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メガネトップ躍進、眼鏡にかなう18900円、上客は45〜55歳(不況またよし)

[ 2009年6月3日 / 日経MJ(流通新聞) ]

均一価格・接客じっくり

 静岡市を本拠に全国展開する眼鏡専門店2位のメガネトップが好調だ。他の大手チェーンが軒並み業績悪化に見舞われるなかで、2009年3月期の連結経常利益は3年連続で過去最高を更新。06年10月から始めた1万8900円均一業態「眼鏡市場」への転換が大きく貢献している。追加料金なしの価格設定ときめ細かな接客を売りに、中年層を取り込んだ。眼鏡の買い替えサイクルは約3年。「眼鏡市場」開始当初の購入客を再度店舗に呼べるのか。次の成長ステップに向けて新たな魅力づくりも求められる。

 「ライバル店のチラシにドルチェ・アンド・ガッバーナの眼鏡が2万円で載っています」。「早速仕入れて1万8900円で販売しよう」――。まだ外が暗いうちから、電話口で冨沢昌三社長らの声が響く。

 メガネトップの朝は午前4時に始まる。社長をはじめ取締役、部長など幹部30人余りが自宅から電話やメールで連絡を取り合う。競合店の価格や店舗従業員の接客方法など情報を共有し、迅速な対応をとるためだ。同業からメガネトップに転職した野方学取締役営業本部長は「社長が一番の早起きで驚いた。ここは戦場そのもの」と表現する。

追加料金なし

 冨沢社長は「均一価格だと接客の強みを生かしやすい」と話す。メガネトップの主力業態「眼鏡市場」はどれも同じ価格。店舗従業員たちは販売価格を気にせずに、顧客の商品選びにつきあえる。顧客にとっても「店内の全商品を購入対象として検討でき、選択肢が広い」という理屈だ。

 徹底した顧客サービスも売り。通常なら手渡しまで1週間かかる特注レンズも、顧客が望めば店長が急いで近隣店舗に在庫を確認、なければメーカーに直接かけ合って数日で顧客に渡すこともある。別途の料金をとらずにだ。渋谷店(東京・渋谷)の中山善友店長は「顧客の立場になったサービスで固定客を増やしたい」と説明する。

 眼鏡小売市場は4600億円と、10年間で1000億円縮小した。業界最大手の三城ホールディングスは09年3月期に32億円の連結最終赤字となった。3位のメガネスーパーも09年4月期に全店舗の約3割にあたる150店を閉鎖する事態に。

 このなかでメガネトップの快進撃が目を引く。09年3月期連結決算は売上高が前の期比11%増の466億円となり、経常利益は2・1倍の54億円と過去最高を達成。経常利益はわずか3年で11倍に膨らんだ。

 同社がさまざまな価格の商品を並べる既存の業態から、「眼鏡市場」に転換を始めたのは06年10月から。フレームとレンズをあわせた眼鏡一式を1万8900円均一にしたのが特徴だ。超薄型や遠近両用など、どのレンズを選んでも追加料金をとらない。HOYA、ニコン・エシロールなど有名ブランド品もそろえる。

 節約志向もあり、従来は他社で4万〜5万円の商品を購入していた人たちが「眼鏡市場」に足を運ぶようになった。渋谷店で購入していた50代の男性は「これまで別の店で高級品を買っていたが、実際に商品をみてこれで十分だと思った」と話す。年代別で特に強いのが45〜55歳の層。一定の品質は欲しいが支出を抑えたいという声を吸い上げている。

 追加料金なしに採算を維持できるのか気になるところだが、馬着敦嗣商品部長は「レンズの品目数を20に絞り込み大量発注することで、業態転換前と比べて仕入れ価格を半分に下げた」と明かす。ライバル眼鏡店が軒並み販売不振のなかで「眼鏡市場」の存在感がますます高まっており「レンズメーカーが信じられない低い価格を提示してくることもある」。

