a&s JAPAN「SECURITY SHOW 2011」会場レポート

総合展として有機的な連繋を実現したSECURITY SHOW 2011

 第19回セキュリティ・安全管理総合展「SECURITY SHOW 2011」は、3月8日(火)から3月11日(金)までの4日間、昨年までの東京ビッグサイト・西館から東館に会場を移して開催された。流通小売業を対象とした「リテールテックJAPAN」やICカード・ICタグ関連の「IC CARD WORLD」と同一会場内になったこともあり、来場者の層が昨年とは変化しているのが感じられた。

(a&s JAPAN)

最新情報の発信

 SECURITY SHOW 2011では、ブースの大半を占めるセキュリティと安全管理関連製品やサービス全般を対象とした「総合セキュリティゾーン」の一角に、人やモノの位置を管理できるシステム提案を行う「位置情報システムゾーン」を新設した。そこでは、RFIDやZigBee、GPS、超音波などの無線ネットワーク技術や機器を利用する様々な位置情報管理システムの最新情報が紹介されていた。

 また、展示ゾーンが「リテールテックJAPAN」と「IC CARD WORLD」と隣接していたことが奏功し、エンドユーザーの来場が多かったことで、幅広い分野の来場者に対してアピールができたと多くの出展者は語っていた。

 実際に今回は、東館1ホールから3ホールで開催された3つの展示会が、それぞれカーペットの色などで区分されてはいるものの、違和感のないレイアウトになっていたため、ごく自然に目的とは別の展示も見て回ることができたと思われる。

ストレスフリー

 三菱電機は、タグを用いてハンズフリーで入退管理ができるシステムを、照明・省エネ制御のシステム(参考出品)と同時に出展していた。ハンズフリータグを携帯するだけで、タッチや操作をすることなく認証して通行ができるため、両手がふさがっていても使えることを訴えたシステムだ。しかも、そのタグを利用した照明・省エネ制御は、入室者の位置を把握して、効率的にオフィス照明を制御できるもので、三菱電機本社でも実証実験しているとのこと。

 パナソニックの提案では、オフィスでの使用環境とストレスフリーを考慮して、会社への入場はカードを使い、社内はアクティブタイプのタグでフリーな環境を作り出すという形を紹介していた。

 ほかに、携帯電話で入場手続きができるシステム(クマヒラ)や、静電容量の変化を検知して人の出入りを感知できる非接触のマットセンサ(ユタカ電気)など、ストレスフリーでセキュリティレベルを保ちながら、オフィスシーンの快適性を向上させるさまざまな提案が多く見受けられた。

HD/フルHDカメラ

 地上デジタルへの完全移行となる2011年にふさわしく、監視カメラの世界でもHD/フルHD映像が一般化し始めている。その中で、多くの来場者を集めていたのが、ソニービジネスソリューションのブースだった。開催直前に発表した新製品を含めて、1080PのフルHDから720PのHD映像までを提供する製品ラインアップが出揃い、様々なソリューションに対応できる全製品を展示していた。

 また、開催日初日に新製品を発表したパナソニックのブースでは、HD対応製品とグループ各社の高い提案力による様々なソリューションを紹介していた。その一つとして、新製品とともに発表したクラウド型映像監視サービス「みえますねっとPRO」を参考出品していた。これは、2002年に開始した「みえますねっとサービス」を、クラウド型サービスを利用することで、これまでよりも「簡単、スピーディ、ローコスト」なサービス提供を実現するものだ。本サービスは2011年10月からのサービス開始を予定している。

 さらに、キヤノンマーケティングジャパンのブースでは、5月より順次発売するメガピクセル対応のネットワークカメラ4機種とネットワークビデオレコーディングソフトウエアを展示していた。特にブースではHD路線を強調する展示を行い、来場者の注目を集めていた。

高解像度カメラ

 高解像度カメラでは、HD CCTVとHD-SDIに代表される2メガピクセルクラスのカメラが注目を集めていた。代表的な製品は、エヴァーフォーカスジャパンのHD CCTVや店舗プランニングのHD-SDIで、いずれも既存のアナログカメラとレコーダを入れ替えるだけで、フルHDの高画質映像が得られる。例えば、既存のアナログシステムを、このハイブリッド型レコーダに入れ替えることで必要な箇所だけを高解像度タイプのカメラに変更できる。

エヴァーフォーカスジャパン製HD CCTVカメラとハイブリッド型レコーダ
既存カメラをHD CCTVカメラやIPカメラに交換するだけで高画質な映像を再現

 特に、店舗プランニングのHD-SDIカメラは、高画質というだけではなく、アナログカメラについているワイドダイナミックレンジ機能や暗視カメラを使う必要がないほどに低照度の高感度機能なども併せ持たせたことで、IPカメラより使いやすく画質も精細という特徴を持っている。

