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連載コラム

北米エリアの夜を彩る万能建築照明

[ 2019年1月28日 ]

昨年(2018年)の10月にハイパワーなLED演出照明を数多く取り扱っているLumenpulseというカナダを拠点とする照明メーカーの本社および工場を見せて頂く機会に恵まれました。そしてアメリカのボストン、カナダのモントリオールにてLumenpulse社の照明器具を採用した事例も数多く見せて頂きましたので、今回のコラムはその様子を紹介したいと思います。

また、昨年11月に開催されたDNライティングのプライベート展示会の様子、そしてリニューアルされたdyson社のタスクライトを見せて頂く機会がありましたのでその様子なども一緒にご紹介します。

1. Lumenpulseの本社および設置事例の見学

Lumenpulse社(以下Lumenpulse)は2006年にカナダで創業した新しい照明メーカーです。ですから日本ではその名前を聞いてピンとくる人はまだそれほど多くないと思います。日本ではLumenjapanが正規代理店としてLumenpulseの照明器具を取り扱っています。今回ご紹介するLumenpulse本社や北米エリアの設置事例はLumenjapanのスタッフのみなさんにご案内頂きました。


図1 カナダにあるLumenpuluse本社

LumenpulseはフルカラーLED照明を中核とした製品を展開しています。創業者がライティングデザイナーの家系で育ったこともあり、単なるカラーライティングの演出照明というだけではなく、建築照明の視点からも照明器具が制作されていることが特徴です。国内でLumenpulseのようなフルカラーのLED照明を扱っている照明メーカーは、カラーキネティクス・ジャパンやマーチンプロフェッショナルジャパン(以下マーチン)などが挙げられます。カラーキネティクスはフルカラーや色温度可変の照明器具の様々なバリエーションを展開し、インドアからアウトドアまでオールマイティな印象があります。一方マーチンの照明器具はステージライティングという軸がありながら、その高い演出性を活かしたハイパワーな屋外用の演出照明を幅広く展開しているというイメージがあります。

あくまで個人的な印象ですが、Lumenpulseの器具はその両方の特徴を併せ持つようなイメージです。他社製品よりも屋外照明、中でも建築のファサードライティングという分野に特化し、耐久性・防水性を追求しつつ、より美しく効率的に建物をライトアップするために他のメーカーにはない配光をカスタマイズできる独自のシステムを構築しています。演出照明の機能に加え、建築照明としてのクオリティも同時に追求したことが世界中の照明デザイナーに受け入れられ、評価されたのだと思います。類似製品の多いカラーライティングの分野で、創業からわずか10年足らずでグローバルな照明メーカーに成長した背景や要因はそのあたりにあると推察します。

まず、設置事例を紹介する前にLumenpulseの主要な2機種の照明器具の特徴を理解しておくとより分かり易いと思います。

Lumenpulseの思想を最も強く反映しているのがlumenbeamです。LED照明の高効率、ハイパワー化によって数年前から他社の照明メーカーでも見かけるようになった大光量のLED投光器です。lumenbeamはSmall(14wlm)、Medium(28w)、Large(50w)、Grande(100w)、LBX RO(140w)、LBX HO(205w)の6種類があり、Smallが最も小さく、LBXが最大のサイズになります。配光は最も狭いもので4°、その他6°、10°、20°、40°、60°等の配光バリエーションがあり、スプレッドレンズなどのオプションがあります。4~6°という超狭角配光は他のメーカーのLED投光器にはない大きな魅力ではないかと思います。LBX HOと4°の超狭角配光を組み合わせると1灯で最大14,193lmという光束量となり、800m先でも中心部では2lxの照度が得られます。東京スカイツリーのような超高層建築でもグランドレベルから頂部までライアップが可能な性能を有しています。


図2 lumenbeamのバリエーション(Lumenjapanカタログより引用)


図3 lumenbeamの狭角配光と照射距離(Lumenjapanカタログより引用)

