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イスラエル企業、IoTの安全も守る――軍が訓練、人材輩出、退役後に起業、300社超に。

[ 2017年6月7日 / 日経産業新聞 ]

 イスラエルの情報セキュリティー業界を支えるのは国防軍などでサイバー攻撃に携わった若者たちだ。20代で退役し情報セキュリティー会社を起業している。参入企業は300社を超え米国に次ぐ業界規模に育った。

 国防軍のサイバー部隊に所属した元大尉で現在は投資会社グリロット(ヘルツリーヤ)を経営するコビー・サムボルスキー氏は「AIやビッグデータ解析はイスラエル企業が得意とする分野だ。軍のサイバー部隊でもこれらの技術を開発しており、その経験が有利に働いている」と解説する。

 イスラエルにも民間の研修施設はある。ただ軍や情報機関モサドのサイバー部隊が事実上、セキュリティー技術者を実戦で鍛えて育成する。「8200キッズ」という言葉も有名だ。国防軍8200部隊は最大のサイバー部隊とされ、その出身者を指す。同国の情報セキュリティー業界を担う中核の人材だ。

 イスラエルで優秀な人材が育つのは国防に不可欠だからだ。イスラエルには18歳から兵役義務がある。サイバー部隊に入るための選抜は2年前の16歳のときから始まる。学校の成績を参考にするほか、軍の施設で心理テストや数学の試験、面接などを実施する。成績の優秀な子供には中学生のころから特別にサイバー教育を施すこともある。

 「軍は2年間の厳しい審査を経て見いだしたトップ1%の人材を徴兵でサイバー部隊に集め、半年間の厳しいトレーニングを経て現場に出す」。8200部隊の元司令官(准将)で現在、投資会社チーム8の最高経営責任者(CEO)を務めるナダブ・ザフリル氏はそう語る。現場ではサイバー空間での情報収集活動や、サイバー手段によるインフラの破壊、防御などを担当する。

 若者たちがサイバー部隊に在籍する期間は平均4年半だ。その後は情報セキュリティー会社を起業するなどして、民間で第二の人生を歩む。

 イスラエルと米国がイランの核開発施設に対してサイバー攻撃を仕掛けたことが2010年に発覚した。USBメモリーを介して施設内のシステムをウイルスに感染させ最終的に核燃料をつくる遠心分離機を破損させた。イスラエルは自らのサイバー攻撃能力がロシアや北朝鮮などを上回り米国と並ぶ世界最高水準にあることを示した。

 こうした評価を追い風に、イスラエルの情報セキュリティー業界に投じられる資金は16年に12年比約6倍の6億ドル(660億円)近くに達した。世界のセキュリティー市場に流入する資金の16%に達する規模だ。今後も大規模なサイバー攻撃が多発するなか、海外からイスラエルへの投資が一段と増える可能性がある。(吉野次郎)

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