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連載コラム

第32回「ベビーザらスにアメイジングワールド、ペンション風産院 多摩境ベビー&キッズパラダイスが少子化ニッポンを救う?」

[ 2006年8月14日 ]

●少子化無縁地帯・多摩境で「キッズ市場」を観察してみた
 キャリア・マム事務所から3つ先の駅、多摩境は、今とにかく熱い街だ。ちょっと前まで車よりもタヌキのほうが、たくさん走ってると言われていた場所だが、今や週末は渋滞している。いや、平日の夕方だってすごい。渋滞は道路工事のせいではなく大規模店舗が多く、客が集まっているからだ。
 そんな一大ショッピングゾーンの中核をなしているのが、なんと! ベビー&キッズ市場なのである。
 先がけとなったのは、多摩境駅の目の前にあるアカチャンホンポだが、その後、アカチャンホンポから車を走らせること10分、より町田方面に移動したところに「ベビーザらス」も出店した。
 これだけの至近距離にこれだけ大規模なベビー&キッズ用品の量販店があるのも珍しいが、どちらも週末ともなれば大繁盛している。その吸引力はいったいどこにあるのか、また、今のニッポンに、そんなに子連れファミリーはいるのか? を検証すべく今回は、ベビーザらスに行ってみた。

 ベビーザらスは、駐車場から店内へ降りるエスカレーターにのると、目に入る壁の高いところに、星や太陽の手描き風のマークがついたパステル調のブルーやグリーンのボードがディスプレイされていて、これがなかなかオシャレだ。
 店内はラベンダー色というか、紫色で統一されていて、ディスプレイに使われている什器もスッキリしたデザインだ。洋服、靴、下着、衛生品、おもちゃなど、アイテムごとに売り場の独立感もあり、店内の通路も広い。ベビーカーを押しながらでも、すれ違える広さが確保されていて、子連れ客が多いのに狭苦しさがない。

 

 靴売り場などは、やや奥まった感じに独立していて、シューフィッティングスペースも用意され、スタッフがていねいにアドバイスをしていた。おもちゃみたいに小さな「ファーストシューズ」もたくさん揃っていて、見ているだけでも幸せな気分になる。
 さらに、店内のいちばん奥には人気の写真館「スタジオアリス」があり、七五三やお誕生日、記念日などのポートレートを撮ってくれる。衣装も豊富で選び放題だ。

 少子化からは脱出できない日本だが、景気はこのところかなり回復してきている。子どもが少ないまま景気だけ回復すれば、つまり「1人の子どもにかけるお金」が増えるということでもあり、「子どもが少ない」→「ベビー&キッズ業界は不振」とは言い切れないということが、このベビーザらスを見ていてもわかる。
 紙おむつや、ベビーフードなどの消耗品は、少しでも安く買いたいのはだれしも同じだろうが、赤ちゃん誕生のメモリアルグッズや、服、ベビーカー、チャイルドシート、おもちゃなどは「センスのいいもの」「よいもの」を買いたいと思い、買える人々も確実に増えているのだ。
 たとえ、若い夫婦にはお金がなかったとしても、バックにはじいちゃん、ばあちゃんがついている。現にこの日のベビーザらスにも、子連れのママとおばあちゃまという組み合わせは目立っていた。
 紙おむつを買いに行くならパパをかり出すけれど、ちょっとかわいいもの、ステキなものを買いたい! となると、おばあちゃまのほうが、より心強い味方なのかもしれない。
 オシャレでハイセンスなベビーザらスは、そんな幸せそうな二世代ファミリーのパラダイスのようにも思えた。


●続々増える、ベビー・キッズ向けスポット。多摩境の相乗効果に学ぶ

 さて、多摩境にはもう1つ、ベビー・キッズに照準を合わせた注目スポットがある。
 「アメイジングワールド」という遊戯施設だ。ここは屋内型で(もとは大型スーパーだった)、入場料を支払って施設内に入れば、中では遊び放題。子どもたちが好きで、危険の少ないフワフワの遊具や、すべり台、大型の積み木、スポンジボールでのシューティングなど、さまざまな遊びができる。