またカラーバリエーションも豊富で、単色では2200K、2700K、3000K、3500K、4000K、5700K、6500K、Red、Green、Blue、Royal Blue、カラーチェンジ可能なものは2200~3000K(色温度可変)、2700~6500K(色温度可変)、RGB、RGBW(Wはホワイト)、RGBA(Aはアンバー)と非常に種類が豊富です。さらにスヌート、バイザー、スパイク、ポールマウントなどオプションも充実しているところが照明デザイナーのツボを押さえているように思います。

lumenbeamの最大の特徴が、一つの器具で複数の配光を選択できる事です。これはGrande以降の大型のサイズのみに限定されますが、Grandeは発光面を上下2分割、LBXは発光面を3分割してそれぞれに好きな色、好きな配光を組み合わせることが可能です。この機能により、例えば超高層建築のライトアップのケースでは、超狭角配光と広角配光を組み合わせることで頂部のライトアップだけでなく、同時に低層部のライトアップも可能になります。これだけのカラーと配光のバリエーションがあるため、その組み合わせは数万通りにも及ぶそうです。


図4 lumenbeam LBXの設置例
LBXタイプは光源ユニットが3分割されている。


図5 lumenbeam LBXの設置例(Lumenjapanカタログより引用)

投光器型のlumenbeamとは対照的に、ライン照明の形状をした照明器具がlumenfacadeです。電源一体型、スリムな電源別置型、壁面直付け型、埋設型などバリエーションは様々です。何れのタイプも屋外設置に対応したIP66の仕様となっています。(埋設タイプのみIP68)フルカラーの屋外用ライン照明と言えば、通常のライン照明に比べ一回り大きな形状のイメージがありますが、lumenfacadeは標準的なサイズで幅59mm、高さ89mmでシンプルなスクエアタイプの形状なので、ファサード照明として用いるのであれば、ほとんど存在感を感じないサイズとデザインだと思います。


図6 lumenfacadeのバリエーション(Lumenjapanカタログより引用)

ライン照明のモジュール展開は340mm、645mm、949mm、1254mmとなっており、日本の建築とも相性が抜群です。配光は最もナローなもので8°から用意されていて、90°の超広角配光まであり、その他にもスプレッド配光が6種類、ウォールウォッシュ配光が1種類、合計14種の配光バリエーションが用意されています。
最も狭角配光である8°と1,245mm(4ft)タイプの組み合わせでは最大で4512lm(単色/高出力タイプ)の光束となり、計算上では50mの距離でも中心部の照度は約20lx程になるというハイパワーなライン照明です。




図7、8 lumenfacadeの配光バリエーション
写真は東京のlumenjapanオフィスにて撮影

カラーバリエーションも基本的にlumenbeamと同様の展開になりますので、こちらも数えきれない程の組み合わせが可能なフルカラーライン照明という事になります。

その他にもいくつかの機種が存在しますが、主力となる照明はこの2機種といって良いと思います。もちろんすべてのバリエーションが日本で使用可能です。

これらの器具を用いた実際の事例をボストン、モントリオールなどの北米エリアで実際に見せて頂きました。

■ニューグランド水族館 / ボストン

最もLumenpulseの器具の特徴を活かしている事例と感じたのはボストンの観光名所の一つでもあるニューグランド水族館です。これまで水族館の照明にはHIDランプが用いられていたそうですが、リニューアルにともなう照明のLED化でLumenpulseの器具が採用されたそうです。水族館なのでインテリアの事例ではありますが、水しぶきや湿気など常時水を気になければならない屋外に近い環境である事、また照度を落とした空間で水槽を光で演出するという条件を考えると、Lumenpulseの器具はどちらの条件も満たす良い選択だと思います。


図9 ボストンのニューグランド水族館
(設計:Cambridge Seven Associates, Inc. 照明デザイン:Available Light)

