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物流の安全、ITが守る――無線識別タグで温度管理、対策診断、改善システム提案。

[ 2010年7月5日 / 日経産業新聞 ]

食品・医薬品向けに活躍

 物流事業者や卸事業者にとって最重要課題といえば、輸送中の商品の品質保持や、商品を事故や盗難から守ることだろう。運送や保管時のこうしたリスクをいかに低減すべきか。IT(情報技術)を駆使した最新サービスを軸に、物流の「安全」を守る取り組みを紹介する。

 「ホタテをはじめとする高級食材が小売店に確実に届いているのか」――。水産物専門商社の仙台水産(仙台市)はRFIDタグ(無線自動識別荷札)を使った品質管理システムを導入した。

 目的はトラックなどで輸送する生鮮食料の品質管理の徹底。輸送中の温度や湿度、衝撃などを細かく記録し、届いていない場合には原因を特定する。

 センサーを内蔵した小型のRFIDタグを商品の箱に取り付ける。RFIDタグは輸送中の各種情報を計測し、データを記録することができる。計測可能範囲は温度ならセ氏マイナス40〜80度、湿度は5〜90%、衝撃は5〜75G(Gは重力加速度の単位)。

 仙台水産は運送会社ではなく出荷元の立場。出荷元は通常、商品に何かあった場合に備えて保険に加入しているが、原因が特定できないと、責任の所在が明確にならず、保険が思ったように下りないこともあった。再発を防ぐためにも原因の解明が欠かせない。

 「積み込み時の衝撃のせいか」「輸送中の事故によるのか」「輸送後の保管に問題があったのか」――。このシステムを使えば何か起きた場合に詳細な分析ができる。届け先に計測結果を報告書として提出することも可能。作業にかかわる人の注意を喚起する啓発効果も高い。

 仙台水産の熊谷純智専務取締役は「勘と経験に頼っていた部分を目に見える形で示せるようになった」と指摘する。

 中国の医薬品流通卸業大手、九州通医薬集団も同じく商品の輸送にRFIDシステムを活用している。医薬品は厳密な品質管理が求められるが、従来は手作業で温度を管理しており、作業が負担になっていた。「製薬会社に対する信頼性向上や、品質の劣化に伴う在庫ロスを防ぐことに寄与している」(九州通の担当者)という。

 現在は輸送後にRFIDのデータを読み取り、さかのぼってチェックする方式だが、将来は中国の携帯電話通信網と組み合わせ、リアルタイムで温度の推移が分かるようになる見込み。異常が判明した場合などに、すぐに対応できる。

 一連のシステムを開発したNECは「食品のほか、医薬品や精密機器の輸送にも向く。輸送リスクの高い海外での需要も見込める」(RFIDビジネス推進グループの添野聡子主任)と利用拡大に期待をかける。

 安全対策の取り組みの度合いを評価する簡易診断サービスを提供するのは損保ジャパン・リスクマネジメント。中国製冷凍ギョーザの中毒事件以降、「食品を扱う業者からの引き合いが増えている」(瀬戸寛喜・上席コンサルタント)と話す。

 診断の対象は物流関連企業の中でも倉庫を持つ事業者。商品の紛失や外部からの侵入、内部の不正などを防ぐため、設備をソフトとハードの両面でチェック。RFIDを利用した作業員の所在管理システムや生体認証を使った出入管理システムなど最新のITを活用した改善を促す。

 「異物混入の恐れがないか心配だった」という千葉市の食品卸業者は営業時間中の倉庫への出入り口を1カ所に絞り、監視の精度を上げるなどの措置をとった。今後は監視カメラやセンサーの拡充に取り組むという。

危険地点をカーナビ表示・アルコール検知強化  輸送事故防止策も拡充

 品質管理だけでなく、輸送中の事故などを避けるのも大事になる。運送会社、柴又運輸(東京・江戸川)は3月、保有する約60台のトラックに新しいカーナビゲーションシステムを導入した。安全性向上のための新機軸が盛り込まれている。

 まず画面上の地図には随所に赤色の「押しピン」マークが浮かぶ。これは事故多発地点を示すものだ。警察庁がまとめたデータを基に、交差点などの危険個所を表示し、運転手に注意を喚起している。画面には「配送中」「渋滞中」「待機中」「空荷」「帰庫」などのボタンもあり、運転手がその都度選択する仕組みだ。

 同社の橋場広太郎取締役は「運転手の管理を強めると反発も予想されたが、理解が進み、安全意識向上につながっている」としている。

 システムを開発したのはソフトバンクモバイルや三井物産、パイオニアなどが出資するナビポータル(東京・港)。ソフトバンクの携帯電話回線を使ったインターネット経由で情報をやり取りする。ソフトの期間貸し(ASP)でサービスを提供しているため、初期コストを低く抑えられるという。

 一方、アルコール検知器などを組み合わせ、運転手の管理をさらに強化する手法も登場した。車載機器のデータ・テック(東京・大田)が販売するシステムは息を吹きかけるタイプのアルコール検知器や、運転免許証の識別機、パソコン用の管理ソフトなどで構成。アルコールと勤務状況などのデータを解析し、安全面から適切かどうかをチェックできる。

 インターネットを使った通信販売などが人気を呼んでおり、物流の重要性はますます高まっている。物流の「安全」を確保するための各社の努力は続きそうだ。(中川渉)

【表】物流の安全性向上サービス   

■カーナビゲーションシステム   

ナビポータルの「ナビポータルfor〓Biz  位置情報サービス」   

(電)044・223・1228(法人事業部)   

   パソコン1台当たり月額税別5000円、車両1台当たり端末レンタルと通信料で月額5980円

   

■運転手の勤務状況管理システム   

データ・テックの「SR点呼システム」   

(電)03・5703・7060(営業本部)   

   アルコール検知器やソフトなどの初期費用は税別26万2000円、保守費用は年3万5000円

   

■RFIDシステム   

NECの「温度・湿度・衝撃センサ付きRFIDタグ」   

電子メール:info−rfid@rfidbsc.jp.〓nec.com(RFIDビジネス推進グループ)   

   初期費用税別15万円、ほかにRF〓IDタグの月額利用料が必要

   

■物流の安全性診断   

損保ジャパン・リスクマネジメントの「物流セキュリティ簡易診断サービス」   

(電)03・3349・4320(リスクエンジニアリング事業本部)   

   1件あたり50万円程度(規模や内容によって異なる)

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