 

 小さい子どもの場合は、さすがに親が目を離すことはできないだろうが、ある程度大きくなった子どもなら、施設内で自由に放牧(!)しておき、親は施設内に設置されている無料のアーケードゲームを楽しんだり(なつかしの人気機種「太鼓の達人」や「ダンレボ」もあり人気だ!)、親同士のおしゃべりに花を咲かせたりできる。
 そうそう、マッサージチェアも多摩境店では30台ほど設置してあり、日ごろの疲れを癒さんとするお父さん、お母さんが、夏の湘南の海辺に寝そべる海水浴客のように、ずらりとチェアに並んでいる。その光景はなかなか圧巻だ。
 「アメイジングワールド」が、子どものハートだけでなく、親のハートもつかんでいるゆえんがここにあるように思える。日曜の午前中に行ってみたが、あいにくの雨だったせいもあってか、すでにかなり混雑していた。

 この施設は12歳以下の子連れじゃないと、大人のみの入場はできないというのも安心感がある。そして、何よりも屋根があるので、天候に左右されずに遊べるスポットとして本当に助かるのだ。
 少し大きくなった子どもなら施設内でかなり自由にさせておくことができるが、それぞれのアトラクションにはスタッフが常駐しているから、危険がないように目を配ってくれる。親ではないが目が届いている空間というのは、子どもにとっても親にとっても本当にありがたいし、安心に違いない。
 アトラクションの中には、備長炭入りの「日本一清潔な砂場」もあり、砂場という地味な遊び場ながら人気を集めている。砂場遊びは、創造性も刺激するのでさせたいが、屋外の砂場では衛生面での不安があって・・・というママたちには、まさにうってつけなのだから無理もない。

 元は大型スーパーだった施設なので、正直言って作りは豪華でもオシャレでもない。しかし、子どもにとって、そして子育て中の親にとって必要なものをしっかりそろえてくれているから、客は集まるのだ。
 子育ては楽しい、子どもはかわいい! だけど「ずっと一緒にいなきゃいけないのはしんどいのよ」「ずっと見てなきゃ心配なのは疲れるのよ」という子育て中のストレスを、1時間600円(子ども料金。大人は終日で500円)で発散できるなら、「また明日から子どもと格闘していこう」という元気もわくというものだ。

 子どもだってそう。「マンションだから走るな」「友だちとケンカするな」「大きな声で騒ぐな」と行動を規制されることが多い中、ここにくればかなり自由に遊べる。さぞかし、ストレス解消になっているのではないか。親と子をハッピーにしてくれる、子育てを楽しくしてくれる、そんな施設と言えるだろう。

 さらに、この「アメイジングワールド」の近くには、言われなければ、ここが産婦人科だとはわからない、どう見てもペンションかレストランという産婦人科「ベルンの森クリニック」もある。
 中をのぞいて見ると、ゆったりしたオシャレなロビー! 「こんなところで出産したーい!」と見た女性は思うに違いない。「ベルンの森クリニック」は、そんなクリニックなのだ。

 妊娠から出産、新生児用品から子ども服、おもちゃの購入、そして子どもの遊び場まで・・・多摩境にはすべてが揃っている。少子化ニッポンと言われて久しいが、この街に来ると「まだまだ子どもを産んで育てるのは楽しいかも!」と思えてくるのだ。
 おそらく、多摩境だけでなく、こういった子育てに便利でやさしい街は全国にあるのだろう。ただ、まだ少ないのかもしれない。1つの店や施設だけでなく、いくつかの子育てサポート店や施設が複合体となったとき、そこには子どもを産もうという人が増える可能性があるのではないかと思った。
 少子化対策に頭を悩ませているお役人さま、ぜひぜひ、多摩境に視察に来てみては?

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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