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国産ロボット技術――原発事故の想定怠り出遅れ(人気特集から)

[ 2011年5月8日 / 日経ヴェリタス ]

 日経ヴェリタスは2010年8月22日号の特集「2020未来技術の鼓動」で日本のロボット技術の先進性を紹介した。だが原子力発電所事故の対応で国産ロボット技術の弱点があらわになった。

 現場で活躍を始めたのは米アイロボット社製の車型ロボット。続いて米キネテック社やフランス企業のロボットが投入される予定で、日本製は出遅れた。日本は原子力災害をこれまで真剣に想定しておらず、優れた技術の芽を持ちながらも、実用段階まで育てることができなかった。

 国産の原子力災害ロボットの開発は、1999年に茨城県東海村で起きた核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所の臨界事故を契機に始まった。経済産業省は遠隔操作ロボットの開発事業を発足させたものの、わずか1年後に試作機を作っただけで開発は打ち切りとなった。東京工業大学の広瀬茂夫教授は「ロボットが必要になる事態は日本では起きないから必要ないと言われた」と話す。

 この事業には三菱重工業や東芝などが参加し、6台が試作された。中止で宙に浮いた試作機のうち1台は東北大学工学部の玄関にモニュメントとして飾られている。多くは保管費用もなく分解・廃棄された公算が大きい。

 原子力事故の現場で働くロボットは放射線から電子回路を守るため特殊な技術が要る。放射線による誤作動を防ぐことができる大規模集積回路(LSI)は注文生産的な色彩が濃く、価格は通常素子の10倍以上といわれる。

 また、がれきを乗り越えて動くには小型・軽量でなくてはならない。日本の得意な2足歩行ロボットは悪条件にはもともと向かない。「実用化するには一度きりの試作では足りず、現実に近い環境で繰り返し試験をし改良しなければならない」と広瀬教授は話す。

 開発中断の経緯をみる限り、日本は技術がないのではなく、やる気がないのだ。JCO事故で必要性が叫ばれたため経産省は予算をつけたが、ユーザーである電力業界が不要と判断し打ち切りとなった。

 事故や廃炉を真剣に考えてきた原子力大国、フランスには「耐放射線用のLSI専用工場まであり国がロボット製造を支援する態勢がある」と東北大学の田所諭教授はいう。米国では軍事用のニーズもある。アイロボット社などはアフガニスタンなど過酷な環境の戦地で、偵察や地雷除去に働くロボットを開発している。

 遅ればせながら、国産ロボットも現場に投入される見込みだ。災害救助ロボットを開発する特定非営利活動法人(NPO法人)、国際レスキューシステム研究機構(田所諭会長)が作った情報収集用ロボが採用されたと報じられた。(編集委員 滝順一)

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