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夜のスーパー、総菜で集客――帰宅ピークに合わせ人員配置。

[ 2009年8月7日 / 日経MJ(流通新聞) ]

味向上へ部門を超えた商品づくり

5分で買える売り場・商品配列

 消費者のライフスタイルが変化し、深夜のマーケットは拡大が続いているといわれる。そんななか、単身者や共働きの世帯の客を取り込んでいるスーパーも多い。その1つが首都圏の中堅スーパー、東武ストアだ。できたての総菜に力を入れ、運営面では人員配置に工夫を凝らす。一部で深夜営業や長時間営業を見直す動きもあるが、同社の深夜営業成功のノウハウを見てみた。

 東武ストアは全54店舗のうち、31店舗で24時間営業を実施。午前1〜2時まで深夜営業している店舗も7店舗ある。同社が深夜営業に乗り出したのは2002年。ほとんどの店が東武線沿線の駅前立地という、人の流れが多い店にもかかわらず周辺のコンビニに客が奪われていると判断したためだ。

 当初は実験的な取り組みだったが、05年にダイエー出身の玉置富貴雄氏が社長に就任すると、年間5〜7店舗の既存店を24時間営業に転換し、新店は原則として24時間営業にした。現在、午後9時から午前10時までの売り上げ構成比は11%。景気後退で消費者の財布のひもが固くなるなか、既存店自体の売り上げは厳しいが、同時間帯の構成比は2年前に比べ6ポイント程度上昇した。

 夜間の売り上げが伸びている背景の1つはコンビニがまねできない、「できたて総菜」への支持だ。店舗の調理場の壁には、最寄り駅の時刻表がはってある。急行の停車駅や鈍行の停車駅など駅によって帰宅する客の流れを把握。タイミングを見計らって、時間がたつと"サクサク感"などが落ちるコロッケなどの揚げものを売り場に並べる。これにより、「東武ストアに行くと、揚げたてが買える」というイメージをつくって、ファンを増やす作戦だ。

 こうした機動的な対応をできるようにするには、人員の配置がカギを握る。以前の食品スーパーの総菜売り場は開店時に、総菜にあてる人員を厚くし、商品をしっかりと品ぞろえすることに力を入れてきた。その後は昼時や夕方の時間帯に合わせて品数を補充し、午後9時ごろの閉店間際に「値引き販売」するのが一般的だった。ここ10年ほどは時間帯別対応を強めるスーパーが増えてきたが、深夜時間帯まで営業するとなると、さらなる工夫が必要になる。

 東武ストアの場合、総菜の売り上げのピークが午後9〜11時にくる。午後5〜7時の夕方の時間帯、午前11時〜午後1時までの昼時の2つの時間帯と合わせて、この3つのヤマに厚く人員を配置するようシフトを組む。

 夕方から深夜に部門マネジャーである社員を充て、開店時の人員はパート従業員のみと通常のスーパーの「逆張り」(杉生繁常務取締役)をいく。

 また、夜間のレジ業務や品だし作業は、子会社の東武警備サポートに委託している。東武ストアの従業員は総菜の調理などに集中することで、全体の経費をコントロール。「24時間営業をしても、トータルの人件費は従来の営業時間とほぼ同じ程度で済んでいる」(同)という。

 一方、リピーターの獲得のために総菜の味の向上にも力を入れる。そのために実施したのが総菜部門と畜産や水産部門との垣根の取り払い。毎日、畜産部門や水産部門が仕入れる新鮮な素材を使って調理する。

 売り場は総菜部門が一括で取り仕切るが、水産、畜産それぞれで調理する取り組みも広げており、水産部門では現在7店舗で総菜を扱っている。魚を調理する専用設備も導入。「市場から仕入れたものをすぐに調理でき、鮮度を上げられる」(水産部)ほか、「アユの塩焼きなどこれまでになかった種類の総菜も陳列でき、市場の魚屋さん並みの品ぞろえができる」(同)。

 畜産部門では仕入れた肉を使って、焼き鳥やローストビーフなどを調理する取り組みを16店舗で実施。「部門ごとの収益ではなく、店舗全体の収益を考える」(玉置富貴雄社長)との指導を徹底している。

 売り場作りも深夜に客を呼び込むため工夫している。

 「深夜のお客さんの基本的な購買時間は4〜5分」(杉生常務)で、入り口からすぐの場所に総菜を陳列することで、"ショートタイムショッピング"を手助けする。同時に総菜のそばに、買い合わせが見込める加工食品を陳列する。単身者のビジネスマンに合わせ、酒のつまみになる魚の缶詰や、魚肉ソーセージなどをPOP(店頭販促)で訴求する。

 小売業界では景気の低迷で人件費などの圧縮を狙い、一時期伸ばした営業時間を短縮する動きが広がっている。だが、品ぞろえや価格、総菜の店内調理などコンビニに比べてスーパーの長所は多い。東武ストアのように工夫次第では深夜営業に、まだまだビジネスチャンスはありそうだ。

(飛田臨太郎)

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