【セミナーレポート】GCIセミナー/ユーザーの立場からの標準化

 3月3日GCI研究会による活動内容の報告として、セミナーが開催された。GCIは1999年10月に設立された組織で、消費財の製造業・流通業が集まって標準化の推進を行っている。現在は、ウォルマートのCEOリースコット氏と、ユニリーバのCEOアンソニー・バーグマン氏が共同会長を努めている。 今年1月には、米国のUCCと欧州EANの標準化組織が正式に一つの組織になってGS1として新しいスタートを切った。これに先駆けてUCCとEANでは2002年からはGSMP(グローバル標準管理プロセス)を通じて国際標準の開発が行われ始めている。GCIはこのGSMPに対してユーザーニーズの提言と、出来上がった標準の検証、普及を行うという形でGS1と両輪となって標準化を進めている。

 GCI研究会はこういった世界の動きを受けて2002年4月に、酒・加工食品・日用雑貨・化粧品業界の製配販の企業が自主的に集まって、国際標準についての研究を行う組織として設立された。現在69社が参加しており、製配販に加えてITベンダーが参加している。

 現在研究会の代表は、イオン常務取締役縣厚伸氏、味の素理事ロジスティクス本部物流企画部長鎌田利弘氏の両名である。

 現在、XML‐EDI、電子タグ、スコアカード、マスタデータ同期化(GDS)の4つのワーキング・グループが活動を行っている。

 GCI研究会は、設立以来毎年RETAILTECH JAPANにて、活動紹介を行っている。今年のセミナーではGCI研究会の代表である味の素の鎌田氏、各ワーキンググループを代表してサンスター営業本部営業企画室マネージャー小林洋氏、国分情報システム部物流システム担当羽鳥友治氏、サッポロビールサプライチェーンマネジメント部副課長島崎圭介氏、三井物産MBK流通パートナーズ営業本部ロジスティクス第二事業部シニアプランナー永井浩一氏の5名による講演が行われた。



 
写真左:鎌田利弘氏 写真右:小林洋氏


 
写真左:羽鳥友治氏 写真右:島崎圭介氏



永井浩一氏


GCI研究会の役割と方向


(味の素鎌田氏の講演より)

 GCI研究会はグローバル標準についての勉強会として始められたが、その趣旨は国際標準を単に受け入れるのではなく、日本で実際に使えるのか、使えないとしたらどう修正すれば良いかまで含めて議論を行ってきた。その活動は、国際標準に対しても日本のニーズを反映させていくことまでを考えている。

 業界に様々な研究会があるがGCI研究会は製配販の三層で集まっており、現在69社の会員が積極的に参加しており幅の広い組織となった。製配販三層での標準化で考えれば、食品、日雑といった業界単位ではなく広い範囲で標準化をする必要があるという認識で活動しており、現実性を志向した研究会である。

 当初はGCIの英文の資料を理解することから始まった。しかし、昨年は実際にRF-ID活用実験などの活動も行っている。

 2004年度は、XML-EDI、マスタデータ同期化、電子タグ、スコアカードのテーマに取り組みながら、実際に日本での意義に踏み込んで深堀りをした検討を行った。その結果として、実際に研究したことを実践してみたいという意欲が会員から出てきた。

 そのため、来年度以降は「調査研究主体の活動」から「実用化を目指した標準普及推進組織」として、さらに踏み出そうという議論が進んでおり、すでに会員の賛同は得られており、3月末の総会で正式承認を経て、新しい体制に生まれ変わるとのことである。

 来年のRETAILTECH JAPANでの発表が楽しみである。


インターネット活用型次世代電子商取引について


 ITの世界ではインターネットや次世代というと曖昧であり、ややもするとキャンペーン文句に終わってしまう恐れがあるが、ユーザーの集まりであるGCI研究会では明確な定義を持って活動が行われている。

 GCI研究会におけるインターネット活用型次世代電子商取引とは、「大容量のデータを、高速で、安価に、通信できることで、グローバルに、業界を超えた、新しいビジネスプロセスでの企業間協働を行えること」である。

 2003年度の活動の結果として3つの取組みテーマが整理された。それらは、「メッセージ種、フォーマットの標準化」「インターネット活用」「ビジネスプロセスの共有化」である。

 これらを受けて2004年度は「受発注オンライン100%」というテーマを掲げて議論を行ってきた。その中でユーザー企業のニーズなどに関する整理を行いながら、XML-EDIに移行していくことのビジネス上のメリットなどを明確にし、今後XML-EDIに移行していくために必要なアクションの整理を行った。

 流通業界では未だに従来のJCA手順による受発注が主流であり、基幹系でレガシーシステムを抱えている。一方では、本格的なSCMなどを行うためには、タイムリーな情報共有は欠かせないため、XML-EDIの実現は流通業のIT活用の上で鍵となるテーマであり、具体的なロードマップは業界にとって極めて有意義なものと考えられる。