最大の見せ場はシリンダー状の巨大な水槽「ジャイアント・オーシャン・タンク」です。巨大水槽に螺旋状にスロープが巻き付いたような建築で、最初に最上階に上がってそこからスロープをぐるぐる回って下る展示動線になっています。その巨大水槽の天井部分にlumenbeamの中で最も大きいLBXが設置されています。


図10 ジャイアント・オーシャン・タンクを照らすlumenbeam LBX


図11 ジャイアント・オーシャン・タンクに螺旋状に巻き付くスロープ
コンクリートのスロープの中心にあるが巨大な水槽「ジャイアント・オーシャン・タンク」

シリンダー状の水槽と同じ形で、天井には2つの円形のスリットが設けられ、そこにlumenbeam LBXが設置されています。そのため、天井に最も接近する最上階でも大型の器具の存在感をあまり感じることなく水槽に集中できます。器具にはスヌート(フード)をつけ、来館者に不快なグレアを極力感じさせないよう配慮している事もその効果を高めています。

    
図12、13 スヌート(フード)でグレアをカットしている様子

また、天井のlumenbeam LBXは5700Kの10°、5700Kの20°、そしてLBXの特徴を活かした、白+緑+青の3色を1台にまとめたカスタムタイプの20°配光の器具等から構成されています。昼間の太陽光に近い色温度と、青い海の色、海藻を連想させる緑の光が混在する事で、ジャイアント・オーシャン・タンクの中は本物のデイライトで照らされているような印象です。下のフロアへ移動するとその光はトップライトから降り注ぐ太陽光ではないかと錯覚するほどです。また、リアルに作りこまれた岩礁の穴や凹凸と、ナローの10°配光の光が、下階に行くほど海底に差し込む太陽光のような光景を作り出します。

    

    
図14~17 太陽光のような効果を生み出すlumenbeam LBX

ジャイアント・オーシャン・タンクを照らすlumenbeam LBXは本物の太陽光と同じく、常に緩やかに変化しています。明るさや白、青、緑のカラーバランスが徐々に移り変わり、そこに水と魚の動きが加わると、ひと時として同じ景色はありません。

    


図18~20 常に変化するlumenbeam LBXの光
スヌートの内側や壁に当たる光を注意深く見ると微妙に光が変化している事が分かる。

さらに低い色温度(赤みを帯びた光)は水槽内の藻の発生を促進させるという研究結果を受け、5700Kの高い色温度、そして白+緑+青のカラーライティングが選択されました。通常、演出性を高めるためのカラーライティングはRGB(赤+緑+青)が一般的ですが、lumenbeam LBXのカスタマイズの特徴を最大限に活かし、赤であるRを白であるWに入れ替えWGBのカラー投光器でその要望に応えました。

ニューグランド水族館の照明はAvailable Lightというアメリカの照明デザイン事務所が設計・デザインしています。舞台照明も数多く手掛ける事務所というだけあって、建築照明デザインの枠にとらわれない大胆さ、魅せる事へのこだわりを感じる光の空間でした。

■liberty mutual Building / ボストン

ボストンの夜のランドマークであるliberty mutual Buildingはライン照明タイプのlumenfacadeのみでライトアップされています。交差点の最も目立つ好立地に建つliberty mutual Buildingはクラッシックなデザインの高層ビルで、ラインタイプのlumenfacadeと非常に相性が良いと思います。中層部のライトアップはライン照明を用いながらも5~6フロア程度まで十分光が届いており、ライン照明としては充分過ぎる光の伸びだと感じました。




図21、22 liberty mutual Buildingのファサードライトアップ
(照明デザイン:Lam Partners Inc.)

