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新型インフル対策、事業継続計画を拡充、企業「弱毒」にも対応、柔軟な行動促す。

[ 2009年5月20日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

ドコモやセブン&アイ

 新型インフルエンザの流行に備え、大手企業が重要業務への影響を最小限に抑える「事業継続計画(BCP)」を拡充する。企業が持つBCPの多くは自然災害や強毒性の鳥インフルエンザの流行を想定している。NTTドコモやセブン&アイ・ホールディングスは弱毒性にも対応する詳細な計画作りに着手した。(1面参照)

 NTTドコモは今年三月に強毒性インフルエンザの流行を想定して計画をまとめたが、弱毒性の広がりで急きょ見直しを始めた。既存計画だけでは対策が厳しすぎると判断、流行時に停止する業務範囲などについて今回のインフルエンザを前提に見直す。既存計画に加え、月内をめどに新たな計画も策定する。

 セブン&アイやイオンなど流通大手も同様に「弱毒性」への対応策を検討。どの段階で店舗閉鎖に踏み切るかなど計画の見直しに着手した。

大半は「鳥」想定

 ほとんどの企業のBCPは鳥インフルエンザを想定している。弱毒性といわれる今回の新型インフルエンザに対しては機械的な運用を避け、柔軟に対応している。

 大阪ガスは非常時に備え、ガスの安定供給に必要な最低人数を一千人と想定。社員が二週間泊まり込むのに必要な水や食料、マスク十五万枚と治療薬を確保した。ただ「今回は弱毒性といわれるので国内で感染者が確認されても(泊まり込みなどの)非常時体制には入らない」としている。

 業務を停止すれば市民生活に大きな影響を与える電力・ガス、医薬品業界などは詳細な行動計画を策定しており、それに基づいて段階的に対策を進める考え。武田薬品工業は医療用医薬品の在庫積み増しを完了。流行した場合はあらかじめ定めている業務の優先順位に従い、感染拡大を防ぎながら事業を継続する準備を整えている。

鉄道は対応に差

 一方、多くの人が集まる鉄道や流通業などでは対応が分かれている。JR東日本はまとまったBCPは策定せず、防災対策など個々にマニュアルを用意。今回は職員に予防の手引を配布したが、大流行時の対応は盛り込まれておらず、「運行については国からの指示に従う」という。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは新型インフルエンザ対策も含めたBCPの策定を検討しているが、休業するかの判断基準は「全く未定で、行政の指導を仰ぎながら柔軟に対応する」としている。

 まだBCPを持っていない企業は新型インフルエンザの拡大を機に、計画の策定を急いでいる。羽田空港と都心を結ぶ鉄道を運行する京浜急行電鉄は「業務の優先順位付けなどを検討中で、早急に対応策を完成させる」。三菱商事も首都直下型地震を想定した計画に加え、新型インフルエンザ対応も反映したBCP策定に着手した。

 大企業では進み始めたBCPの策定だが、事業継続推進機構(東京・港)の丸谷浩明理事長は「大手だけでは意味がない」と指摘する。大企業は多くの業務で中小企業に依存しており、感染拡大を防ぐにはサプライチェーン全体に予防措置を徹底する必要があるためだ。今後は中小の取引先などを巻き込んだ対応策も必要になりそうだ。

【表】新型インフルに対する各社の対応(○は有り、×は無し、△は一部有り)

強毒性インフル対応のBCPまたは行動計画   今回の新型インフルへの対応策

電力・ガス

東京電力 ○ 海外出張制限、国内外全拠点にマスク・消毒液配備

中部電力 ○ 全事業所に対策本部設置、海外出張制限   

東京ガス ○ 全社員に毎朝検温義務付け、関係会社などへ情報提供   

医薬

第一三共    ○ 事業所単位で消毒液・マスクを配備

アステラス製薬 × 新型インフル対策のBCPを策定中   

自動車・鉄鋼・電機

トヨタ自動車  ○  感染拡大の段階ごとに生産現場の稼働や出張の可否を決定

新日本製鉄   ○  メキシコへの渡航禁止   

JFEスチール ○  弱毒性に合わせ対応のタイミングをずらすなどBCPを見直し

神戸製鋼所   △  海外拠点はBCP策定済み、国内版は策定中   

ソニー     ○  マスクなどの配備、社員への情報提供   

日立製作所   ○  通常通りの業務継続が原則   

東 芝     ×  事業部門ごとに新型インフル対応BCP作成予定   

キヤノン    ×  新型インフル対応のBCP策定中   

三菱電機    ×  BCPを策定中   

NEC     ○  国内発生に備えた注意喚起メールを従業員に配信   

流通・レジャーなど

三井物産    ○  BCPは大規模災害想定だが別途インフル対策の行動計画を策定

JTB     ○  ツアー中止基準はWHOや政府の発表に合わせその都度見直し 

近畿日本ツーリスト ○ 感染症拡大を想定したBCPを新たに策定する方針   

東京ドーム   ○  地震・火災想定のBCPに新型インフル対策の追加検討   

ホテルオークラ ○  従業員の健康・衛生管理、感染疑いの宿泊客への対応マニュアルも

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