電子タグの活用について


 今年の展示・セミナーにおいて話題の柱の一つが電子タグである。GCIは設立当初からMITのAuto-IDセンター(現Auto-IDラボ)と協力して取り組んでいる。メトロ、テスコなど欧州のEPC推進企業はGCIでも積極的な役割を占めている。

 日本のGCI研究会では、中心的なテーマであり現在56社が参加している。電子タグについての現在の課題として4点が紹介された。1)欧米ではユーザー側が中心になって標準化・普及を進めている点が日本の環境とは違っている。2)ユーザーからみた現状の課題として、タグのコストが高い。3)海外では一般的に使われている国際標準の電波帯(UHF)が利用できない。4)利用技術や運用体系が確立されていないため、積極導入に踏み切れない、ということであった。

 こういった課題意識の上で、無線タグに関して多方面にわたる自主勉強会と、パイロットとビジネスモデルの検討が行われた。2003年度には卸売業の物流センターで電子タグの実験を行っており、次なるパイロットの課題の洗い出しを行った。一方では、ビジネス上のメリットを算定するためのガイドラインの策定に取り組んだ。

 無線タグは大きな可能性を秘めているが、まだまだ技術面、利用方法など未知な部分も多く、様々な分野の人々が協力する必要が感じられる。製配販三層とITベンダーというユニークな集まりであるGCI研だからこそ解決できる課題ではないかと思われる。

 このワーキンググループの副座長である羽鳥氏(国分)は「一人では悩まずに、皆で解決を。ぜひ参加を」と呼びかけている。


ECRスコアカードの活用について


 現在の流通業界における非効率を生み出す原因の一つが個別対応であり、この個別対応コストが潜在コストとして消費者へ転嫁されている。そこで共通化によって効率化を実現するためのアプローチとして「協働」の重要性が高まっている。欧米での協働の進め方は協働をモデル化し、現状分析、ベンチマーク化、課題抽出と優先順位付けというステップで進めており、そのためにスコアカードというツールを活用している。このスコアカードはKPIとECRスコアカードという2種類のツールが使われている。

 KPIとはECRを推進するための業界共通の数値評価であり、納品充足率や在庫日数などが含まれている。ECRスコアカードとは取組評価表である。この二つは、血液権結果と問診表のようなものであると紹介している。

 GCI研究会ではこれまでにECRスコアカードの翻訳版作成、スコアリングの結果の評価ツールの開発を行ってきた。本年度はKPIの日本語化と、ベンチマークデータ作成、スコアリングのリード役であるファシリテータ育成などを目的にGCI会員企業に対してスコアリング実証を行った。結果31社が参加した。

 今後の課題としては、実践を通じて時系列での比較や、取引企業との機会発見の活用を行い、実際にどんな課題が見えてくるかの実例の収集が鍵となっている。


商品情報の同期化について


 GDS(グローバルデータ同期化)とは、取引企業間で商品情報の共有を電子化することで、正確で、タイムリーで、効率的な情報交換を実現することである。現在、標準化組織のGS1とGCIが共同で進めているプロジェクトである。手作業ベースでの商品情報提供が行われており、そのハンドリングコスト、不正確なデータによる作業エラーなどは世界共通の問題となっており、日本でも同じ課題が存在している。

 しかし、GDSは単なる商品マスタ同期化ではなく、インフラとなる情報基盤の標準化であり、ビジネスプロセスの見直しである。「一緒に議論する中で真のGDSが見えてくる」と座長の永井氏(三井物産)は語っている。

 GCI研究会では経済産業省の流通SCM基盤整備事業と協力して、マスタ同期化の実現に向けた取り組みを行っている。そういったこともあり、現在このワーキンググループには64社が参加して推進している。この中でGCI研究会としては、国際標準と日本で実際に使われているマスタ項目の整理、グローバル標準モデルの技術内容の検証、商品情報の公開制御についての検討を行いながら、実用化に向けた詰めを行っている。


ユーザー間の本格的な議論による標準の推進


 最後に講演を行った三井物産永井氏の発言はGCI研究会の考え方を象徴しているようであった。永井氏は、昨年はGCI研究会有志メンバーによる製配販マスタ同期化実証実験のリーダーとして自ら業界協働の推進者として活躍している。

 「全体最適という考え方が業界とか日本といった枠からグローバルという枠で考える必要性が現実のものとなっている。また、システムベンダーに標準化からユーザー参加型による標準化に変化している。ユーザー間での、腹を割った話し合いが起こるようになってきた。

 しかし、グローバル信奉者ではない。標準をゼロから作るのでなく活用できるものを使おうという考えと、取引のグローバル化といった将来までを含めて最適化を考えているに過ぎない。」

 規制緩和などの中ではグローバルにハーモナイゼーションが進められている。EDIの標準については、日本の業界では長年その必要性が認識されながら、実現できていない課題である。電子タグの普及なども考えると、このGCI研究会の活動は流通業でのIT活用を進める上で極めて重要だと言える。


 (有明)

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