フルカラーが可能なスペックを有しながら、あえて電球色だけでライトアップしている事に好感を覚えます。この選択がこの建築の重厚さや歴史、品格、ランドマーク性をより高めていると思います。

■ボストンハーバーホテル / ボストン

ボストンハーバーホテルのファサードには投光器タイプのlumenbeamが数多く使用されていました。こちらも電球色を中心とした落ち着いた印象のライトアップでクラッシックな外観と照明がマッチしています。

    

    
図23~26 Boston Harbor Hotelのファサードライトアップ
(照明デザイン:Collaborative)

■モントリオール・ノートルダム聖堂 / モントリオール

Lumenpulseの本社があるカナダの事例では、モントリオールのノートルダム聖堂が印象的でした。日本の重要文化財等と同様、歴史的建造物であるノートルダム聖堂には直接外壁に照明器具を取り付けることができません。そこでポール照明に投光器タイプのlumenbeamを共架させてライトアップしています。実際に現地に行くと、どこから照らしているのか分からないというか、そもそも自然に光だけが存在するので、そういう思考すら出てこない美しいライトアップです。また狭角配光が得意なLumenpulseの照明器具の特徴を最大限に活かして、建物全体を一様にライトアップするのではなく、建築の形状を活かしながらピンポイントに丁寧にライトアップされています。


図27 モントリオール・ノートルダム聖堂のライトアップ
(照明デザイン:Éclairage Public)


図28 ポール照明に共架させたlumenbeamでファサードをライトアップする。


図29 赤丸部分のポール照明にlumenbeamを取り付けている。


図30 アーチを照らすブルーの光

    
図31、32 聖堂の側面のライトアップ
低い塀の中にlumenbeamが隠されている。そのため歩行者からは照明器具の存在を感じない。

また聖堂の中では音楽、照明、プロジェクションマッピングを合わせた光のショーが行われています。こちらはLumenpulseの器具を使った演出ではないそうですが、この地を訪れた際には必見だと思います。

    


図33~35 ショー開演前の聖堂の中の様子(ショー上演中は撮影禁止)
幻想的な雰囲気にライトアップされている。

ノートルダム聖堂周辺の街を散策すると、あちらこちらでLumenpulseの照明器具を使ったファサードライトアップを目にします。夜になると町全体がLumenpulseのショールームと言っても良いかもしれません。


図36 モントリオール 夜の街並み
歴史を感じさせる美しい建築がライトアップされている。その多くにLumenpulseの照明器具が採用されている。

    
図37、38 Lumenpulseの光色の統一性
左側の建物が他社製品でのライトアップ。右の建物と比較すると配光、明るさ、色温度のクオリティが統一されていない。ショールームのように分かり易い比較事例なっている。

■ジャック・カルティエ橋 / モントリオール

モントリオールのシンボルであるジャック・カルティエ橋もLumenpulseの器具でライトアップされています。交通量の多い橋なので近くで見ることができず、詳細な設置状況は分かりませんが、鉄骨で構成された美しい橋の形状を効果的にライトアップしていました。交通量の多い橋に設置する事もあり、振動耐性に優れたLumenpulseの器具が採用されたとのことです。



    
図39~41 ジャック・カルティエ橋
(照明コンセプト:Moment Factory 照明コンサルタント:Ambiances Design Productions, ATOMIC3, Éclairage Public/Ombrages, Lucion Média, Réalisations, UDO Design)
時間によって色が変化する光のデザインとなっている。

■バイオスフィア / モントリオール

バイオスフィアは1967年にモントリオールで開催されたエキスポ67のアメリカ館のパビリオンを利用した博物館であり、環境学習の為の施設でもあります。スチールパイプで構成された巨大なドームをlumenbeamやlumenfacadeを使ってライトアップしています。ドームの内側と外側を効果的にライトアップしているので、内側からのライトアップは手前のスチールパイプのフレームがシルエットに見え、外側からのライトアップはドーム全体が色に染められたように見えます。また、それらを同時に照らすことで独特の立体感を生み出しています。

    

    

    

