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IoT普及へ割安新通信「LPWA」、低電力で広域カバー、速度は遅く、規格使い分け(日経電子版から)

[ 2017年5月11日 / 日経産業新聞 ]

 ストロベリーコーンズはピザのパン生地の温度管理のために冷蔵庫に温度計を設置し通信回線を使って遠隔監視するシステムの導入を検討していた。パン生地の温度管理がうまくいかないケースがあり全国約150店舗で毎月1万2000枚程度の生地が無駄になっていたからだ。

 当初、一般的な携帯電話回線を使って遠隔監視システムを構築しようと検討した。だが、月数千円程度かかる回線コストがネックとなり、導入を断念していた。救世主となったのが、京セラ子会社の京セラコミュニケーションシステム(京都市)が2月末から国内展開を開始したLPWA分野の通信技術の一つの「SIGFOX」だった。

1回線で月83円

 同通信技術は仏ベンチャーのシグフォックスが開発した。SIGFOXの通信料金は接続回線数によって変わる。最も割安な100万回線を契約した場合、1回線当たりの料金は年わずか100円からになる。

 ストロベリーコーンズの場合、1回線当たり月換算で約83円だという。それでも一般的な携帯電話回線よりも圧倒的に安い。採用を即決し従来よりも大幅に低コストでシステム導入を進めることができた。

 SIGFOX以外にもLPWA分野には様々な通信規格が登場している。まずは半導体メーカーが主導し、NTTドコモやKDDI、ソフトバンク、NTT西日本といった通信事業者、日本IBMなどIT企業も展開を進める「LoRa」だ。2017年後半にも携帯大手各社が導入を進める見込みのLTE版LPWAと言える「NB―IoT」などもある。

 いずれのLPWA通信規格も広域をカバーしながら、基地局の投資を抑えられる。通信方式も極力シンプル化している。こうした仕組みから、低コストなサービス展開を可能にしている。

ニーズ広がる

 このようなメリットがある半面、LPWAの通信速度は一般的な携帯電話回線と比べてかなり遅い。ほとんどのLPWA規格は、1秒当たりに伝送できるのはわずか数十キロビット程だ。最も通信速度が低いSIGFOXの場合、一般的な携帯電話回線と比べて100万分の1以下となる1秒当たり100ビットだ。

 ただ、ストロベリーコーンズのように、冷蔵庫の温度を数十分単位で遠隔監視するような用途ではLPWAの通信速度で十分なケースも多い。LPWAはこのように従来の通信規格ではマッチしなかった分野のニーズに応えられる。

 IoTの取り組みを進める企業にとっては、複数登場しているLPWA規格のどれを選んだらよいのか、迷うこともある。ただ、現時点ではそれぞれのLPWA規格を、ニーズに応じて使い分けていくケースが増えそうだ。例えばKDDIは、SIGFOXやLoRa、NB―IoTといった複数のLPWA規格を自社のサービスとして取り扱う準備をしている。

 NB―IoTは、LTEをベースとしているため、一気に全国カバーできる見込み。全国カバーが必要なケースに適しているという。LoRaは無線LANのように通信が必要なエリアに自営で基地局を設置する使い方が主となる。工場など局所的に通信したいニーズに向くとみられる。

 SIGFOXは、エリア展開している地域であれば、海外でも同様の仕組みで通信できる。海外も含めて利用したいニーズに向くという。

 いずれにせよ、IoT時代がこれから本格化していくなかで、割安な料金で様々な情報をリアルタイムで把握し、業務の改善につなげられるLPWAは急速に普及しそうだ。(堀越功)

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