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QR決済、交通系に攻勢、高還元率で囲い込み、キャッシュレス激戦、淘汰も。

[ 2019年10月29日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 現金を使わないキャッシュレス決済で、スマートフォンを使うQRコード決済と電子マネーの間の競争が激しくなっている。大きな還元をうたうQRコードの利用が広がり、手軽な決済や交通機関での利用を強みとする電子マネーの伸びが鈍ってきた。政府による消費増税後の還元策は両者に追い風だが、激しいサービス競争が事業者の淘汰につながる可能性がある。

 電子マネーは専用のカードか、専用アプリを入れたスマホを機器にかざして決済するものが広がっている。鉄道などの交通機関で利用できるものもあり、一気に普及した。

 QRコード決済はスマホのアプリを立ち上げ、店舗にあるコードを読み取るか、スマホ画面のコードを読み取ってもらって決済する。専用の機器がなくても利用できるため、中小店でも導入しやすい。身近な決済手段として急速に存在感を高めている。

 QRコードを提供する事業者は大胆な還元策で利用者を囲いこもうとしている。ソフトバンクグループとヤフーが手掛けるPayPay(ペイペイ)は10月の消費税率引き上げに合わせて始まった国の還元策の利用者に対し、独自で5%の還元を上積みしている。LINEペイなども還元率の高さで支持を集める。

電子マネー鈍る

 QRコードの攻勢による影響は、日銀がまとめる決済動向にも出てきている。電子マネーは07年に統計を取り始めてから順調に成長してきたが、今年7月には決済件数が初めて前年を下回った。政府が還元策を始めた10月以降は伸びている可能性が高いが、2桁の伸び率が続いた数年前に比べると伸びは鈍っている。

 電子マネーはJR東日本などの交通系、セブン&アイ・ホールディングスなどの流通系、専業系の3つに大別できる。18年3月末の電子マネー発行枚数は約3億7千万枚と約2億8千万枚のクレジットカードを上回る。手軽な支払い手段として伸びてきたが、決済サービスコンサルティングの宮居雅宣代表は「ポイントをためたい人が、還元率の高いQRコードに移っている」と話す。

 QRコードはSNS(交流サイト)やウェブサービスの事業者が多く手掛けている。ポイント還元に費用をかけてでも、決済をきっかけに他の自社サービスの利用者を増やす戦略だ。

コンビニ焦点に

 28日はヤフーがネット通販サイト「ペイペイモール」などで、支払額の最大2割をペイペイでの利用向けに還元すると発表した。決済がユーザーの利便性だけでなく、サービス全体の価値向上に使われている。

 電子マネーも還元策を充実させて対抗し始めている。「Suica(スイカ)」は鉄道の利用で運賃の最大2%分をポイントとして還元し、9月のポイント会員の入会は8月の14倍になった。イオンのWAON(ワオン)も7月から、商品購入に伴うポイントの還元率を1%と従来の2倍に上げた。

 今後の動向を占うのが、従来は少額決済で現金利用の多かったコンビニだ。各社は政府の還元策にあわせて、キャッシュレス決済ならば2%分をその場で差し引いている。セブン―イレブン・ジャパンは増税前後でキャッシュレス決済比率が約7ポイント上がり42%に、ファミリーマート、ローソンもそれぞれ約5ポイント上がって約25%になった。

 関東はスイカなどの交通系が浸透し、コンビニのキャッシュレス決済の比率が他地域より高いとされる。政府の還元策を機に、全国のコンビニでキャッシュレスの利用が一段と広がりそうだ。

 大和総研の長内智主任研究員は「日本ではポイント還元が決済利用の重要な要素になり、しばらく乱立状況が続く。消耗戦のなかで徐々に淘汰される事業者が出てくるだろう」と指摘する。

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