日経メッセ > SECURITY SHOW > ニュース > 地震研究、AIで進化、防災・減災より高精度に、海洋機構や東大。

日経の紙面から

地震研究、AIで進化、防災・減災より高精度に、海洋機構や東大。

[ 2019年2月4日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 観測や経験に頼っていた防災や減災にかかわる地震の研究に、人工知能(AI)を活用する動きが進む。海洋研究開発機構は観測データを補うデータをコンピューターの模擬実験(シミュレーション)で作ってAIに学ばせて、震源の推定に利用した。東京大学はビルや地下街などの揺れ方の詳細な予測を実現した。発展すれば、地震のメカニズム解明などにも役立つと期待されている。

 従来の地震研究は実際の観測データから理論を組み立てることに重きを置いてきた。観測した地震の理解は進むが、発生頻度の低い大地震などの研究が進みにくかった。

 近年は全国的な地震観測網の整備が進み、起きていない地震もシミュレーションで観測データを補えるようになった。AIを使い地震の現象を正確に捉える研究手法が生まれ、成果が出ている。

 海洋機構は離れた場所で同時に地震が起きても震源を正確に推定するソフトウエアを開発した。各地の地震の観測情報を地図上に重ねて表示した画像データをもとに、震源が複数箇所あるのか判定する。さらに画像データの特徴から震源の場所を絞り込む。

 AIの一種、深層学習を使った。同時発生する地震は観測例が少ないため、学習に使う画像データをシミュレーションで作った。過去の地震波の記録や地下の地質構造を土台に、関東地方で起こりうる600通りの地震をシミュレーションして2万枚の画像データを作りAIの学習に使った。

 現在の計算法では同時に複数の地震が起きると、震源を正確に特定できないケースがある。2018年1月、富山県と茨城県で同時にマグニチュード3〜4級の地震が発生し、誤った緊急地震速報が流れた。海洋機構のソフトでは、震源の個数を99%以上の確率で正しく認識できたという。

 海洋機構の坪井誠司情報技術担当役は「将来、緊急地震速報に使えば精度を上げられるのではないか」と話す。

 こうした手法はデータ不足を補うのに役立つと期待される。未発生の地震でも、シミュレーションで作ったデータをAIに学ばせ、さらにシミュレーションに役立てることを繰り返せば、地震の規模や被害の推定など様々な計算を、より高精度にできる可能性がある。

 政府が12年にまとめた「南海トラフ巨大地震」の被害想定では死者が最大32万人とされ、大地震での減災への工夫は欠かせない。文部科学省の科学技術・学術審議会も1月、19年度から5年間の地震関連の研究計画で「災害の軽減につながる研究を推進」するとした。

 東大の市村強教授らは地下街や建物の揺れ方の詳細な推定にAIを使った。従来は長大な方程式を解いていたが、難解な部分をAIで検出し、優先して計算。4倍の速さで解析できる。結果の確からしさもAIで数値化でき、予測結果を防災に生かしやすくなる。

 実際に東京駅周辺のビルや地下街について、地盤まで考慮した揺れの詳しい予測を実現できた。市村教授は「AIの利用は地震解析の新たな選択肢になる」と話す。

 AIによって、地震学の理論の修正も起こるかもしれない。

 防災科学技術研究所は震源や規模から、地震の震度分布を推定する研究に取り組む。1997〜15年に起きた2000回以上の地震について、規模や震源の深さなどと各地の震度の広がりの関係をAIに学ばせた。

 従来理論の公式は「震度の広がりは震源からの距離で決まる」という前提でできている。だが試作したAIで実際の観測データを調べると「震源の深さが大きく影響する」ことが分かった。震度分布の正確な計算はまだ難しいが「より現実に近い理論を構築できる可能性がある」と久保久彦特別研究員は話す。

 海洋機構の坪井情報技術担当役は「発生頻度の低い大規模地震も解析が進み、メカニズムの解明が加速できる」と話す。

ニュースの最新記事

PAGE TOP