 事実メガネトップの採算は着実に向上している。四半期ベースの売上高営業利益率の推移がそれを物語る。最新の09年1〜3月期は14・0%。「眼鏡市場」を始めたばかりの07年1〜3月期と比べてほぼ2倍の水準だ。

自社工場も強み

 品質維持と採算改善には自社工場も役立てている。1998年、眼鏡フレーム製造のキングスター(福井県鯖江市)を買収した。大手チェーンで自社工場を持つのはメガネトップだけだ。

 同工場で製造する商品の割合は全体の1割程度にとどまり、約5割が国内外のナショナルブランド(NB)、約4割程度が中国などから調達するプライベートブランド(PB)。それでも「自社工場を持つことで部品やフレームの原価を把握しやすく、外部から仕入れる際に交渉力を高められる」(野方取締役)利点が大きい。

 品質面では手作業による部分が多い眼鏡だけに、熟練の職人による技術伝承も欠かせない。そこでキングスターの技術者を中国の協力工場に常駐させている。部品と部品をつなぎ留めるロウ付けなどの技術をつきっきりで指導し、「眼鏡市場」の品質を保つ。

 逆風下で異例の成長を遂げたメガネトップだが、冨沢社長は成長戦略を一段と加速する考え。09年3月期末の総店舗数は559店。このうち492店と9割を占める「眼鏡市場」を、5年以内に1000店まで拡大する方針を掲げる。

 課題は幅広い年代に満足を提供すること。落ち着いたデザインが受けてか、働き盛りの中年層に高い支持を得る「眼鏡市場」だが、若年やシニア層のシェアは相対的に低い。多様な世代を納得させる商品づくりも欠かせないだろう。

全店舗2度巡回 業態転換を決断

 「売り上げが落ちる一方だ」「中年層が欲しがる眼鏡を増やしてほしい」。閉店後の深夜の店内。冨沢社長と店舗従業員が激しく意見をぶつけ合う。冨沢社長が全国の店舗を巡回した05〜06年にかけての光景だ。

 当時のメガネトップはさまざまな価格の商品を並べる業態を中心とし、平均単価は2万4000円程度。既存店の業績が伸び悩み始めたことに危機感を募らせた冨沢社長は、解決の糸口を探るため全店舗を2度ずつ回った。

 その結果いくつかのことが分かった。まず品質を重視する大人も納得する商品が欲しいということ。一方でもっと安く、明朗価格で提供する仕組みも欠かせないということだ。

 そのころ東北地方の店舗で、低価格を売りにする地元チェーンに客を取られ出していた。時あたかもその企業がメガネトップの本拠地である静岡に出店することが判明。対抗策が待ったなしの状況となり、「眼鏡市場」への転換を決断した。

 成功のカギを握るのが価格設定。06年春、消費者調査を実施し、納得して購入できる価格が2万〜2万1000円と突き止めた。冨沢社長はさらに1割ほど低い1万8900円を採用する。

 当時、眼鏡業界は若者を意識した超低価格帯と、中高年向けの中高価格帯に市場が2分。冨沢社長は「その間げきを縫う価格設定なら勝ち残れる」と踏んだ。この決断が吉と出た。集客力が高まり、「眼鏡市場」はあっという間に主力業態に育った。

冨沢社長に聞く 次は若者や女性開拓

 躍進するメガネトップを率いる冨沢昌三社長。経営戦略を聞いたところ、現在の1万8900円均一を貫くと強調。手薄だった若者や女性向けの商品作りに力を入れるほか、海外展開にも意欲を示した。

 ――節約志向が一段と強まるなか、値下げなど価格戦略を見直す可能性はありますか。

 「すでに販売個数では業界首位の三城ホールディングスを抜いており、規模の強みを生かして値下げすることは可能だ。ただいまの価格で消費者に満足してもらっていると感じる。1万8900円のままで品質向上を追求したい」

 「従来の中国に加えて、3月からは新たに韓国の協力工場でフレーム生産を始めた。中国の工場と比べるとコストは高いが、デザインや品質に優れていると思う」

6面に続く

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