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お宅の郵便受け大丈夫?――通販商品・封書、盗難被害相次ぐ(生活)

[ 2009年5月11日 / 日本経済新聞 夕刊 ]

はみ出し厳禁、鍵付きタイプを

 郵便受けの防犯対策は大丈夫だろうか。郵便物が盗まれるだけでなく、手紙やはがきから個人情報が流出すれば振り込め詐欺など犯罪に遭う危険も高まる。インターネット通販の広がりで配達物の量と種類も増えている。住まいの防犯上で盲点となりやすい郵便受けについて、意識を高める必要がありそうだ。

 「あれ、まだ来ていないのかな」。東京都の女性会社員(29)は三月上旬、インターネットで購入した書籍が届いていないことに気付いた。

 注文した通販サイトで調べてみると「配達完了」となっており、メール便ですでに郵便受けに投入されているはずだ。運送業者からは「配達はしており恐らく盗難ではないか」との回答。「楽しみにしていたのに......」と悔しさと憤りがわき上がった。

 女性宅の郵便受けは一階の玄関口に入居者別にいくつも並ぶ集合住宅タイプ。容量が小さく、大きな封筒がはみ出すこともしばしば。扉に鍵もかけておらず、だれでも簡単に郵便物等が抜き取れた。「これからは南京錠をかけて防犯する必要がある」

 郵便物の窃盗被害は各地で起こっている。警視庁中央署では二〇〇八年末、三十代の男性から「郵便受けから不在配達通知書が盗まれた」との被害届が出された。通知書が不正に使われてクレジットカードなど配達記録郵便物が盗まれたとみられ、捜査を続けている。福岡県警では今年春に、同様の手口で郵便物を盗んだとして無職の男を逮捕した。

 自治体の消費者相談窓口にも「封筒が郵便受けからはみ出していて盗まれた」「インターネットで購入した本が盗まれた」などの相談が相次ぐ。東京都内では郵便物関連で年間六十件前後の相談があり、そのうち三割が紛失などに関することだ。

賠償は一部だけ

 手紙やはがきなど書留でない郵便物は盗まれたり紛失したりしても損害賠償の対象とはならない。また、軽量な荷物を郵便受けなどに投入する運送サービス「メール便」もネット通販などで利用する機会が多いが、十分な補償を受けられる可能性は少ない。

 総合情報サイト「オールアバウト」などで防犯対策を呼びかける安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんは「大事なものは宅配便や郵便局の局留めを利用するなどの自衛策が必要だ」と主張する。

 郵便受けそのものの防犯に不安を感じる人は多い。戸建て住宅向けのエクステリア製品を製造販売する東洋エクステリア(東京・新宿)が主婦八百人に郵便受けの不満や要望について聞いた調査によると、約三割が「鍵が付いていない、投入口から手が入るなど、セキュリティーに問題がある」と回答した。

古いタイプ交換

 ではどのような対策が必要なのか。財団法人の都市防犯研究センター(東京・新宿)の富田俊彦特任主任研究員は「古いタイプであればダイヤルロック式など防犯機能を高めた郵便受けに交換することも大切だ」と述べる。

 不動産賃貸の大和屋(埼玉県熊谷市)は〇八年春、管理する熊谷市内のマンション二棟計七十七戸の集合郵便受けを交換した。それまでは二十年ほど前に設置した奥行きが浅いタイプで、通販カタログなどが外にはみ出すことがあった。盗難被害の報告はなかったが鍵も付いていなかったため「防犯や見栄えの面で課題だった」(同社)。交換から約一年が経過し「鍵があるので安心する」と住民には好評だ。

 メーカー側でも製品ラインアップの充実を進めている。東洋エクステリアでは、はがきと封書専用の投入口を設けて抜き取られにくくした製品など三十種類前後を取り扱う。〇四年度から本格展開した防犯タイプは郵便受けの売り上げ全体の四五%を占め、年々拡大傾向という。

 郵便物があふれかえっていれば盗難にも遭いやすい。戸建て住宅に住む千葉市の男性会社員(32)は昨年末、正月に旅行で留守にすることから、年賀状や新聞をためられる大きな郵便受けを二日間かけて手作りした。廃材を使って高さ七五センチメートルの余裕サイズにし「厚手のダイレクトメールもすっぽり中に入り不在時以外にも重宝している」という。

 特定非営利活動法人(NPO法人)日本防犯学校(東京・新宿)の梅本正行学長は「ため込まない、鍵を付けるなど、基本的な防犯対策に力を入れる姿勢を外部にアピールするだけで犯罪者を遠ざける」と呼びかけている。

個人情報、犯罪の引き金に

 最近は定額給付金やねんきん特別便など個人情報を記載した書類が目立つ。クレジットカードの明細書などもいつどこで何を買い物したかが一目で分かる重要書類だ。佐伯さんは「郵便受けは個人情報の出入り口。家族構成から電話番号、財政状況まで知られる危険性がある」と主張する。

 梅本学長はねんきん特別便など郵便物から高齢者世帯であることを知られれば、振り込め詐欺に遭遇する危険性が増すと指摘。「犯罪者にとって、狙った居住者の情報を得ることは当たり前。郵便受けに無頓着であれば思わぬ危険に近づくことになりかねない」と警告している。

 住宅の鍵をかけない人はまれだが、郵便受けはダイヤル式の鍵が付いていても面倒くさがってかけない人は多い。手軽にできる防犯対策として、意識の切り替えも大切だ。

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