもつながる。普及すれば人手不足対策にもなるため、各社の期待は高まる。

 サハは6月末、バンコクの本社内にコンビニエンスストアの無人店舗「ヒズ・アンド・ハー スマートショップ」の1号店を開業した。利用するにはまず同国で普及している対話アプリ「ライン」で電話番号、名前などを登録する。顔写真を店頭の端末で登録し、出入り口に設置した顔認証機能付きのカメラで本人と確認されればゲートが開く。

 買い物は普通のコンビニと同じ。レジに商品を置くと、商品のICタグを読み取り、瞬時に支払総額が表示される。モバイル決済のほか、現金、クレジットカードでも支払える。入店時に本人確認しているので、ポイントなど特典をもらい損ねることはない。商品補充などを除き、店員はほぼいない無人店舗だ。

 20年までにバンコクにもう一店出店する。サハはタイの携帯通信2位、トゥルー・コーポレーションと組み、無人店で使うシステムを開発した。同プロジェクトの担当者によると「(無人店舗にかかる)長期的な投資額は8億〜10億バーツになる」という。

 無人店舗の狙いは人件費を抑えること以上にデータの収集だ。カメラで買い物客の購買行動や移動の仕方を解析するなどPOS(販売時点情報管理)などでは分からない消費行動を分析できる。アプリで登録してもらっているので、顧客属性、嗜好に応じた販売促進策を個別に実施することも容易だ。

 サハ・グループはグループ300社、社員10万人のタイ最大の消費財メーカー。無人店舗を導入した「ヒズ・アンド・ハー」だけで100店、ローソン、ツルハドラッグと提携した小売店も多数運営しており、無人化もしくは省力化する余地が大きい。

 サハ・グループのブンヤシット・チョクワタナー会長は日本経済新聞社の取材に対し、「スマートショップは将来に向けた投資だ。新しい技術で新時代のニーズに応える」と語った。サハは17年にネット通販大手ラザダと提携するなどネット通販にも力を入れており、今後実店舗とネット通販の連携を進めていく可能性もある。

 携帯通信最大手のアドバンスト・インフォ・サービス(AIS)は2月、プーケットに同社初となる無人店舗を開設した。キオスク端末を使って、来店客が自ら各種手続きを済ませられるようにした。支払い方法はモバイル決済のみで、人工知能(AI)を搭載したロボットが接客する。

 米国やアジアでは無人店舗が広がりつつある。米国では18年、アマゾン・ドット・コムが無人コンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」を出店。中国では京東集団、シンガポールではオネストビーなどが無人のスーパー、コンビニを展開している。

 タイでは15〜64歳の労働人口が2013年から減少傾向で、将来の人手不足は深刻だ。さらに3月の総選挙では主要政党が最低賃金の引き上げを公約に掲げ、人件費の上昇も予想される。小売り、サービス業を中心に無人化の波はますます広がりそうだ。

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