    
図42~49 バイオスフィアのライトアップ
シャボン玉の表面のように光の表情が常に変化している。

狭角、広角の配光を組み合わせることで、色ムラやグラデーションを意図的に生み出し、巨大なシャボン玉の油膜のようなライトアップになっています。滞在は短い時間でしたが、常に緩やかに変化しているので、いつまでもぼーっと見ていられるような光です。球体という塊のような建築をとても丁寧にかつ緻密にライトアップしている良い事例だと思います。

■Lumenpulse本社 / モントリオール

最後にモントリオールにあるLumenpulse本社を少し紹介したいと思います。自社の社屋だけあってLumenpulseの製品がふんだんに使われており、最も分かり易いショールームと言えます。Lumenpulseが扱っているようなハイパワーなフルカラー照明は、器具自体も大きくなりますし、小さな部屋で点灯しても光が強すぎてその効果がわかりにくい場合が多々あります。都内の照明メーカーのショールームでもこういった器具の効果を最大限に発揮する事ができる展示空間はほとんどありません。

ですからスケールの大きい社屋のいたるところで実際に設置されている照明器具を見られるという事は設計者や照明デザイナーにとっても魅力的な空間です。しかも通常ではあまり採用しない手法を使っている(器具のサイズやコストの問題などから)のでそういったアイデアもデザインのエッセンスとして参考になります。


図50 Lumenpulse本社の外観
昼間に訪れた為夜の外観を見ることはできなかった。

    
図51、52 エントランスのピロティ空間
ピロティの軒天井にはlumenfacadeがダウンライトとして用いられている。

    
図53、54 lumenbeamを使った駐車場のポール照明


図55 外壁を照らす地中埋設タイプのlumenfacade inground


図56 敷地内の緑地スペース
この緑地スペースは今後予定されている社屋拡大のためのスペースとの事。現在も成長を続けていることが伺える。


図57 屋内用のスポットライト使ったエントランスホール(日本では取扱いなし)

    


図58~60 オフィス、会議室、食堂へ向かうスロープ
エントランスホールを抜けるとオフィス、会議室、食堂などへ向かうスロープがある。この空間はLumenpulseのコーポレートカラーである黒と黄色がアクセントになっている。ペンダントとしてlumenbeamやlumenfacadeを用いているところが面白い。大型の器具でもこれくらいの空間であれば建築の仕上げ色と器具の色を合わせれば器具の存在感はそれほど感じない。

    


図61~63 整頓された美しいオフィス
良い製品は良い空間から生まれると思う。Lumenpulseのオフィスは美しく整頓された空間であった。またオフィスの照明はLumenpulseの照明ではないが、Lumenpulse のグルー会社であるFLUXWERXというメーカーのライン照明を採用している。透過性のある導光版を用いるなど、これまでに見た事のないような洗練されたデザインのオフィス照明である。日本での取り扱いが期待される。

    
図64、65 Lumenpulseの工場の様子(写真提供:Lumenjapan)
Lumenpulseの工場は24時間稼働しており、ここから世界中に照明器具が発送されていく。オフィス同様、工場とは思えないほど整頓され、整然とした空間となっている。技術者のスキルや作業状況なども常にデータ管理されており、技術が未熟と判断されると、基本の復習や技術の維持、向上のためのトレーニングが課されるなどのシステムもある。この場所で器具製作の他にも光学性能の試験、防水性の試験、耐久性の試験などが行われ、徹底した管理のもと照明器具が生産されている。

■まとめ

冒頭でも少し触れましたがフルカラー照明というと、どのメーカーも似たようなイメージでそのメーカーの特色をつかんだり、差別化したりすることが難しいものです。Lumenpulseの器具についてもこれまではフルカラー照明という大きなくくりでしか見ていませんでした。今回設置事例やLED照明の実機、そして工場などを拝見し、その特徴などが見えてきました。その特徴を整理すると下記のような事が言えると思います。

  • 他社よりもより建築照明に特化した思想で照明器具を制作している。(創業者が照明デザイナー)
  • 特に屋外照明の分野が強く、防水性能(IP)だけでなく、衝撃(IK)や振動にも強い。
  • 配光やカラー、色温度を自由にカスタマイズが可能。
  • 10°以下の超狭角配光の選択肢がある。

