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減らせ災害リスク、分散進める企業、コストより非常時の事業継続を重視。

[ 2011年7月3日 / 日経ヴェリタス ]

 東日本大震災を受けて、地震や津波などの災害リスクへの抵抗力をどう高めるかが重要な経営課題に浮上している。特定地域に集中していた事業拠点を分散させたり、在庫管理を見直したりする動きがあるという。どんな企業がリスク分散に取り組んでいるのか、どんなサービスや地域が注目されているのか。日経ヴェリタスの記者に聞いてみよう。

災害対策としてリスク分散が重視されるようになったのはなぜですか。

 東日本大震災では、想定を超える津波被害や地盤の液状化、サプライチェーン(供給網)の寸断、原子力発電所の事故や電力不足などが広範囲かつ複合的に発生しました。自社が直接的に被災しなくても生産や販売に支障をきたすケースが相次いだのです。

 そこで浮上してきたのが「リスク分散」の考え方です。事業拠点や取引先を集中させた方が効率的との考え方が主流でしたが、当該地域で災害が起こると経営への打撃は甚大です。複数地域に分散させれば、目先のコストは増えますが、災害時も事業を継続でき、長い目でみると株主の利益にもつながる、との発想です。

 政府の地震調査委員会はマグニチュード7級の直下地震が今後30年以内に70%の確率で首都圏で発生すると予測しています。中央防災会議は荒川の堤防が地震で決壊して洪水が発生した場合、東証1部上場企業の売上高上位100社のうち42社の本社が浸水地域内に入ると指摘しています。大企業の本社が首都圏に集中している表れです。

実際にリスク分散に動いている企業はあるのですか。

 首都圏の計画停電を受け、震災直後にはオフィスを西日本に移す動きがありました。ケンコーコム(3325)は5月、本社機能の一部を福岡市に移しました。オフィス仲介の三幸エステート(東京・中央)は「耐震性や電力の供給能力、地盤の安定性を考慮して立地を選ぶ企業が増えそう」とみています。関西を中心にオフィスビル事業を展開する阪急阪神ホールディングス(9042)やダイビル(8806)には追い風となりそうです。

 MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)傘下のインターリスク総研は、災害リスクを総合評価するサービスを手掛けています。「投資案件を災害リスクの視点から評価してほしいとの依頼を受けるようになった」(同社)そうです。

 住宅向けに地盤調査や液状化対策を手掛けるサムシングホールディングス(1408)も「震災後は商業施設向けの引き合いも増えている」と話しています。年後半から業績への寄与が期待できそうです。

 森精機製作所(6141)は千葉県にある生産設備の半分を三重県に移管し、資本提携先であるドイツ社と設計を共通化する計画です。スズキ(7269)の鈴木修会長兼社長も、静岡県に集中している工場や研究施設を将来的に分散させる方針を明らかにしました。バックアップ用の生産ラインの増設に動く企業が増えれば、ファナック(6954)や安川電機(6506)など工作機械メーカーの受注に好影響が出そうです。

 工場新設には多額の資金が必要になるため、短期的には代替生産で対応するのが現実的でしょう。ニチレイ(2871)は、被災したヤヨイ食品(東京・港)から依頼を受け、業務用冷凍食品のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を始めました。

 物流拠点の分散を検討する企業も増えています。三菱倉庫(9301)は「夏の電力不足に備えて生産を前倒しし、在庫を厚くする企業も出ている」と説明しています。企業の海外移転が加速すると、アジアなどで物流サービスを強化している日立物流(9086)や近鉄エクスプレス(9375)にも恩恵が及びそうです。

 情報処理の拠点であるデータセンターを分散させたり、外部委託したりする動きも加速しそうです。NTT(9432)グループのNTT西日本は自社のデータセンターを活用し、顧客のデータを定期的に保存するサービスを5月から始めました。KDDI(9433)はクラウドコンピューティング技術を活用したデータ管理サービスをシンガポールで始めています。

移転先として、どんな地域が注目されているのでしょうか。

 野村総合研究所(4307)の浅野憲周上級コンサルタントは「日本海側は地震や津波のリスクが相対的に低い」と考えています。コマツ(6301)は5月、創業地である石川県小松市に社員研修施設を新設しました。東京への一極集中を緩和する考えです。

 プライスウォーターハウスクーパースの山本直樹シニアマネージャーは「原発の近くに拠点を持つ企業は取引先や消費者から今後の対応を問われるようになった」と指摘しています。こうした中、注目されているのが地震が少なく、原発もない沖縄です。「震災後、県内のデータセンターやコールセンター事業者への引き合いが増えている」(沖縄県観光商工部)そうです。

 データセンターは沖縄電力(9511)のグループ企業が運営しています。トランスコスモス(9715)はコールセンターの運営に加え、子会社を通じて県からコールセンターの人材育成事業を受託しています。雇用が増えて消費が活性化すれば、県内で流通業を展開するサンエー(2659)にはプラスです。沖縄はアジアに近いことから、アジア貿易のハブ(中継基地)としても注目されています。全日本空輸(9202)は那覇空港を拠点に国際航空貨物事業を展開しています。(鈴木健二朗)

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