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防災・防犯特集――水害から街を守れ、官民連携で開発、ドローン測量、川底の凹凸把握、街路灯、水位監視も担う。

[ 2019年8月30日 / 日経産業新聞 ]

 大規模な地震はもちろん、風水害や土砂崩れなど、日本列島で自然災害と無縁でいられる場所はまずないと言っていい。それならば少しでも安全・安心な地域社会をつくろうと、企業や自治体が長い年月をかけて防災に知恵を絞っている。防犯セキュリティーも同様だ。こうした分野で最先端の技術やサービスを紹介していこう。

 大規模な水害から地域を守る取り組みが広がってきた。測量大手のパスコは川底の凹凸まで把握できるドローン(小型無人機)測量システムの外販を始めた。NECは街路灯を使って河川の水位を検知する装置を自治体に売り込む。綜合警備保障(ALSOK)は水に浸すと自動的に発電する「水電池」を使った省エネ型の水位監視システムを開発した。

 パスコは産業用ドローンを製造するアミューズワンセルフ(大阪市)と連携し、河川測量用の小型レーザースキャナーを製品化した。水に反射しにくい緑色レーザーを使い、浅瀬の河川の形状を3次元映像で表示する。

 小型飛行機や船を使った測量より、手間や時間を大幅に削減できる。公共事業向けなどに外販を始めた。ドローンに載せられるサイズのスキャナーは国内では前例がないという。

 新型スキャナーは3キログラム以上の積載能力を持つドローンで運用可能。従来も小型飛行機に大型の緑色レーザースキャナーを載せて測量する例はあったが、重さが100キログラム以上、サイズも一辺が1メートル以上あり、ドローンには搭載できなかった。

 航空測量は一般に1秒間に6万点のレーザーを照射するが、高度が高いほど同じ面積当たりの照射点数は減る。上空500メートルを移動する飛行機に比べ、ドローンは高くても150メートルほど。より詳細なデータが得られる。

 新型スキャナーが特に威力を発揮するのは浅瀬の測量だ。緑色レーザーは波長が532ナノ(ナノは10億分の1)メートルと短く、レーザー測量で一般的な近赤外線レーザーに比べ水面で反射されにくい。パスコのスキャナーをドローンに搭載した場合、水深10メートル前後の場所でも高精度のデータが得られるという。

 水中の地形を調べる作業は一般に、船を浮かべて音波で測深する例が多い。船が入れない場所は両岸にロープを張って一定間隔ごとの深さを測り、その勾配から断片的な地形図を得る。

 パスコは測量したデータを画像として処理する専用のソフトも開発した。上空からの立体画像はもちろん、水底の形状を一目で分かるように表示できる。全ての機材を購入する場合、価格は税別で3千万円超。パスコは割安な料金で測量作業の代行も引き受ける。

 NECは街路灯にセンサーやカメラを後付けして無線通信でつなぎ、住民の見守りに役立てるセキュリティーシステムを開発した。まず東京都杉並区と連携して12月まで実証実験に取り組む。

 時間帯や天候に応じて街路灯の照度を遠隔操作したり、街中を流れる河川の水位を監視したりする。NECは実験を踏まえ、2020年以降、全国の自治体にシステムの導入を働きかける。

 実験は杉並の善福寺川沿いで手がける。温度・湿度・照度などを感知するセンサーと、ネットワークカメラを十数カ所の街路灯に設置する。新規に街路灯を建てるのではなく、必要な装置を後付けするので施工の手間は少ない。

 河川の岸に設置する水位センサーとも連動させ、急な増水などに備える。異常時にはアラームで通知する。

 18年の西日本豪雨では、広島県を中心に数多くのため池が決壊し、下流に被害を及ぼした。このうち「防災重点ため池」に指定されていたのはわずか3カ所。正確かつ安価に監視できるシステムの構築は急務だ。

 ALSOKは富士電機や三嶋電子(東京・千代田)と共同で、水に浸すと自動的に発電する水電池を使った水位監視システムを開発した。19年度内に外販を始める。初期投資や維持費を含め、既存の監視システムの10分の1のコストに抑える。

 「危険」「退避」など水位の目安となる水辺に、水電池を組み込んだ監視装置を設定する。装置まで水位が上がると水電池が自動的に発電し、ALSOKや自治体の監視センターに信号を送る仕組みだ。ALSOKは警備の代行も引き受ける。

 水電池は電子部材製造の三嶋電子が特許を持つ独自技術で、水を含んだ液体に浸すと5〜10秒で発電を始める。監視システムのセンサーを稼働させ、通信回線の3Gや省電力で広域をカバーする「LPWA」などを使ってデータを送るのに十分な能力を持つ。

 水電池を使えば工事費用がほとんどかからず、本体を10万円台で納入できる見通し。設置から10年程度は整備なしで使えるといい、維持費用も大幅に削減できる。

 主な対象は西日本に多いため池だ。農林水産省によると、全国にため池は16万7千カ所ある。兵庫県が2万4千カ所で最も多く、2位以下も広島や香川、岡山といった瀬戸内の県に集中する。

 ただ費用の問題もあり、実際に水位監視システムを設置しているのは、ごく一部にとどまっているのが実態という。

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