今どき主婦のShopウォッチ
2004.02.02
●「冬は鍋!」傾向強まる。その背景は?
いよいよ都心部でも積雪のある季節になってきた。寒さも今がピーク! となると夕飯に鍋物が登場する回数が増えている家庭は多いものと思われる。「寒いから」という動機だけではなく、不況による残業減→夕飯の時間に父親がいる→一家団欒=鍋、という図式もバブル崩壊以降は確実に増えているし、鍋の頻度増に対応してか、ここ数年、レトルトの鍋つゆの多様化にも拍車がかかってきている。ザッとスーパーの棚を見渡すだけでも「ちゃんこ鍋」「土手鍋」「豆乳鍋」「はりはり鍋」「キムチ鍋」「肉だんご鍋」「みそ鍋」などなどなどなど......。ものすごい種類の鍋つゆが並んでいる。また、ポン酢に代表されるつけだれも健在。ごま風味、ゆず風味などこちらのバリエーションも豊富である。
こうなると、「鍋はいいけど、毎日じゃ飽きる」とは言われずにすむ。なにしろ鍋は準備といえば、材料を切るだけ、忙しい主婦にとっては冬場の食卓の救世主! 鍋の登場頻度が増えるのは当然のなりゆきと言えるだろう。鍋の日が続いたって、「あら、昨日はちゃんこだったでしょ。今日はキムチ鍋だもん。昨日は鶏肉だったけど、今日は豚肉だしっ」と胸を張って言えるというものだ。しかも! 冬場のスーパーは、そりゃあもうあの手、この手で、主婦を「今夜は鍋!」思考へと追い込む策略が渦巻いている。これでは、気がつけば今日も鍋。カセットコンロはダイニングテーブルの上に出たまま冬を過ごす、ということになるのも無理はないのだ。いや、ほんとに主婦が手を抜いてるとかそういうことではない......多分。
●スーパー一周「鍋物はいかが」攻撃の実態を探る
ある日の夕方、「いなげや八王子松木店」に、足を運んでみた。都内に126店舗を展開している「いなげや」の中では小規模店である八王子松木店だが、ここでの「今夜は鍋!」攻勢を検証してみよう。店内を左手から回ってみると、まず野菜売り場の脇に「おでん」と「モツ鍋」の特売コーナーがあった。「ああ、鍋物もいいかも」という第一の攻撃である。さらに奥に進み、鮮魚コーナーと通路をはさんだショーケースはまさに「鍋物コーナー」! キムチ鍋、ちゃんこ鍋などひと通りのレトルトの鍋つゆが並び、その横には数種類の魚をセットにした「鍋物セット」が並ぶ。「鍋にどうぞ!」とPOPのついたかき、生だらなど、鍋向きの魚介類が、「鍋はどうよ? 土手鍋も海鮮鍋もおいしいよ」と誘惑してくる。さらに足を進めると、とうふ、こんにゃくのコーナーでは豆腐つながりで今、流行の「豆乳鍋」のつゆを並べている。鍋のつもりではなく、みそ汁の具にと思ってとうふコーナーの前で立ち止まった人にも「豆乳鍋って手もあるんじゃない?」と、囁いてくるのだ。精肉コーナーでもこの波状攻撃はおさまらない。豚肉のコーナーにはキムチ鍋のもと、鶏肉の前にはちゃんこ鍋のもと、挽肉コーナーには肉だんご鍋のもと、牛肉のコーナーにはすきやきのたれ、モツの横にはモツ鍋のもと......。とにかく、肉を見ているはずが、いっしょに「この肉でお鍋はいかが?」と提案されまくり。

お菓子や冷凍食品、乳製品の区画になって、やっと「今夜は鍋!」攻撃を免れたと思えば、最後の最後におそうざいコーナーでアルミ鍋に入ったけんちんうどんや鍋焼きうどんに遭遇。「あー、やっぱり鍋があったまっていいかも」という気持ちをかきたてられる。さらに! レジ前の食器、鍋売り場には土鍋が山積み。レジ横にはカセットコンロのガスボンベ! スーパーをあげて「やっぱり、鍋にしよう!」とこちらが思うまで、繰り返し繰り返し、サジェスションしてくるのだ。この押し寄せる誘惑に打ち勝てる人はそうそういない。気がつけば今日もまた、長ねぎや白菜の入ったスーパー袋を下げて家に帰るはめになるのだ。
●少人数でも大丈夫な、「鍋物野菜セット」でノックアウト!
大規模スーパー「イトーヨーカドー南大沢店」になると、さらに「鍋物はいかが!」戦略は徹底している。今度は、店内を右手から回ってみた。最初におそうざいコーナーを通過するが、ここには「鍋はいかが?」という雰囲気はほとんどない。しかし、奥の鮮魚コーナーにさしかかると一気に「今夜は鍋で決まりでっせ、奥さん!」という空気が漂い始める。なにしろ、鮮魚の陳列ケースの上に目をやれば、ずらりと並ぶ鍋つゆの数々。それも「ちゃんこ鍋」「キムチ鍋」などのパッケージに「海鮮」の文字が躍っている。「魚介類を買って、鍋にしたらさぞかしおいしいだろうな〜」といやおうなく想像がかきたてられるのだ。精肉コーナーに進むと、ここでも「もつ鍋」「肉だんご鍋」などの鍋つゆが肉と同列に並べられている。しかし、思ったほど鍋つゆはない、と油断しているとなんと通路をはさんだところに、この日の特売品だった豚肉、鶏肉のコーナーがあり、そこには、ありとあらゆる鍋つゆがいっしょに陳列されていた。アルミパックされた「もつ鍋セット」「きりたんぽ鍋セット」などもあり、土鍋やカセットコンロまで同じ場所で売っているという徹底ぶり。寒い日の夕方、このコーナーの前を素通りできる人はかなり強い意志をもっている人だと思われる。

仮にここでもちこたえて、とうふコーナーにたどりついても、そこにはまた「豆乳鍋」コーナーがあり、いかに豆乳鍋がおいしくてヘルシーかと訴えてくる。「いや、でも今日は鍋用の野菜がなかった」「パパが夕飯いらないって言ってたから、今日は子どもと2人だから鍋はちょっとね」と言い訳しながら、野菜売り場に行くと、「ご心配なく!」とばかりに「2人用」「1人用」とパッケージされた「鍋物野菜セット」が待っている。少量しかいらない春菊やえのきだけも少しずつしっかりとパッケージングされた気配りのいき届いた鍋物野菜セットは、「そうよ! 冬だから鍋だわ」と決意させるに十分な威力をもっている。

数年前には考えられなかったほどの多種の鍋つゆが開発され、販売されているのは、こういった販売店あげての「冬は鍋物」戦略の賜物でもあると言える。もちろん、今ほどバラエティーに富んだ鍋つゆがなかったころは、販売側もここまで充実した鍋物戦略はとれなかったわけで、商品を開発する側、売る側の見事な二人三脚で、冬の鍋物商戦は、成長し続けているのではないだろうか。もちろん、主婦が台所に立つ時間がどんどん短くなっているということも大いなる後押しになっていることも間違いないが。