店舗プランニングのHD-SDIカメラ
同軸ケーブルで映像信号を伝送でき、高画質で既存のシステムとの共存がしやすいCNB社製HD-SDIカメラ

 エヴァーフォーカスジャパンではカメラを既に製品化しており、アナログカメラとHDカメラの両方を接続できるハイブリッド型のレコーダも出展していた。例えば、既存のアナログシステムをこのハイブリッド型レコーダに入れ替えることで、必要な箇所だけを高解像度タイプのカメラに変更できるという。

 また、シャープマニュファクチャリングシステムも、5メガピクセル高解像度カメラと検知機能付きメガピクセル・カメラを発表していた。これまでにも様々なユニークな製品を発表してきた同社だが、今回は5メガピクセル・カメラを日本企業の先陣を切って展示していた。

 監視映像市場での高解像度カメラの競争は、ますます熾烈になることが予想され、しかも競争相手は世界市場で戦い抜いてきている強豪ぞろいだ。さらに、カメラ単体でのビジネス展開では容易に市場開拓ができないため、各社の今後の市場開拓戦略にも注目すべきだろう。

暗視野カメラ

 今年も例年同様数多くのセキュリティカメラが出展されており、超高解像度化と高機能化そして暗視野対応のカメラが目を惹いた。特に、低照度でも高感度・高精細で撮影できる暗視野カメラは、星の光や月の光程度でも十分に精細な画像が撮影できるカメラに注目が集まっていたようだ。極低照度の暗室でも使えるカメラは、赤外線LED照射を利用しているが、画像がモノクロでなくカラーで表示でき立体感を出せる点に注目していた。

 現在は、ハードウエアのみの動作でソフトウエアでの補正はしていないので、今後補正用のソフトウエアが完成すれば、さらに鮮明な画像が得られることが期待できる。
「超高感度カメラシステム スターライトアイ」を提案する日立製作所は、星明かりでも撮影できるタイプと霧や靄もくっきり除去できる霞除去機能搭載の高感度カメラを展示していた。1000~5000倍という高感度が特長で、0.0006ルクスの被写体照度でもカラー動画の撮影ができるので、ほとんど真っ暗な中でも人の動き程度なら追随できる。

 さらに、特殊用途に向けて開発した遠赤外線カメラを紹介していたのがタムロンだ。通常、セキュリティの世界で使用される赤外線のほとんどは可視光に近く、800~900nmほどの波長で、反射光を感知している。しかし、遠赤外線は8000~14000nm(8~14ミクロン)と波長が非常に長く、放射された熱エネルギーを検知している点が決定的な違いになる。しかも、100m前後しか機能しない近赤外線と違って、数km先の熱エネルギーを捉えることができるため、広大な敷地の監視用や森林火災にかかわる温度上昇の観測用としても活用できる道があるという。今後の幅広い活用が楽しみな製品だ。

全方位カメラ

 メガピクセル・カメラの中で、ここ数年注目を集めてきているのが全方位カメラである。日本では2008年にMOBOTIXJAPANが発売開始したQ22がその先駆けと言われているが、その後海外企業とりわけアジア系企業が追随して製品を発表している。その中で、隣接する「リテールテックJAPAN」ではGeoVision社がFISHEYEカメラの名称で展示していた。

GeoVision製全方位カメラ
GV-IPCAM H.264 4M Fisheyeは、H.264コーデック、QXGA、PoEなどに対応した4Mピクセルのネットワークカメラ

 タムロンは、昨年参考出品していた魚眼レンズ搭載全方位カメラを商品化した新製品を展示していた。同カメラは1/3.8 CMOSセンサ搭載の1.3メガピクセル・カメラで、さらにF1.7と明るいレンズを搭載しているため、鮮明な映像を提供することができるとしていた。

タムロン全方位カメラ
1/3.8 CMOSセンサ搭載の1.3メガピクセル・カメラで、F1.7と明るいレンズを搭載しているため、鮮明な映像を提供することができる

 そのほかにも、レンズとソフトウエアにより全方位映像を提供する製品もあり、今後ますます市場拡大が期待できる製品の一つといえる。

ハイブリッド型レコーダ

 ハイブリッド型DVRが多数出展されていたのも今年の傾向の一つだった。一気にIPシステムに移行するのではなく、既存システムも利用した上で徐々にIP化して行こうという現実に即した対応だ。これは、既存システムという資産の有効活用だけではなく、円滑なIP化を達成させるためには必要不可欠な考え方で、その具現化といえる。つまり、ハイブリッド型レコーダはIPカメラとアナログカメラを同時に接続して使うことができるため、現在のアナログカメラはそのままにして、高精細な画像で見たい箇所をIPカメラに変更できる点が利点となる。今後、IP化を検討している場合には、現有資産の活用と高解像度の実現を享受できる。

