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帰ってきた三陸鉄道――「防災」新橋梁の挑戦、盛り土との一体型、限界の60メートル導入(日経BP専門誌から)

[ 2014年8月25日 / 日経産業新聞 ]

日経コンストラクション

 東日本大震災で被災した三陸鉄道が2014年4月6日、全線で運行を再開した。津波で流失した3橋梁(きょうりょう)を、防災性能を強化する新工法で架け替えた。それは、橋長12メートルの橋梁しか実績がなかった工法を60メートルの橋梁に導入する新たな挑戦でもあった。

 岩手県内を走る三陸鉄道は、盛―釜石間の南リアス線(延長36・6キロメートル)と、宮古―久慈間の北リアス線(71キロメートル)からなる第三セクターの鉄道だ。北リアス線ではハイペ沢橋梁(橋長60メートル)、コイコロベ沢橋梁(39・9メートル)、松前川橋梁(27・4メートル)の3本の橋梁を架け替えた。復旧を支援した鉄道建設・運輸施設整備支援機構は防災性能を高めるため、この3本に「GRS一体橋梁(補強盛り土一体橋梁)」を採用した。

支承なくす

 3橋を含む小本―田野畑間は八千代エンジニヤリング(東京・新宿)が設計した。鉄道・運輸機構やGRS一体橋梁の開発者である鉄道総合技術研究所の指導を受けながら取り組んだ。施工は東急建設・小山組(岩手県久慈市)JV(共同企業体)が担当した。

 GRS一体橋梁は、橋桁、橋台、橋脚を一体化して支承や下床版を無くし、橋台を背面の補強盛り土と一体にしている。橋梁に働く水平力を全て補強盛り土に負担させ、橋脚は鉛直荷重だけを担うのが特徴だ。

 鉄道総研と東京理科大学理工学部土木工学科の龍岡文夫教授が発案し、東急建設、鹿島、鉄建、クラレ、複合技術研究所(東京・新宿)の5社と共同で開発した。12年完成の北海道新幹線中学校線架道橋(橋長12メートル)に初めて導入されたが、実際に使われ始めた橋としては、三陸鉄道の3橋が最初の事例となった。

 開発の中心となった鉄道総研によると、従来型の桁式橋梁は、維持管理しにくい部位にある支承が経年劣化で腐食したり、橋台の背面盛り土が沈下したりするリスクを抱えていた。どちらも耐震性や耐津波性を低下させかねない。支承を省略して上部と下部を一体化し、橋台の背面盛り土をセメントで補強するGRS一体橋梁は、そうしたリスクを回避できる。

 鉄道・運輸機構は、3橋のうちコイコロベ沢橋梁とハイペ沢橋梁で、残存していた旧橋の橋脚の基礎フーチング(基礎の底版部)を再利用することにした。廃材処理のコストや生コンクリートの使用量の低減に加え、両橋梁の下を通る県道44号の交通への影響を抑えることなどが狙いだ。

 八千代エンジニヤリング構造・橋梁部技術第三課の阿部雅史主任は、「GRS一体橋梁の橋脚には水平力が掛からず、負担が小さいので、既存のフーチングを生かしやすい」と説明する。

 GRS一体橋梁では両端だけで水平力を負担するので、構造上、橋長をあまり長くできない。橋桁のひずみや乾燥収縮で盛り土の補強材の破損を招く恐れがあるからだ。

 コイコロベ沢橋梁と松前川橋梁はいずれも橋長40メートル以下だったものの、ハイペ沢橋梁は限界ぎりぎりの60メートルだ。いずれも、最初の導入事例だった中学校線架道橋の12メートルと比べてはるかに長い。温度の変化や乾燥による橋桁の収縮で、橋台背面の盛り土に過度の負担が掛かる恐れもある。

あえて補強せず

 八千代エンジニヤリングは対策として、盛り土が橋台に接する部分に、あえてセメントで補強しない層を設けた。柔らかい盛り土の弾性変形で、橋桁の収縮を吸収することを狙っている。

 橋長が60メートルと最も長いハイペ沢橋梁では、橋桁自体を収縮しにくくする必要もあるため鉄骨鉄筋コンクリート造を採用した。その結果、通常のPC(プレストレスト・コンクリート)ラーメン橋に比べると、橋桁に関してはやや高くついた。

 しかし、鉄道・運輸機構三陸鉄道復興鉄道建設所の進藤所長は「旧橋梁のフーチングの再利用などでコストを低減したので、全体のコストはほぼ同等になっているのではないか」とみている。

 施工では橋桁の鋼材を鉄筋コンクリート造の橋台などと接合するのが難しい作業だった。「鋼桁のアンカービームに付いているスタッドジベル(建築・土木構造物の金属面にコンクリートを固定するための金属部品)と橋台の鉄筋との干渉を防ぐのに苦労した」(東急建設土木技術設計部)。

 鉄道総研は供用開始後のハイペ沢橋梁で動態を計測し、GRS一体橋梁の適用範囲を拡大するための検討作業に役立てる考えだ。道路橋への適用も視野に入れている。

 松前川橋梁がある島越駅付近の延長約300メートルの区間は、三陸鉄道の中でも津波の被害が特に大きく、駅や軌道が壊滅した。復旧工事では軌道を敷設する構造物を高架橋から補強盛り土に改め、法面を30度弱の緩やかな勾配として、堤防の役割も果たすようにした。

 三陸鉄道は通学での利用が多いので、新年度が始まる4月上旬までにどうしても運行を再開する必要があった。しかし鉄道・運輸機構が施工計画を検討する過程で、全ての工事を4月上旬までに終えることは難しいと分かった。

 同機構は施工者の東急建設JVと協議し、島越駅付近の区間で補強盛り土の施工順序を変更した。当初は盛り土工事の後に行う予定だった法面の張りコンクリートの施工を軌道敷設後の最終段階に延期した。仮設資材の片付けなども運行再開の後にした。軌道の敷設を前倒しして13年11月に開始することで、4月上旬の全線での運行再開を実現した。

(日経コンストラクション2014年5月12日号、安藤剛)

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