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人物認証、歩く姿や影から――NASAジェット推進研究所主任研究員岩下友美氏(かがくアゴラ)

[ 2017年12月29日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 歩く姿から、その人がだれかがわかる「歩容認証」の技術は、防犯やテロ対策だけでなく認知症の診断など幅広い応用が期待できる。米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の岩下友美主任研究員は歩容認証研究の第一線を歩み、今は火星探査車(ローバー)の開発にも取り組む。

 歩容認証は最近、映画やテレビドラマでも登場するようになった。顔が見えない遠距離であっても後ろ姿であっても、その人がデータベースに登録された人かどうかを確認できる。ビデオカメラの性能が向上して登場した比較的新しい生体認証技術だ。

 歩く人の姿だけでなく、路面に落ちた影から認証する技術を開発し、実際にビルの上に設けたカメラで路上を歩く人を識別するのに成功した。まだ完璧な技術とはいえないが、テロなどの脅威から市街地の広範囲を見守るのに役立つ技術といえる。英米のセキュリティー関連企業から関心をもたれている。

 認証にとどまらず、歩く姿から、その人が認知症などを患っていないかを診断する技術の研究も進んでいる。やがて認知症の初期の段階での診断が可能になると信じている。

 こうした認証や診断の技術はプライバシー保護との関連で難しい問題をはらんでいる。技術が社会にどう受容されていくのか、研究者も考える必要があると思う。

 九州大学の助教のときに英インペリアル・カレッジ・ロンドンに留学し、歩容認証の研究を始めた。その成果を2008年に国際学会で発表したのが転機だった。NASAの研究者に出会い米国に拠点を移した。

 ジェット推進研究所には世界各国から研究者が集まる。日本人もいる。せっかくNASAの研究所にいるのだからと興味の幅を広げて、今は南極の氷の下を潜る無人探査機や火星探査用のローバーに搭載する画像処理装置の開発にも取り組んでいる。(編集委員 滝順一)

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