日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > アベマに投資、支えは広告、サイバー、AI・動画で収益狙う。

日経の紙面から

アベマに投資、支えは広告、サイバー、AI・動画で収益狙う。

[ 2019年10月31日 / 日経産業新聞 ]

 サイバーエージェントは新たな収益源の開拓を急ぐ。30日発表した2019年9月期の連結決算は純利益が65%減の16億円、売上高が8%増の4536億円だった。インターネットテレビ「アベマTV」への投資をネット広告・ゲームで支える構図が続く。収益増に向けAI(人工知能)と動画を使った広告事業を育てる考えだ。

 「アベマTVに年200億円程度の赤字が出る先行投資をしながら、トップラインも伸ばしつつ、300億円ぐらいの営業利益を確保している」。30日夕、都内で決算説明会を開いたサイバーエージェントの藤田晋社長は19年9月期の決算についてこう手応えを語った。

 サイバーの連結業績は主にメディアと広告、ゲームの3つの事業からなる。営業損益ベースでは「アベマTV」を中心とするメディア事業が178億円の赤字となった一方で広告とゲーム事業はそれぞれ206億、260億円の黒字となった。

 アベマTVも将来の収益化をめざしているが、黒字化への見通しは立っていないのが現状だ。藤田社長はアベマTVの開始から3年半を振り返り「メディアをつくるのは視聴習慣で、(視聴の)くせをつけるのに長い年月がかかると感じている」と指摘。「5〜10年というスパンで、人々の生活にきちんと定着させていきたい」とアベマ事業が軌道に乗るにはなお時間がかかるとの見通しを示した。

 投資期と位置付け、コンテンツへの先行投資を続けるアベマTVの成長には広告とゲームで安定収益を生み出すことが欠かせない。収益拡大に向けてサイバーが力を入れるのがAIと動画を活用した広告の展開だ。

 子会社で動画広告会社のサイバーブル(東京・渋谷)は今年4月に小売店で広告の個別配信の実証実験を始めた。店内にAIカメラ付きサイネージを設け、来店者の年齢や性別に合わせて最適な商品の動画広告を流す仕組み。

 ローソンやイオンと実験を進めており、20年以降に小売店舗で導入していく計画だ。

 9月にはAIを活用したデジタル広告の強化などを目的に「AI事業本部」も発足させた。ネット広告の開発に加え、小売り(リテール)と技術(テック)を融合させた「リテールテック」分野などのAIを使った新事業の開発に一段と力を入れる方針だ。

 スマートフォンなどの普及に伴いネット広告の市場は拡大する見通しだ。電通によると18年のネット広告費は前年比16・5%増の1兆7589億円となった。ただ広告市場は国内総生産(GDP)の成長率に比例するとされる。ネット広告へのシフトは今後も進むが、世界的な景気後退を受け、広告市場全体が縮小すれば、ネット広告の成長率も鈍る可能性もあり、今後も安定的な収益を確保できるかは不透明だ。

 藤田社長も「景況感の先行きに対して広告主が警戒感を抱いている」と、広告市況に懸念を示した。

 サイバーにとってはAIや動画を活用した広告事業で収益を確保しながら、アベマへの積極投資を続け、黒字化を達成するという難しい局面が続く。アベマの収益化が遅れれば「あぶはち取らず」に陥る危険性も秘めている。(篠原英樹、藤井太郎、平岡大輝)

ニュースの最新記事

PAGE TOP