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「緊急時電源入らぬ!」電気ショックで救命、AED保守に落とし穴(フォローアップ)

[ 2009年9月16日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

「十分な点検必要」 管理体制の不備指摘も

 事故や病気などでけいれんした心臓に電気ショックを与え、心拍を回復させる自動体外式除細動器(AED)。5年前に一般市民の使用が解禁されて以降、急速に普及したが、「使用時に電源が入らない」などのトラブルが目立ち始めた。保守点検に対する意識の低さが背景にあり、誰がどこに設置しているのか正確に分からないことも問題を複雑にしている。専門家からは「管理体制を整えるべきだ」との声も上がっている。

 昨年11月、あるレジャー施設で60代の男性が突然倒れた。呼び掛けても反応がない。「誰かAEDを持って来て」と声が上がり、居合わせた人が近くにあったAEDのふたを開け、電源を入れた。だが音声ガイダンスが流れた直後に機器はストップ。男性はまもなく死亡が確認された。

 メーカーが調べたところ、この機器は電池が切れていた。11月初めの段階で、電池切れが近いことを知らせる「注意マーク」が出ていたはずだったといい、厚生労働省は「日常的に点検していれば電池を交換できたケースだった」とみる。

 AEDは2004年7月から緊急時には医療従事者以外の一般市民も使えるようになり、設置が進んだ。

 消防や病院などが使い方などを教える講習会を重ね、使用例も徐々に増えてきたが、医誠会病院(大阪市)の丸川征四郎院長補佐は「今後はメンテナンス不足によるトラブルで『いざ』というときに善意を生かせない事態が増える恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 AEDを巡り、医薬品医療機器総合機構に「不具合が疑われる」と報告されたトラブルは04〜08年で計約70件。半数以上が「電源投入不能」などの電源関連で、因果関係は不明だが患者が死亡したケースもあった。

 厚労省安全対策課は今年4月、販売業者や設置者に対し、点検担当者を置き、原則として毎日点検するよう通知。「命にかかわる医療機器なので、十分な点検が欠かせない」と訴える。

 通知を受け、10台を保有する東京ビッグサイト(東京・江東)は6月、警備員が毎朝の巡回時に機器を点検するマニュアルを作成。独自のチェックリストも作り、電池や装着パッドの使用期限の管理も徹底した。同社の担当者は「異常ランプのチェックには10秒もかからない。負担は重くない」と話す。

 ただ全国で14万台以上あるすべてのAEDにチェックの目を行き渡らせるのは簡単ではない。

 メーカーの一つ、フィリップスエレクトロニクスジャパンは電池や消耗品の交換期限が近づくと、設置先にダイレクトメール(DM)を送って案内しているが、「2〜3割は交換しない」という。設置者に保守点検の必要性が十分に伝わっていないのが実情だ。

 AEDは慈善目的で寄付されることも多く、国やメーカー側が把握できない設置場所もある。「置くだけでよいと思っていた」との声は複数の寄付先から聞こえる。

 AEDの普及に取り組んできた東京都済生会中央病院の三田村秀雄副院長は「いずれ保守点検が問題になることは十分予想できた」と指摘。「一般に解禁にする時点で登録制を導入すべきだった。今からでも取り組みを進めるべきだ」と話している。

電池など、寿命に注意 設置14万台に急増

 厚生労働省の研究班によると、2005年末時点で9906台だった一般向けのAED設置台数は、06年末に4万3212台、07年末に8万8265台と急増。08年末には14万9318台に膨れ上がった。

 AEDの装着パッドは2〜3年、電池は約5年で交換が必要。今後、十分な保守点検が行われないと、肝心なときに作動しなかったり、使用時に皮膚がやけどするなどのトラブルが起こる可能性があるという。

 東京都が07年8〜10月、23区内の1万平方メートル以上の大規模ビル2233施設を対象に実施した調査(1331施設が回答)では、AEDを「毎日確認」しているのは18・4%のみ。「定期的に確認」も52・1%にとどまった。

 都薬事監視課は「点検が必要ということがあまり知られていないのが実情」と指摘する。

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