今回北米エリアで見た設置事例の多くはカラーライティングではなく、電球色の単色でライトアップされていました。世界的に見ても、カラーライティングを用いた分かり易い演出照明よりも、DMXなどを用いた高度な照明制御や自由にカスタマイズできる配光・色温度を重視した器具を用いつつ、飽きのこない電球色のライトアップをサラっとやってしまうというスタイルが好まれているように感じました。そういったライトアップを考える際にLumenpulseの製品がぴったりとハマるのではないかと思います。

Lumenpulseの器具は一般的な投光器やライン照明に使用される器具に比べると価格的に割高ではありますが、世界で認められている耐久性と数々のファサードライティングの実績、そして、一般の照明器具では難しい器具1台からコントロールできる高度な照明制御が可能であることを考慮すると、プロジェクトによってはコストパフォーマンスが高い照明器具と言えるでしょう。単色のLEDライン照明では、国内でもファサードライティングに適したウォッシャー配光を持つ器具は豊富にあります。こういった器具と差別化を図りどのようにアピールしていくかが今後の課題ではないかと思います。

現時点ではLumenpulseの認知度は日本国内においてそれほど高くないと思います。しかし、北米エリアでの数々の実績には本当に驚かされました。その実績の多さが器具の性能と信頼性を物語っていると感じます。その信頼性の高い照明器具は日本の建築照明でも十分に通用すると思います。今回、様々な設置事例や本社工場を見せて頂いたことで、フルカラーを前面に押し出した演出性の高い照明器具を作りたいのではなく、どんな要望にも対応できる万能の建築照明(特に屋外空間において)を作ろうとしているという思想をはっきりと感じる事ができました。今後日本での実績が増えていくことを期待します。

2. DNライティング展示会の様子

昨年の2018年11月13~15日、20~21日という日程でDNライティングの展示会が五反田のショールームSTUDIO E139で開催されました。DNライティングと言えばこれまでも当コラムで何度も紹介してきた間接照明に特化した専業メーカーで、ライン照明が主力商品です。

しかしながら、今回の展示会で最も存在感を放っていたのは什器、ショーケース向けに開発されたミニレールスポットです。その名の通り、手のひらサイズのコンパクトなスポットライトです。これまでこの分野の照明はFEELUXやTOKISTARなどが取り扱っていますが、いまだにライバル製品が少ない未開拓のジャンルと言えます。既に海外では超小型のスポットライトを、押し出し材で作った極細の照明ボックスにマグネットで取り付け、建築照明として用いる照明システムが数多く存在しています。(前回のコラム参照

    

    

    
図66~71 DNライティングの新製品「ミニレールスポット」の展示 灯具色は白、黒の2色展開となっている。

個人的に超小型スポットライトには興味を持っていましたので、この器具の登場はうれしい限りです。このような器具の多くはそのコンパクトさゆえ、一般的なライティングレールに取り付けることができず、専用の取り付けレールを用いる事になります。そのことがデメリットとして捉えられる事がありましたが、レール自体も照明器具として考えれば特に気にならない問題だと思います。

このコンパクトさでスポットライトの首が90°振れる点も良く、デザインもクセのないシンプルな形状で非常に好感が持てます。バリエーションは1wタイプのR-EX1、2wタイプのR-EX2、2wのショートタイプのR-EX3の3タイプで、配光は何れも20°配光のみの展開となっています。調光はできませんが、このクラスの明るさであれば調光する必要はないと思いますので問題ありません。1灯8,000円~9,000円という価格設定も非常に良いと思います。

基本的には什器用やショーケース用の照明ではありますが、この器具を見た建築家や照明デザイナーの多くは一般照明での使用の可能性を考えた人が多いのではないかと思います。その場合、この器具はマグネットによる設置であるため、地震などによる器具の落下の問題が懸念されるため、その点には特に注意が必要です。

こういった器具をDNライティングが販売するとなると、このシステムに組み合わせるライン照明が欲しくなってしまうのではないでしょうか?


