日経メッセ > SECURITY SHOW > ニュース > 特集――南海トラフ、連動域「東日本」超え、製造業、事業継続へ備え。

日経の紙面から

特集――南海トラフ、連動域「東日本」超え、製造業、事業継続へ備え。

[ 2012年4月1日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

部品備蓄や海外拠点

 製造業は東日本大震災とタイの大洪水で部品の供給網(サプライチェーン)が寸断され、主要工場で生産が止まった。その経験を踏まえ、様々な対策に乗りだしている。ただ、従来の想定を大きく上回る南海トラフの巨大地震にどう備えるか。事業継続計画(BCP)の見直しを迫られる可能性もある。

 トヨタ自動車の佐々木真一副社長は「国内の災害で海外の生産を止めるわけにはいかない。2週間以内に生産を再開できる体制を整える」と語る。不測の事態に備え半導体など主要部品は「2カ月分の在庫を確保する」(新美篤志副社長)方針。

 ◆内陸部に移管 国内に45カ所ある生産工場の耐震構造や災害マニュアルも再点検した。海岸に近い田原工場(愛知県田原市)、衣浦工場(同県碧南市)では、予想される津波の方向に対する建屋の強度を確認。田原工場では津波の際に従業員が屋上に避難できるよう屋根を補強した。

 スズキは東日本大震災の直後、津波の被害を受ける恐れがあった静岡県磐田市の二輪技術センターの移管を決めた。浜松市の内陸部に新たに用地を取得し、移管作業を進めている。

 日産自動車は「グローバル車両生産技術センター」(神奈川県座間市)にすべての部品や治具などの設計図をデジタル情報として蓄積している。日本で生産する部品が災害で供給できなくなっても「設計データを電送し、米国などで代替生産できるようにした」(志賀俊之最高執行責任者)。

 日本の工場が操業不能になった場合に備え、海外に拠点を新設する企業もある。HOYAは震災後、世界シェア80%を握る主力製品の「マスクブランクス」(半導体回路原版)をシンガポールでも生産することを決めた。技術流出を防ぐ狙いから国内生産にこだわってきたが「海外顧客から不安の声が強まった」(鈴木洋最高経営責任者)。

 ニプロは医薬品の主力工場である東北ニプロ製薬(福島県鏡石町)が東日本大震災で被災し、全面復旧まで半年かかった。「自然災害リスクは日本全国どこも同じ」(佐藤誠ニプロ常務)と判断、ベトナムに生産拠点をつくることを決めた。

 ◆教育・訓練も不可欠 TANAKAホールディングスは11年12月、東京本社が機能不全に陥った場合、シンガポール工場に決裁権限を委譲する仕組みを整えた。こうしたBCP策定の動きは東日本大震災後に広がりを見せたが、企業規模によってばらつきもある。

 帝国データバンクの2月の調査(1万713社が回答)では、BCPを策定している企業の比率は10・4%どまり。大企業(製造業の場合、資本金3億円超かつ従業員数300人超)は30・9%だったが、中小企業(同、資本金3億円以下か従業員数300人以下)は8・6%にとどまった。

 想定を超える事態に対応するには「柔軟な計画作りと、経営者と従業員両方の教育や訓練が必要」(東京海上日動リスクコンサルティング)だ。

 拠点を分散しにくい業界もある。化学業界もその一つ。特定の生産ラインで付加価値の高い製品を作る「1カ所1品目」の傾向が強まっている。化学工場は有害な物質を多く扱っており、津波がきても化学物質を流出させないといった安全対策の強化も欠かせない。

ニュースの最新記事

PAGE TOP