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防災テック、新興勢がけん引、デジタル駆使、システム開発、避難指示アプリも。

[ 2019年4月1日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 災害予測や避難指示といった防災関連システムを手掛けるスタートアップ企業が増えている。イーラボ・エクスペリエンス(東京・渋谷)は洪水を通知するシステムを発売、アールシーソリューション(同・新宿)は地震時に身の守り方を示すアプリを開発する。災害が多発し、国や自治体が主導する対策だけでは追いつかない。身軽な新興企業がデジタル技術を使い市場を開拓している。

 「水害をいち早く予測し、被害を最小限に抑えたい」。農業・環境関連システムを手掛けるイーラボ・エクスペリエンスの石津輝人取締役は話す。同社は河川の水位を計測し、洪水被害が想定される場合に自治体に通知する仕組みを開発した。4月、販売を始める。

 河川内にセンサー、箱形の通信装置を河川付近に置く。センサーは10分に1度水位を測り、事前設定した値を超えるとシステムが作動。自治体は専用通信網で被害予測情報を得て住民に伝える。

 気象庁によると、1時間の降水量が80ミリメートルを超える気象状況の年間発生回数は1976〜85年では平均11回だったが、08〜17年では18回と約1・6倍に増えた。河川の氾濫対策は急務だが、水位計は主に大規模河川に設置されており、中小河川の対策は遅れている。

 同社は中小河川に照準を定め、価格を30万円台と通常2000万円程度の大規模河川向けに比べて安くした。通信機能の作動を最低限に制御するなどしてコストを抑えた。自治体に売り込み初年度に1000台の設置を目指す。東南アジアや中国でも販売する考えだ。

 大学発スタートアップが災害予測に高度な技術を使う例も出てきた。東北大学発のRTi―cast(仙台市)は津波の浸水被害をスーパーコンピューターで推測するシステムを開発した。地震の震度などから津波の発生や浸水被害を予測する。18年に本格運用を開始、地震時には政府向けにリポートを作成する。

 災害時の行動を助言する製品も増えている。防災アプリを手掛けるアールシーソリューションは19年中に地震発生後に取るべき行動を知らせる新機能を追加する。

 同社のアプリは揺れが到達する前に地震が来ることを知らせる。新機能では揺れの大きさに応じて、位置情報を使って避難場所を示したり、机の下に隠れるといった指示を出したりできるよう開発を進めている。英語版も出す方向で検討中だ。

 ソフト開発のアドテクニカ(静岡市)は企業向けにAIスピーカーを使う従業員の安否確認システムを開発中。災害時、事業所内でスマートフォンに現在の状況を入力するよう呼びかける際に使う。音声で名前を伝えれば、管理者にテキストが送信され、安否が分かる機能も付ける計画だ。

 災害予測システムなど「防災テック」分野は、災害の発生場所や理由が多岐にわたるため、それぞれに対応する製品の市場はニッチだ。その分、企業規模が小さいスタートアップにも商機がある。新興勢は旧来型技術に収益を頼っていないため、デジタルなど新技術も採用しやすい強みがある。

 矢野経済研究所(東京・中野)の予測によると、防災関連システムを含む危機管理ソリューションの市場規模は21年度に1兆632億円と15年度比で2割以上拡大する見込みだ。スタートアップはシステムの信頼性を高めることが課題だが、実績を積み重ねれば、成長市場で存在感を発揮できそうだ。(柴田奈々)

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