図72 昨年(2018年)フランクフルトで開催されたLight + Building 2018の展示
オーストリアの照明メーカー、XALのブースで展示されていた極細のスリット照明システム。コンパクトスポットライトとライン照明を組み合わせて使用する。


図73 ミニレールスポットとライン照明を組み合わせた展示(参考出品)
参考出品ではあるが、ライン照明を組み合わせた展示も見られた。今後の展開に期待したい。

国内ではそのような照明システムはそれほど多くありませんので、是非検討をお願いしたいと思います。一般照明での使用も視野に入れるとなるとミニレールスポットは3wクラスも欲しい所です。

もう一つ注目したいのが昨年発売されたプロファイルシステムです。アルミの押し出し材の中にLEDテープライトを仕込み、押し出し材(アルミプロファイル)に設けられたスリットに乳白アクリルなどのオプションをはめ込み照明器具化するというシステムです。海外には多い照明システムですが国内ではあまり見かけない器具です。アルミプロファイルに照明を入れたことで、それ自体が照明BOXの役割を果たすので、建築側で照明ボックスや乳白アクリルを設ける必要がなく、施工のコストや手間を大幅に削減する事ができます。しかしながら、器具をスペックする際に必要なパーツや条件が多く、検討が難しく、現場への指示も丁寧に行わなければならないこともあり、採用をためらってしまうのも事実です。

    
図74、75 新しくなったプロファイルシステム

そういった多少のデメリットはありますが、それを乗り越えることで得られるメリットは非常に大きいと思います。実際に私も造作家具に組み込む建築化照明としてこの器具を採用した経験がありますが、ミリ単位で調整が可能な照明器具は、家具の中にピタリと納まり、これまでになり美しい仕上がりとなりました。現場の施工者の意見を伺うと、確かに器具の仕様は複雑ではあるが、通常の建築化照明と比較すると圧倒的に施工性が良いという評価をしていました。また一旦システムを理解すれば必要なパーツの選定もそれほど難しくありません。


図76 造作家具に設置したプロファイル照明
隙間なく設置された照明の納まりが美しい。家具の加工は20mm×20mmのスリットを設けただけである。

このプロファイルシステムがさらにバージョンアップしていました。コーナー処理など、連結が必要な際にテープライトのコネクタをプロファイル内に収納できる、背の高い(40mm)の深型タイプが登場しました。これにより、連結時も配線スペースの検討の必要がなくなります。

    


図77~79 連結可能な深型タイプのプロファイル
L字のコーナータイプのプロファイルと組み合わせることができる。

また、この器具が最も威力を発揮するのはパウダールームなどのミラー照明ではないかと思います。鏡の照明はこれまで様々な手法が試されてきたと思いますが、いずれの建築化照明も非常に手間とコストがかかります。このプロファイルシステムを用いれば鏡にぴったりと収まる照明を実現できます。しかもテープライトがベースとなっているので、顔を照らす照明としてはちょうど良い明るさとなる事も魅力です。と思っていたらミラー照明の展示がありました。


図80 ミラー照明としてプロファイルシステムを用いた展示

今後、先に紹介したミニレールスポットとプロファイルシステムを組み合わせて天井に埋め込むようなシステムができると建築照明としての幅がより広がると思います。

上記の2機種に比べると少し地味なリニューアルですが、注目の製品がありました。シンプルなスクエアタイプのLEDライン照明「トリムライン(TRE2)」に新しく500タイプが追加されました。DNライティングのライン照明と言えば500からのサイズ展開が主流ですが、トリムラインはスリムなボディのため500タイプでは調光用電源がボディに収まらないなどの理由で850からのサイズ展開となっていました。


