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日経の紙面から

近づく「財政の出番」――財政政策、市場はこう見る、防災・消費促進・農業支援...景気下支え期待、日経平均2万4000円台も。

[ 2019年9月29日 / 日経ヴェリタス ]

消費税率の10%への引き上げで需要は落ち込みが予想される。金利消失で金融緩和余地が限られる中、景気の下支えの焦点は財政に移る。どの分野へ、どの程度の財政出動が効果的なのか。下期相場への影響を専門家に聞いた。

 「早急に景気対策が出てこないと、今年10月から景気後退入りする可能性が高い」。三菱UFJ国際投信の荒武秀至氏は身構える。

 27日の日経平均株価は前日比169円安の2万1878円で取引を終えた。9月上旬から大きく上昇していた反動もあり、配当権利落ちの影響以上の下落。消費増税を控え徐々に上値が重くなる中、市場の関心は政府が今後打ち出す可能性のある財政政策に移っている。

マイナス金利
国債を増発?

 エコノミストら市場関係者6人に予想してもらったところ、2019年度の補正予算に20年度の当初予算の一部を組み合わせて、数兆円規模で出動されるとの見方が相次いだ。財源は国債の増発で確保するとの見立てだ。10年債利回りがマイナス0.2%台とマイナス圏で推移し、政府にとって調達負担が軽いことがこの観測を強めている。

 内容については、まず6人全員が「災害復旧・復興」「防災・減災」を挙げた。今年も台風が猛威を振るい、千葉県をはじめ各地で大きな被害をもたらしており「復興や防災目的で財政を出しやすい環境になっている」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)。政府は2018〜20年度にインフラ整備で3兆4000億円を投じる計画だが、20年度当初予算で実施予定の1兆円分が前倒し執行される可能性がある。

 次に多かった政策は「個人消費の促進」だ。政府は10月の消費増税に対応し、中小事業者でキャッシュレスで買い物した際のポイント還元、低所得者や子育て世帯向けの「プレミアム付き商品券」、幼児教育・保育の無償化などのメニューを準備している。

 一連の対策で懐が暖まるのは子育て世帯で30〜40代が中心。しかし、これらの世帯は将来への備えから「恩恵を受けた分を貯蓄に回してしまう恐れがある」と、シティグループ証券の村嶋帰一氏は指摘する。金融資産の保有比率が高い高齢者への恩恵が少ないことも、景気の押し上げ効果が限られる理由で、1999年に配った2万円分の「地域振興券」、2009年の「定額給付金」のように「対象を広げた消費刺激策を打つ」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也氏)との意見が出た。

 形を変えた消費刺激策の予想もあった。三菱UFJ国際投信の荒武氏は、マイナンバーカードを持つ消費者がキャッシュレス決済した際に、一定のポイントを付与するなどの施策を予想する。既定のポイント還元は9カ月限定で、来年6月末に期限を迎える。新たなポイント還元策を切れ目なく投入することで、消費の落ち込みを防ごうとするのでは、との読みだ。

 自動車や家電など「耐久消費財の購入促進策」などの案も挙がった。自動車については取得・保有にかかる税負担の軽減策が出ているが、さらに需要を喚起する政策が出るかどうかに市場関係者は注目している。

 3つ目に多かったのが「農業支援」。日米貿易協定の合意で、米国産農産物にかかる関税が環太平洋経済連携協定(TPP)加盟国の水準並みに下がる見通し。輸入農産物が増え、農業事業者には打撃だ。協定合意を受けて、江藤拓農相は「日本の農業が傷まないよう目配りしたい」と語った。所得補償や投資促進など、経営を支援する施策が出てくると注目する向きがある。

 今年は日韓関係の冷え込みで、8月の訪日外国人客数が11カ月ぶりに前年比で減少に転じた。このため訪日外国人客数の回復につながる「観光振興策」が想定される。「次世代通信規格の『5G』普及を見据えた端末の補助金」「就職氷河期世代の就職支援策」などの案も挙がった。

追加緩和と
セットの見方

 これら一連の施策が実行された場合の、日本株相場の押し上げ効果はどの程度か。三井住友DSアセットマネジメントの吉川雅幸氏は、国内総生産(GDP)の0.1%の成長が日経平均1%の上昇につながると指摘。足元では「GDPの伸びに株価がついていっていない」とする。仮に0.3〜0.4%の成長だとすると、日経平均で少なくとも600円超の上昇は見込めそうだ。第一生命経済研究所の藤代宏一氏も「GDPの成長につれて日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)が切り上がり、株高につながる」と指摘する。

 日銀の黒田東彦総裁は「追加緩和について前回より前向きなのかと言われれば、その通りだ」と述べた。市場関係者は政府・日銀が12月中旬の金融政策決定会合で追加緩和策を打ち出し、あわせて財政出動もあるのではないかとみている。

 来年3月末までの日経平均の見通しを聞いたところ、総じて強気で、高値で2万4500円まで上昇するとの声もあった。国内に加え海外でも財政出動の動きや観測が相次ぎ、世界景気を支えるとの期待からだ。

 米中関係が再び悪化し貿易摩擦が深刻になれば日本株の押し下げ要因となるが、関税引き上げ合戦で緊張が高まった8月でも、日経平均は1度も節目の2万円を割らなかった。19年度下期に2万円割れを見込む市場関係者は、今回の取材では1人もいなかった。

 もっとも、政府が過度な財政出動に踏み切れば、財政健全化の目標は一段と遠のく。財政規律にも配慮した政策運営を進めなければ、日本株への期待がしぼむリスクもはらんでいる。

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