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車いすの安全、AIが守る、上智大、加速度センサーのデータ解析、歩道の段差や穴検出。

[ 2017年10月19日 / 日経産業新聞 ]

 上智大学の矢入郁子准教授らの研究チームは、車いすに搭載したスマートフォン(スマホ)などの加速度センサーのデータを人工知能(AI)で解析し、歩道で転倒しやすい段差や傾斜、穴などを検出する技術を開発した。多くの人からデータを収集できればインターネットの地図で歩道の情報を共有できるようになる。でこぼこで走りにくい道を回避するルートの選定や道路の効率的な補修に役立つとしている。

 東京大学の松尾豊特任准教授との共同成果。研究チームは、20代から60代の11人の車いすの人に協力してもらい東京都内の同じ歩道を計3周、それぞれ約1時間にわたって走ってもらった。電動の車いすは3人、手動は8人で、車いすの利用歴はばらばらだった。座面の下にスマホに搭載しているのと同等の加速度センサーを貼り付けた。

 3次元の加速度データは1秒間あたり50個に分解。それをもとに、AIの機械学習を使ったアルゴリズム(計算手法)によって測定した全データの1割から段差などの特徴量を抽出。残りの9割で検証するという作業を繰り返したところ、正解率は9割に達した。

 さらに深層学習を使ってデータの特徴から段差や傾斜、点字ブロックなどの場所を予測したところ、9割以上の精度で特定できるようになった。深層学習のネットワークを解析すると、段差の強弱や傾きなどの違いで出力のパターンが異なっていた。矢入准教授は「路面の特徴を定量化する手段として有効」と話す。

 手でこぐタイプの車いすは、心拍数と手のこぎがほぼ連動しているという。ただ、疲れているとそれがずれてきて転倒しやすくなる。今後は心拍数と加速度を計測し、ずれを修正する技術を開発する方針だ。

 車いすで転倒しやすい場所としては、歩道の数センチの段差や傾斜、石畳のずれ、穴や傷、横断歩道から歩道にあがる際の段差などが考えられる。警察庁資料などによると、1年間に発生する車いすの交通事故死傷者は約300人にのぼり、うち10人は亡くなっている。

 今後、より多くの人からデータが得られればインターネットの地図上に危険な場所を示し、共有できる。危険を「見える化」することでその道を避けたり、事前に注意したりするなどの安全対策がとれる。道路の穴だけをふさぐなど、効率的な補修もできるようになる。(藤井寛子)

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