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コンビニの海外戦略(上)ファミリーマート井上史郎氏(キーパーソンに聞く)

[ 2010年7月16日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ファミリーマートAFC事業本部長 井上史郎氏

合弁、現地企業が過半出資

 コンビニエンスストアが海外進出を加速している。経済発展で都市化が進むアジアを開拓し、将来の成長につなげる狙いだ。重視する出店地域、フランチャイズチェーン(FC)を軌道に乗せるための方策などについて、大手3社の海外戦略担当者に聞いた。

 ――ファミリーマートは大手3社のなかで最も海外展開に積極的だ。企業全体の戦略のなかでどう位置づけているのか。

 「国内市場は飽和状態にあり、なかなか大きな成長は見込めないだろう。国内を着実におさえながら、成長の場を海外に広げていこうというのが基本戦略だ」

 ――各国・地域の業績は。

 「(1988年、90年にそれぞれ進出した)台湾、韓国はここ数年は増収増益が続いており、店舗数も順調に増えている。タイも昨年、ようやく黒字化した。今年はバンコクの騒乱でちょっと心配したが、黒字基調が続いており大丈夫だろう」

 「上海市など3都市に展開している中国は残念ながら赤字だが、現在は固く利益をとるよりも、店舗網を広げるステージだと思っている。2005年に1号店を開いた米国は逆。主要顧客に想定した富裕・中間層が08年秋のリーマン・ショックで打撃を受けた。商売を拡大するステージではないと判断している」

 ――昨年に進出したベトナムはどうか。

 「7月1日に3号店が開業したところで基本的には好調だ。今のところ直営店だが、現地に多い(個人営業の)『パパ・ママストア』をFC店に転換していけるかどうか検証している」

 ――急成長している中国市場の可能性をどうみているのか。

 「人口が1千万人規模の都市の数はもう2ケタに乗っているだろうし、将来、東京と同じ人口に達する都市も多いはずだ。内需のパワーは日本とは比べものにならない」

 「中国の消費者は新しいものが好き。昼食をコンビニで買って食べたり、夜間でも急な買い物ができたりするという生活スタイルを、どれだけ伝えられるかがポイントだと思っている」

 ――世界共通のプライベートブランド(PB=自主企画)商品をつくる考えはないか。

 「PBはある程度やらなければいけないのかもしれないが、そこで競争力をつけようとは考えていない。現地のパートナー企業の多くはコンビニ専業ではなく、グループで外食など他業態や食品メーカーも手掛けている。そこが自分のブランドをやめて、他国で製造した共通PBを仕入れるのもちょっと考えにくい」

 ――筆頭株主の伊藤忠商事とはどう連携しているのか。

 「伊藤忠とは基本的にはびったりやっている。進出先のメーカーとの取引、ときには政府との関係でも連携する。ベトナムでは市場調査の際、伊藤忠の現地事務所を借りるなど協力してもらっていた」

 ――海外で収益をあげるカギは。

 「現地のパートナーに合弁会社の50%超の株式をもってもらいつつ、事業で協力しあうのが一番の戦略。コンビニは完ぺきなローカルビジネスで、地元を知らない日本人が中心になっても、うまくいかない」

 「連結会計の感覚ではリターンが少ないとみえるかもしれないが、現地優先の軸をぶらさない方が絶対的な利益は大きくなる。実際、韓国ではファミマが日本ブランドなんて、だれも思っていないし、わざわざ日本を強調する必要もないと思う」

記者の目

現地に通じた人材確保重要

 ファミリーマートの海外戦略は国内大手で最も野心的だ。昨年8月には内外の店舗数が逆転。上田準二社長は2015年度までに日本を含め2万5千店体制とする構想を描く。急速な店舗拡大を支えているのが、出資比率の過半を現地パートナーに与える方式だ。

 ただ同方式は最終的な決定権をパートナーに委ねることを意味する。日本側の提案を生かすには良好な関係を維持することが必須条件。言語だけではなく、現地の社会情勢や習慣、人情などに通じた人材の確保が重要になる。(天野豊文)

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