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日本版GPS、来春から本格運用、災害対策を高度化、地震時にビルの揺れ検知。

[ 2017年6月14日 / 日経産業新聞 ]

 日本版の全地球測位システム(GPS)の核となる準天頂衛星「みちびき」の2号機が今月、打ち上げられた。来春から日本版GPSの本格運用が始まる予定だ。ビジネス応用では自動運転や農業などが有望視されているが、ゼネコン(総合建設会社)などは地震など災害対策の高度化に高精度の測位情報が生かせるとにらんで、技術開発を進めている。

 準天頂衛星は日本の真上から電波を送り、受信機の正確な位置が分かる。現行のGPSでは約10メートルの誤差がある。みちびきは今年中に4基体制になる見込みで、米国のGPSや地上施設との組み合わせにより、誤差は最小で6センチメートルに収まる。高精度の測位情報によって新サービスが生まれると期待されている。

 大林組は地震の際にビルなどの建物がどの程度揺れたかを検知するシステムに、日本版GPSが生かせるかどうか、実験を始めた。大規模な地震によってビルに被害が発生した場合、測位情報からその程度などを推計して補修方法を検討するなどの応用を目指す。

 今後発生が危惧される南海トラフ巨大地震に伴う「長周期地震動」は、震源から遠く離れた超高層ビルを大きく揺らすと考えられる。2011年の東日本大震災では震源から約770キロメートル離れた大阪市の超高層ビルの設備が損壊した。

 実験では受信機を取り付けた台を揺らし、別の受信機との距離の変化を計測。まだ揺れ幅1センチメートル以上などの特定の条件に限られるが、揺れの大きさなどを十分な精度で記録できたという。大林組技術研究所の三浦律彦主任研究員は「顧客に引き渡した後のモニタリングサービスに生かせる。事業化を見据えたシステム開発を進める」と話す。

 同社は道路への応用も見込んでいる。路面の凹凸やのり面の高さを日本版GPSを含む受信機で定期的に測り、事故や崩壊につながる変化がないかを調べる。GPSだけでは十分な精度が出なかったが、日本やロシアの衛星による測位情報が得られるシステムを開発した。地震や豪雨などの災害時でも、5分に1回とこまめに測れるという。

 3次元測量を手掛けるソフト会社のアイサンテクノロジーは、災害時に山林で倒木などが起きていないかを日本版GPSで把握する実験を始めた。準天頂衛星からの電波が、人の入りにくい山林まで届く特長を利用する。システムが完成すれば、国・自治体や遠くに住む山林所有者が状況を素早く知ることができ、2次被害の拡大防止などにつながると期待する。

 今のところ「業者向けの精密な受信機は1台数百万円する」(アイサンテクノロジー)。普及には、コスト低減などを進める必要がある。

 政府の宇宙政策委員会の小委員会は5月、宇宙関連産業の市場規模を2030年代初めごろに、現在の2倍となる2・4兆円規模にする「宇宙産業ビジョン」を打ち出した。特に衛星データを利用した産業振興に力を入れている。

 車の自動運転やドローン(小型無人機)を活用した物資の輸送、農作業や建設作業の省力化などを柱に据えているが、「日本には様々なサービスの可能性があり、防災やスポーツも考え得る」と宇宙政策担当を兼ねる鶴保庸介科学技術相は意気込む。民間が様々な応用を考え、それを官が後押しして普及につなげることが重要だといえそうだ。(猪俣里美)

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