SECURITY SHOW 2010会場レポート<第1回>
統合・連係管理で、安心と利便性を両立させたセキュリティ提案
3月9日(火)から3月12日(金)の4日間、東京ビッグサイトで開催された第18回セキュリティ・安全管理総合展「SECURITY SHOW 2010」は、従来よりも一歩進んださまざまなセキュリティ提案が紹介される場となった。防犯や安全対策だけの利用にとどまらず、システムを利用した新しい分野への活用提案や、モバイル環境でのセキュリティ提案、統合管理による利便性の向上など、一段と具体化された提案は、より快適な安全性確保を身近なものに感じさせてくれるものだった。
会場レポートとして、今回と次回の2回にわたりSECURITY SHOW 2010のトピックを紹介する。
(ライター:西山 恵造)
ケータイを利用したセキュリティが続々登場
今回のSECURITY SHOWでは、携帯電話の活用が提案されていたので、まずそれを紹介しよう。
セキュリティカメラの映像を、携帯電話で受信しようという考えは従来もあったが、今回はより具体的な提案として紹介されていた。
そのひとつNTTコミュニケーションズでは、DoCoMoの携帯電話を利用して画像転送を可能にしていた。携帯電話のテレビ電話機能を利用したもので、防犯管理のほか店舗状況や災害状況の把握などとして簡単に利用できる反面、画像保存はできないが、迅速な第一報を入手する手段としての利用が望めそうだ。
また、セキュリティハウス・センターでは、携帯電話で現場のカメラコントロールを可能にするシステムが紹介されていた。パソコンでリモート操作するのと同様に、携帯電話のテンキーで、パンチルトだけではなく、ズームの制御をすることもできる。しかも、携帯電話側から閲覧するだけではなく、異常があった場合だけにデータを転送させることもできるという。
セキュリティハウス・センターの携帯電話利用システム
いずれのシステムもDoCoMoとの提携で行っているということで、スマートフォンの利用はできないとしており、次のステップも明らかにはしていないが、将来的にはスマートフォンを利用して、さらなる高機能が望めそうだ。
一方、無線LANを受信できる携帯電話を利用して、テレビドアホンの役目を持たせていたのが、アイホンだ。無線LAN環境下なら、室内のどこにいてもインターホンに応答できるので、セキュリティのほかに、高齢者住宅や障害者住宅での活用も見込めるという。
モバイルにも広がりを見せるセキュリティカメラ
携帯電話の活用が広がってきたのと歩調を合わせるように、カメラのモバイル用途が提案されていたのも今回の特徴ではないだろうか。
セコムが提案していた「無線画像伝送システム」は、テレビ電話機能を使って、屋外の画像を確認することができるシステムだ。端末が複数ある場合は、テレビ電話ではなく、ネットワークによる監視もできるシステムになっている。
このシステムの最大の特長は、インターネットが不要ということだろう。高齢者などから、離れた場所の状況を知りたいというニーズは強くあったものの、操作の難しさが障壁になっていたという。今回提案のシステムは、カメラとレコーダーが有線でつながっており、カメラ撮影した画像を通信ユニット経由で携帯電話に送るため、電源を入れるだけで、遠隔地の情報を見ることができるようになっている。操作が簡単であることはいうまでもない。またこのシステムは、車のドライブレコーダーとしても利用できるよう、機器の表裏にカメラが設置された「ダブルカメラ」も用意されている。
セコムの無線画像伝送システム
自動車関連では、加藤電機がカーセキュリティと位置検索システムを出展していた。車の盗難防止用のカーセキュリティシステムは、iPhoneからの遠隔操作で、開錠やセキュリティのON/OFFだけではなく、強制発報をすることもできる。
この2つに代表されるように、セキュリティが施設内からモバイル環境にまで広がりを見せている。
加藤電機のカーセキュリティシステム
システム連係で、スムーズな運用を実現
施設内のセキュリティ管理に目を転じてみると、複数のシステムを連係させ、より快適でスムーズな運用を提案しているブースが目立った。
なかでも三菱電機が提案していた「セキュリティシステムと連動したエレベーター行先予報システム」は、エレベーターの群管理と連結させることで、セキュリティレベルを低下させることなく、朝の出勤時混雑を解消することができるとして注目される。同社でも実際に採用しており、社員証に利用階の情報を持たせることで、フラッパーゲートの通過時に、同じフロアの社員を同じエレベーターに乗せるようにしている。利用するエレベーターが指示されるため、乗り場で待つことがなく混雑が避けられるという。しかも、エレベーターが出発地点に戻るまでのスピードも早くなり、待機時間短縮までも実現できる。
最近のビルでは、テナントの専有面積を広くして、エレベーターホールの面積を小さくする傾向があり、利用階によってエレベーターを振り分けるシステムが注目されることになろう。
三菱電機ブースのプレゼンテーション
また、綜合警備保障(ALSOK)では、入退のリアルIDとパソコンを使用するためのバーチャルIDを統合管理することで、部屋単位や建物単位でのコントロールを実現している。つまり、入退に合わせてエアコンや照明のON/OFFをするだけではなく、使用しているパソコンの立ち上げまでも行おうというシステムだ。これにより、1回の入退操作でフィジカルセキュリティとネットワークセキュリティを施すことができるようになるという。
綜合警備保障のオフィスセキュリティ概念
顔認証を利用した入退の新システム
入退に関して、今回は主だったセキュリティ関連企業数社から顔認証システムが出展されていた。その中で、顔認証とICタグに入退ゲートを組み合わせることで、利便性を高めたシステムを日立製作所が提案していたので紹介しよう。
このシステムでは、社員証や通行証のICタグに、あらかじめ顔写真を登録しておき、入室するときに顔認証とICタグのデータを照らし合わすようにして、二重の確認を行っている。しかも、ICタグにはアクティブタイプを利用しているため、ハンズフリーでの入退が可能になり、工場や倉庫への出入りに利用することもできる。
今回の展示会では、生体認証の中でも顔認証システムが多くみられたが、同社では、この顔認証データを蓄積して、簡易的な人物検索ができるシステムも提案している。商店では、常連のお客様のデータが溜まっていくことになり、万一の不審者の条件を入力することで、該当者を探すことができるようになるという。顔認証がさらに高度化することで、セキュリティカメラと顔データとの組み合わせによる人物特定が、いよいよ現実的になってきたということかも知れない。
日立製作所をはじめとする日立グループのプレゼンテーション