 特に、既設のシステムに組み込める高解像度カメラが出現したことで、ハイブリッド型レコーダの有用性は高まることになる。大規模なデータを効率よく録画するには、すべてを中央に伝送するのではなく、各ローカルサイトにデータ保存する必要性が生じるため、ネットワーク・アクセス・サーバとしてのNVR(ネットワーク・ビデオレコーダ)が求められることになる。しかし、カメラの設置台数が増え、高解像度になっていくと、レコーダにも大容量が要求されてくる。

 また、同じハイブリッド型レコーダで「小型」を強く訴求していたのが、アバーメディア・インフォメーションだ。コンパクトサイズながら2Tバイトのハードディスクを搭載しており、IPカメラとアナログカメラを1台に接続して使うことができるため、現在のアナログカメラをそのままに、高精細な画像で見たい箇所をIPカメラに変更できる点がメリットになっている。今後、IP化を検討している場合には、資産の無駄遣いを軽減できるという特長を発揮することができる。

アバーメディア・インフォメーション製小型DVR
2TバイトHDDを搭載し、IPカメラとアナログカメラそれぞれ1台ずつを接続

 しかし、カメラの設置台数が増え、高解像度になっていくと、レコーダにも大容量が要求されてくる。その点の解決策として紹介されていたのがNSSの顧客の設置環境に応えたNVRのカスタムシステムだ。カメラの台数やパフォーマンスの変化に対して、NVR側でその都度対応できるようになっており、設置台数の増加に合わせて自由度の高い対応が可能になるという。その結果、設置システムの構成と今後の拡張性を考慮した上で、機器およびシステムの選択できる範囲が広まった。

NSSのNVR
カメラの台数やパフォーマンスの変化に対して、NVR側でその都度対応でき、設置台増加に合わせて自由度の高い対応が可能

 そのほか、DYNACOLORはネットワーク・アクセス・サーバとしてNVR(ネットワークビデオレコーダ)を配置し、中央監視室で映像を監視し再生することができるシステムを提案していた。そして、今回の出展ではIPカメラはもちろんのこと、NASベースのNVRの紹介にも注力していた。

DYNACOLOR製ハイブリッドDVR
ネットワーク・アクセス・サーバとしてNVRを配置し、中央監視室で映像を再生

注目を集めた製品

 広範な用途とユーザーの様々な要求に応える独自の製品も出展されていた。

 まず、無線カメラと耐衝撃カメラを紹介していたBrickcom社だ。高画質の無線タイプは、電源さえあればどこにでも設置できるだけではなく、ケーブル敷設の必要がないため、予算削減にもつながる。しかも、耐衝撃カメラなら不審者による破壊も防止できるため、防犯費用の低減にも寄与するという。

Brickcom製無線カメラ(左)
電源さえ確保することができれば、場所を選ばずに設置することができ、設置費用を削減することができる

 次に、戸外での街頭防犯カメラを提案していたのがケービデバイスだ。高所に取り付けたカメラの映像を取得するのにWi-Fiを使ったシステムだが、無線で随時データを送るのではなくカメラ映像を保存したレコーダから映像データを転送するために利用している。つまり、ダウンロードする要領で映像が取得できる。しかも、産業用SSDという飛行機のフライトレコーダにも採用されている信頼性の高い駆動装置は、ヒーター/クーラーを内蔵しているので、カメラシステム自体の安全性は万全だという。

ケービデバイス街頭防犯カメラシステム
映像取得用にWi-Fiを採用したシステムで、カメラ映像を保存したレコーダから映像データを転送する

 そして、これまでのSECURITY SHOWではほとんど見かけることのなかった本格的なネットワーク用サーバのベンダであるPIVOT3だ。HD/フルHD映像が普及するのに伴い、映像データだけでなく、その映像記録用ストレージの容量もまた増大化してきている。それに対するソリューションとして、様々なVMSをインストールしメガピクセル・カメラを接続してデモを実演していた。

PIVOT3製サーバ
完全に管理された外部バックアップサービスによるデータ・プロテクション・ソリューションを提供

まとめ

 このように、「第19回セキュリティ・安全管理総合展 SECURITY SHOW 2011」は、これまで以上に来場者側に近い立場からの提案が数多く見ることができ、数多くの出展社が具体的な商談の機会を持つことができたと高い評価をしていた。

 また、高機能化とともに様々な利用環境に対応することができるセキュリティ機器およびシステムそしてサービスの出現により、これからの用途拡大と市場伸張が期待できるだろう。