日経メッセ > SECURITY SHOW > ニュース > シャープ、赤外線レーザー――監視カメラ、安全に利用(NEXTデバイス)

日経の紙面から

シャープ、赤外線レーザー――監視カメラ、安全に利用(NEXTデバイス)

[ 2018年8月3日 / 日経産業新聞 ]

 シャープは監視カメラの映像を鮮明に映すための補助光源として使う赤外線レーザーを開発した。赤外線レーザーは人の目に直接当たると網膜を傷つける恐れがあるが、レーザー光を散乱させる独自構造で安全性を確保した。広く使われている赤外線発光ダイオード(LED)に比べて、対応距離や明るさを大幅に向上した。従来に比べてカメラの大きさや消費電力を約半分に減らせる。

 「300メートル以上離れた距離からでも撮影できる監視カメラに対するニーズがここ数年で一気に増えている」。シャープのレーザー事業部の宮本定係長は、新しい赤外線レーザーを開発したきっかけについて説明する。

 監視カメラは夜間でも人や動物などの動きを撮影できるように、暗闇を照らす光源が必要になる。そこで、人の目ではほとんど見えない赤外線が広く利用されている。遠距離を鮮明に撮影するためには、多くの光源が必要になる。

 シャープが開発した赤外線レーザーは光を照射する半導体チップと、光を拡散するレンズを組み合わせた複合部品。波長は850ナノ(ナノは10億分の1)メートルで、人の目でわずかに見える程度。一般的な監視カメラは赤外線LEDが20〜30個程度使われている。LEDより強力な赤外線レーザーを使えば、半分の10〜15個で同程度の撮影距離や明るさが保てる。

 従来の監視カメラは半径100メートル以内の場所を撮影する性能が大半だった。300メートル以上の距離を撮影するためには、光源である赤外線LEDの数を2倍以上にする必要があるが、そうするとカメラが大型になってしまう。大型になると設置できない場所があったり、消費電力が増えたりする問題があった。

 そんな課題を解決するためシャープはLEDにより遠くを照らせる赤外線レーザーを活用することにした。ただレーザーは人の目に当たると失明や視力低下などの危険性があるため、監視カメラではこれまで使われてこなかった。

 シャープはレンズの形状を従来の凸型から円柱型に変えることで、赤外線レーザーの放射角を広げてレーザー光を拡散し、人の目に対する負担を減らした。レーザーのため、LEDより遠くまで照らせるようにした。

 宮本係長は「監視カメラ用の赤外線レーザーでは、国内でほぼ独壇場だろう」と胸を張る。シャープには約60年間続けてきた技術の蓄積がある。

 一方、普及への課題となるのはコストの高さ。量産を始めたとはいえ、現状の生産量はLEDに比べて桁違いに少ないため、コストがLED比の何倍にも膨れあがってしまう。

 そのため、今後は用途展開を進める。1つは高齢者などの見守り用カメラへの搭載だ。波長を940ナノメートルに変えることで、人の目で全く見えない光にする。従来ならカメラのレンズ付近に赤いライトが見えるが、940ナノメートルならレーザー光は見えないため、高齢者は「監視されている」という意識がなくなり安心するという。今後、福祉施設などに採用を提案する。(千葉大史)

キーワード

 ▼赤外線レーザー 人の目には見えない赤外線を使ったレーザー。赤外線の光源としては発光ダイオード(LED)や半導体レーザーが主流になっている。半導体レーザーはLEDに比べて消費電力が低いが、光源が小さく、指向性が強いのでエネルギー密度が高い。

 レーザー光を裸眼で見ると、網膜を損傷する危険がある。安全性を確保しつつ強い光を出すには光源を大きくする拡散板を使うなど、対策が必要になる。赤外線をセンサーとして使う「LiDAR(ライダー)」は、物体に当てて反射する光を検知し、位置や距離を測る。

ニュースの最新記事

PAGE TOP