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知性備えるカメラ(下)群衆の中からあなた見つける――監視システム、被写体多数でも顔認証(日経BP専門誌から)

[ 2017年6月27日 / 日経産業新聞 ]

日経エレクトロニクス
複数台に映った人物追跡

 撮影シーンや周囲の状況までを瞬時に把握できる、人間の知性を備えたカメラ技術の開発が活発化している。監視カメラの分野では、撮影した画像を見やすく処理したり、多数の被写体から顔認証したりする製品の開発が盛んになっている。

 パナソニックが3月から販売を始めた監視カメラの新製品「i−PRO EXTREMEシリーズ」は、撮影した場面を自動で認識し、人が見やすい画像を撮れるように各種設定を自動調整する機能を備える(画像1)。

 例えば逆光時、歩行する人の顔を識別できるように補正する機能を備える。同社従来品も逆光補正機能を備えていたが、露光時間を短くして撮影した画像と長くした画像の2枚を組み合わせることで、逆光を補正していた。この方法だと、2枚の画像を撮影する間、つまり2フレーム間に対象物が高速移動すると、残像が出てしまう。そこで、1フレーム内で逆光補正を行うようにし、その残像を抑制したという。

 次世代の監視カメラシステムに向けては、カメラを意識せずに動いている多数の被写体の顔をリアルタイムに認証する技術や、複数の監視カメラに映った対象人物を追跡するカメラ技術の開発が盛んだ(画像2)。

 例えばNECは、多数の被写体が映った監視カメラの動画から顔認証を行う技術の開発に注力している。同認証は、カメラの設置場所や画質などの環境条件や被写体の動作条件の影響を受ける。このため、カメラの前に立ち止まり、静止した状態で撮影して行う顔認証よりも高度な技術が必要になる。

片目でもOK

 そこでNECは、大きく2つの技術を改善した。1つは、顔が部分的に隠れていても、認証できるようにしたこと。状況にはよるものの、目の周辺の特徴量で判別しているので、両目が見えれば認証できるとする。場合によっては、片目しかカメラで捉えられない状況でも、認証できるという。

 もう1つは、ディープラーニング(深層学習)の強化である。これにより、顔の向きがカメラに対して正面ではなく、ずれた場合でも認証できるようになった。現状では、正面に対して左右40度ほどずれていても、認証できるという。

 現在、フルHDの監視カメラが主流だが、今後は4Kのカメラの導入も進む見込み。顔認証する場合、10画素前後など、ある一定の画素数が必要になる。そのためカメラの画素数が増えるほど、一度に認証できる顔の数を増やすことができる。

 ただし、画素数の増大に伴い、顔認証の処理負荷は高まる。そこでNECは、顔の照合前に実施する顔検出に向けてハードウエアアクセラレーターを開発した。同アクセラレーターを利用することで、4Kカメラでも、フルHDのカメラで撮影した場合と同程度の認識精度と認識速度を維持しながら、数百人規模の群衆での顔認証を実現できるという。

 複数の監視カメラに映った対象人物を追跡する技術に関しては、例えば日立製作所やキヤノンがそれぞれ取り組んでいる。いずれも、複数の監視カメラにまたがって対象人物を追跡し、その移動経路を地図上に表示できる。

深層学習を活用

 日立製作所の技術では、特定の人物の全身画像から特徴量を抽出し、過去に蓄積した特徴量のデータベースと照合することで、その人が映っている画像を、複数のカメラ画像の中から高速に検出する。顔が映っていない人でも識別できるように全身画像を用いた。

 今回、見え方が異なっていても同一人物を識別できる特徴量を生成するために深層学習を活用した。具体的には、あらかじめ用意した多数の人物画像を使って、深層学習を適用したニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)に学習させる。そのDNNに追跡したい人の画像を入力し、中間層の出力を特徴量として使用することで、異なる見え方でも高い精度で識別することに成功したという。

 キヤノンも、人物追跡技術の開発を進めている。同社の技術は、全身の服の色と顔でそれぞれ特徴量を抽出した後、特徴を照合することで、特定の人物を同定し、複数のカメラ映像からその人物を発見して追跡するものである。

 FAの分野では、画像認識技術の改善によって、従来は人にしかできなかった複雑な作業をロボットで可能にするための技術開発が進みつつある。例えば、三菱電機と中部大学のMPRG、中京大学のグループは、これまで人間でしか実行できなかった、倉庫内の棚から物を取り出したり、箱から物を取り出して棚に入れたりするロボットシステムを共同開発した。

 開発したロボットシステムでは、三菱電機製の垂直多関節型ロボットを利用。加えて、同社の高速な把持位置検出技術で各商品(アイテム)の把持位置を見つける。その後、把持位置周辺のRGB画像を切り出す。

 同画像だけをCNNに入力し、各把持位置のアイテムを識別する。検出した把持位置だけに認識処理を実行するので、処理負荷を低減しやすく、効率的な識別が可能になる。この手法を利用した結果、識別率92・5%という高い値を達成した。

(日経エレクトロニクス5月号 根津禎)

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