図81 トリムライン(TRE2)に500タイプが加わった


図82 トリムラインのボディは指定色塗装が可能
直付け照明として用いる事も多いトリムラインは建築の仕上げ色とボディを同色にしたいケースが多い。

クセのないデザインであるため、直付け照明としても使用する事もでき、十分な明るさもあるため、万能のライン照明として私自身も良く使う器具ですが、短いサイズがないことで場所によっては他の器具を選択せざるを得ないケースがあったことも事実です。これでそういった問題が解消され、より万能感が増したように感じます。

3. dysonの新プロダクト「dyson Lightcycle」

最後に、dyson(以下ダイソン)のタスクライト「dyson Lightcycle」を紹介したいと思います。掃除機や羽のない扇風機のイメージが強いダイソンですが、実は数年前から照明器具も販売しています。今回紹介するタスクライトは以前より販売されていたモデルをリニューアルした製品になります。


図83 タスクライト「dyson Lightcycle」

ダイソンが作る製品というと家電という印象がありますが、これまでに発表している照明はタスクライトの他にオフィス向けのペンダント照明もあり、そのコンセプトは家電という枠を超え、建築照明と言って良いほどに配光や明るさ、演色性、色温度など、プロダクトだけではない光の質にこだわった照明器具を制作しています。特に照明メーカーの方たちにもダイソンのような企業がどのように光にアプローチしているか、なぜ光にこだわるのか、注目して頂きたいと思います。

dyson Lightcycleはクロスアーム型のタスクライトで、高さやアームの配置を自由に調整する事が可能です。この点は従来製品と同様です。実際に触ってみると分かりますが、動きのスムーズさ、止めたいところでピタリと止まる感覚、このあたりはさすがだなと思います。

    


図84~86 スムーズなアームの動き
アームは180度反転して取り付けることもできるため、例えばベッドサイドの照明では左右どちらの設置にも対応可能。

新しいdyson Lightcycleの最も注目すべき点は太陽光とリンクした人に寄り添う光です。専用のスマホアプリ「dyson Link」と組み合わせることで、その場所の太陽光、自然光の明るさや色温度とリンクした最適な光を提供します。世界中どこでも対応が可能です。


図87 専用のスマホアプリ「dyson Link」でタスクライトをコントロールする。

また、タスクライトにはセンサーが組み込まれており、人感センサーとしての役割はもちろん、一度設定した明るさ(照度)でアームの高さを変えると、一定の照度を保つように自動的に光の強さを調整する事もできます。灯体部分に明るさや色温度を自由に変えられる突起があり、その部分を指でなぞると光が変化します。さらにスマホアプリでも色温度、照度を自由に変えることも可能です。また学習や作業の効率がより高まるよう演色性もRa90の光源を採用しているとのことです。



    
図88~90 アプリを使って色温度を変化させている様子



    

    
図91~95 調光や調色ができる突起
ライン状の突起を指でなぞると明るさや色温度が変化する。

    
図96、97 深い位置に設置された発光面
不快なグレアを感じさせないように発光面を深い位置に設けている。灯具部分だけ見れば広角のグレアレスダウンライトのように見える。

5~6年前あたりからだと思いますが、照明業界では人間の生体リズム(サーカディアンリズム)と太陽光の明るさ、色温度変化に着目してサーカディアンライティングという言葉が注目されるようになり、一日の中で色温度や明るさを変化させる照明手法が導入される機会が増えてきました。その影響が大きいのだと思いますが、この数年の間に調光調色が可能な照明器具が急速に普及し、価格も下がりつつあります。

現在ではそこからさらに一歩進み生体リズムだけでなく、個人のライフスタイルや趣味嗜好に合わせたもっとパーソナルな人に寄り添う光「ヒューマンセントリックライティング」というキーワードを耳にする機会が増えました。このdyson Lightcycleはまさにヒューマンセントリックライティングを実践している照明器具だと思います。家電の域を超えたdyson Lightcycleをぜひ体験してほしいと思います。

光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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