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地盤ビッグデータ生かせ、災害リスク判定に活用、地価に反映、適正化期待。

[ 2018年6月5日 / 日経産業新聞 ]

 わが家の土地は地震や土砂災害に対して安全?――消費者のこんな疑問や不安に答えようと、地盤に関する情報をインターネットで提供するサービスを官民が競っている。背景には土木・建設工事で集まった膨大な"地盤ビッグデータ"が開示され、それらの利用技術の開発が進んだことがある。この流れが強まれば土地取引や地価も災害リスクを反映し、適正化につながるとの期待も膨らむ。

 千葉市、柏市、船橋市などを含む千葉県北部の地下の様子が一目でわかる――。産業技術総合研究所は3月、国内で初めて「3次元地質地盤図」を作り、ネットで公開した。

官民で情報提供

 地下に砂や泥、砂れきなどの層がどのように分布しているかを示したのが地質地盤図。これまでは平面図や断面図で示していたため、専門家であっても地下の詳しい地質構造を把握するのは難しかった。

 3次元地図では任意の地点を選ぶと、地下数十メートルまでの地質構造を表示する。ボーリング調査データがある地点では地層ごとの硬さなどを示した詳細図も取り出せる。

 インフラ整備や土壌汚染対策などで使えるほか、とりわけ威力を発揮しそうなのが液状化リスクの判定など防災対策だ。

 埋め立て地は液状化リスクが高いことがよく知られるが、ほかにも昔の川筋や湖沼の跡、海岸砂丘のへりなどは液状化しやすい。かつての谷が沖積層で埋まった場所も同様で、2011年の東日本大震災で起きた千葉県浦安市の液状化被害の一因とみられている。

 平面図だとこうした場所は死角になりがちだが、3次元図ならば容易に判定が可能だ。

 3次元図が実現したのは「自治体が土木・建設工事で集めた膨大なデータを活用できるようになったことが大きい」(産総研地質情報研究部門の中沢努グループ長)。

 千葉県は1990年代ごろから道路、上下水道工事などで実施したボーリング調査のデータを体系的に蓄えてきた。2000年以降は行政データ電子化の流れもあり、1万地点以上の地質・地盤データが集まった。

 産総研はこれらを活用し、不足するデータは独自のボーリング調査で補った。研究チームの野々垣進主任研究員がデータを関連づけて地層の境界面を高精度で推定する手法を開発。実用化にこぎつけた。

 首都圏では千葉県のほか、東京都も地盤データの集積が進んでいる。産総研はこれも活用し、3年後をメドに東京23区の3次元図の公表をめざしている。

 民間企業の情報サイトも負けてはいない。なかでも充実ぶりが目立つのが、住宅地盤調査を請け負う地盤ネットホールディングスが14年に提供を始めた「地盤安心マップ」だ。誰でも閲覧できる無料版と、月額5千円(税別)の「プロ版」があり、プロ版は40項目以上の情報を閲覧できる。

 無料版の目玉は、住所を町丁目単位で入力すると、地盤改良工事が必要かの目安を示す機能だ。同社が全国十数万地点で調べたデータをもとに、過去の改良工事の実施率、浸水リスク、地震による揺れやすさなど5つの指標から判定する。

 さらに以前の土地利用状況を示す航空写真や液状化、土砂災害などのハザードマップ、政府の地震調査委員会が毎年公表する「全国地震動予測地図」など16種類のメニューをそろえ、利用者は簡単な操作で地図を重ね合わせて閲覧できる。

不動産取引でも

 地盤ネットは東日本大震災後、地盤の安全性への消費者の関心の高まりを受け、ビジネスを急成長させてきた。安心マップで消費者の関心を引き寄せ、収益源である地盤調査ビジネスに結びつけている。14年に広島市で起きた土砂災害や16年の熊本地震のように、地盤のもろさが原因とみられる被害があると、アクセスも急増するという。

 地盤の災害リスクに関する情報は地価の下落につながりかねず、これまで積極的には開示されてこなかった。特に活断層の詳細な地図などを行政や研究機関が開示しようとすると、不動産業界などが反対するケースも多いとされる。だがその流れが変わりつつある。

 ひとつが不動産取引でのデータ活用だ。地盤ネットは17年、地盤条件の良い場所にある物件に的を絞った仲介サイト「JIBANGOO(ジバングー)」を開設。「一般のサイトより成約率が高く、地盤が安全なことを不動産の価値と考える人が増えている」(地盤ネット総合研究所の横山芳春取締役)

 こうした事例が積み重なることで「地価も利便性だけでなく災害リスクを織り込むようになり、適正化が進む」(横山取締役)と期待する関係者は多い。

(編集委員 久保田啓介)

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